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3章 偶然の再会
偶然の再会 20-1
しおりを挟む陸矢の様子を窺うように見上げると、彼はこくりとうなずいてそのまま部屋まで向かう。俺は自分の歯ブラシと歯磨き粉を掴み、歯磨きを開始した。
歯を磨き終え、今度はリビングに向かい、自分が飲んだカップを持ってキッチンへ。カップとお皿を綺麗に洗い、水滴を拭き取って棚に戻す。それから陸矢の部屋まで歩き、軽くノックをした。
「どうぞ、流羽さん」
陸矢がガチャリと扉を開けて、俺を迎えた。ベッドに横になっていればよかったのに、と陸矢をじっと見る。彼は首を傾げて「どうしました?」と尋ねたが、俺が「いや……」と首を左右に振った。
「それじゃあ、こちらへどうぞ」
陸矢が手を伸ばして俺の手首を掴み、部屋に入れた。ぱたん、と扉が閉まる音がいやに大きく聞こえてしまい――陸矢のことを好きだと自覚したからか、鼓動の音も大きく感じる。
彼に引っ張られるように歩いて、ベッドの中に入る。陸矢も入ってきて、添い寝……というよりも抱き枕のようにぎゅうっと抱きしめられて、躰が硬直した。
「陸矢……?」
「……おやすみなさい、流羽さん」
まだ酔っているのか、陸矢はふわふわとした感じで俺にそう言うと、額にキスをひとつ落して、そのまま目を閉じた。
「……おやすみ、陸矢」
俺の言葉、聞こえているかは怪しいけれど……。それでも、言葉にしたかったから。真っ暗だった部屋に、だいぶ目が慣れてうっすらと陸矢のことが見えた。
抱きつかれているから、ぴったりと躰が密着していて、彼の体温を感じる。――ね、寝付けるかな、俺……とちょっと不安になった。
……それにしてもキャバクラ、か。そういう方面には疎いから、どんな場所なのかよくわからない。接待でキャバクラってよくあることなんだろうか?
とりあえず、思考を明後日の方向に向けて、意識しないように心掛けみる……が、あまり効果はなかった。
なにせ、至近距離ですやすやと寝息を立てているのだ。寝息を感じるたびに意識が引き戻される。……キャバクラでなにかあったのだろうか、陸矢が俺を抱き枕よろしく抱きしめながら眠る、なんて。
抱きしめられているとはいえ、腕は動かせるから、そっと陸矢の背中に手を回してみる。寝ている彼を起こさないように気をつけながら、ぽんぽんと一定のリズムで労わるように背を叩く。
「……お疲れ様……」
ぽつり、とこぼれた言葉に、陸矢が一瞬笑った気がした。
目が慣れてきたとはいえ、部屋の中は暗いから俺の願望かもしれないけど……少しでも、陸矢の疲れが取れたら良いな、と思った。
――よし、俺もがんばって眠ろう……
こんな風に隣で寝て緊張するって、考えてみれば初めての経験かもしれないな――……と考えてながら目を閉じると、案外あっさりと眠りにつくことが出来た。
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