【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?

海里

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3章 偶然の再会

偶然の再会 21-1

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 三十分後、シャワーを浴びに来た陸矢りくやが見えた。それと同時に料理を開始する。彼がシャワーを浴び終え髪を乾かすまでの間に、出来立ての料理を食べてもらおうと頭の中で計算しながら作る。お湯は多めに沸かしておこう。コーヒーも飲むだろうし。

 作っている途中でドライヤーの音が聞こえてきた。烏の行水か。

 とはいえ、こちらももう出来上がるからちょうどいい。

 ミネラルウォーターがあるから、最初にそれを渡して飲んでもらおう。水分補給は大切だ。

「いい匂い」

 すんすんと鼻を鳴らしながら、こちらに近付いてきた陸矢を見て、「今、出来たところだよ」と言ってコップの中にミネラルウォーターを注ぎ、彼に渡す。

「ありがとうございます」

 ごくごくと喉を鳴らして飲む姿を見てから、作ったものをテーブルに並べる。

 コップに入った水をすべて飲み終えた陸矢は、椅子に座った。

 少し前に作って、飲みやすい温度になっているだろうコーヒーを渡す。俺も椅子に座り、ふたり揃って手を合わせ、

「いただきます」

 と、口にして早速食べ始める。

「――ああ、やっぱり流羽るうさんのご飯のほうが美味しいですね……」

 しみじみとそう言う陸矢に、首を傾げた。

「それはどうも。……なにか、口に合わないものでも食べたのか?」
「ええ、まあ。本当……流羽さんのご飯が美味しくてがんばれそうです」

 ……一体どんなものを食べたのだろうか。ぱくぱくと美味しそうに食べてくれる陸矢を見て、ホッとした。昨日のあの酔い方、あまり良い酔い方ではないと思ったから、心配していたんだ。

「……陸矢ってさ、からあげ好きか?」

 いきなり投げかけた言葉に、陸矢は一瞬驚いたように目を丸くして、

「好きですよ」

 ふわりと微笑みながらそう言った。

「な、ならさ、今度の金曜日に大量に揚げてもいいかな? なんか、久しぶりにたくさん揚げたくて……」
「もちろんですよ! 何気に初めてじゃありませんか? からあげ作ってくれるの」
「揚げ物って家で作ると後片付けがな……」

 ただ、今は後片付けよりも揚げたい気持ちのほうが強い。

「……ところで、どうして金曜日なんですか?」
「にんにくたっぷり使うから、休日の前がいいかな、と」
「なるほど。楽しみにしていますね」

 嬉しそうに目元を細めて笑う陸矢に、俺も笑みを返した。

「陸矢はからあげ、どれくらい食べられそう?」
「え? うーん、結構食えるとは思いますけど……。万が一残っても大丈夫ですよ、絶対に食べきりますから」
「え?」
「何日掛けても食べますから」

 流羽さんが作ってくれるなら、と続けて言われて、俺は一気に顔を赤くした、と思う。――だって、嬉しかったんだ。残さず食べようとしてくれる、陸矢の気遣いが……すごく嬉しかったんだ。
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