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3章 偶然の再会
偶然の再会 19-1
しおりを挟むやかんに水を入れて火にかける。沸くまでの間に、カップやティーバッグを用意する。陸矢がいるときならカップを温めるけれど、今日は省略。我ながらやる気があるときとないときの差が激しい。
お湯が沸き、カップにお湯を注いでからティーバッグを放り込む。皿で蓋をして、三分待つ。スマホを見ながら待っていたから、三分なんてあっという間だ。
皿を外して、キッチンペーパーで水滴を拭き取り、ティーバッグの紐を掴んで上に引き、軽く左右に振ってから捨てる。カップを持ってテレビを見るためにソファに座り、ローテーブルの上にカップを置き、リモコンを取り、テレビの電源を入れた。
ぼうっとしながらお茶を飲み、じっとテレビを見つめる。ドラマを見るのは久しぶりだ。
「……うーん、途中からだと話がよくわからないな……」
毎週見ているわけではなかったから、余計にわからない。家族の中でこういうドラマが好きなのは母だった。家事を終わらせて、お茶を飲みながらのんびりとテレビを見るのが楽しみなのだと言っていたことを思い出して、懐かしくなる。
「――そのうち連絡しないとなぁ……」
陸矢の家に来るまでは、仕送りをしていた。こちらで美味しいものを見つけては、家族にも食べてもらおうと思って、送ってもいた。
住んでいたところが火事に巻き込まれてからは、送っていない。そして、連絡も一度しただけだ。家族もいろいろ送ってくれるから、住所が変更されたことを説明するために電話を掛けた。
あのとき、たぶんスピーカーになっていたのだろう、家族は全員、『こっちに戻ってきてもいいんだよ』と言ってくれた。でも、俺はここに残ることを決めた。
ソファの背もたれに身を預け、天井を見上げる。
「――あとでまた、連絡しなきゃなぁ」
心配を掛けていると思う。家族の元から離れて生活していくことには慣れたと思ったけれど、ふとしたときに声を聞きたくなったり、会いたくなったりするもんだなぁ。
ぼんやりと考えていると、いつの間にかドラマは終わっていた。
ちらり、と時計に視線を向けると、まだ夜の十時だった。陸矢はいったい何時に帰ってくるのだろう。
それからもテレビを眺めながら、お茶を飲み、陸矢の帰りを待つ。
陸矢が帰って来たのは、日が終わりそうな時間だった。こんなに帰って来るのは珍しい。この一ヶ月、陸矢は夕食の時間には帰って来ていたから。
「ただいま……あれ、流羽さん?」
灯りが点いているとはいえ、俺が寝ている可能性を考えてか、小声で家に「ただいま」を口にする陸矢の声を拾い、俺は彼を出迎えに行った。
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