65 / 100
3章 偶然の再会
偶然の再会 17-1
しおりを挟む一日にDVDとは言え映画を三本も見たのも、初めてだった。ミステリーはアクション要素も多くて見応えがあり、内心ハラハラしながらノートパソコンに釘付けになっていた。
お菓子と飲み物、どちらも空っぽになるまで食べて、ハッとした。今日、一度も料理をしていないということを……! せめて夕食は作らなくては、と思ったが、さっきまでお菓子をつまんでいたからそんなにお腹は空いていない。たぶん、陸矢もそうだろう。それでも、このままだとちょっと……いや、『家政夫』としてはダメだろう。
「よっと」
とりあえず、立ち上がる。ああ、うん。もう大丈夫そうだ。良かった。
ほっと安堵の息を吐いて、食べ終えたお菓子の袋を集め始める。陸矢も手伝ってくれた。
「腹減ってないだろうから、軽いものにするけど、構わないか?」
「もちろんです」
今ある食材を頭に思い浮かべて、なにを作るのかを考える。そうめんがあったから、にゅうめんにするか。
麺類ならきっと、つるっと食べやすいだろうし。それにしても、本当、こんなになにもしない日って珍しいよなぁなんて思いながら。
とりあえず朝よりも体力は回復したけれど、まだ本調子というわけではないから、陸矢にも協力してもらおう。そう思って俺が頼むと、陸矢はぱぁっと表情を明るくさせて、
「わかりました!」と元気に返事をしてくれた。
それからふたりでにゅうめんを作って、食べて、お風呂に入って、そのまま眠りに入った。……風呂はいつの間にか陸矢が掃除してくれていた。結構な時間寝ていたんだな、と思った。……ただ、なんだか一日穏やかに過ごせて、リフレッシュできた気がする。陸矢の気遣いに感謝しながら、ベッドに潜り込んで目を閉じた。睡魔はすぐに訪れた。
☆☆☆
――翌朝、むくりと起き上がって手を組んで伸びる。うーん、よく寝た。身支度を整えて、朝の準備をする。……あ、そう言えば米を炊くの忘れていた。
ちらりと時間を見て、ホッとした。この時間なら、陸矢が起きるまでに炊けるだろう。
エプロンを身に付けて、食事の準備を始めようとキッチンに向かう。今日はとても晴れていて、なんだか気分がいい。天気がいいとなんで心も晴れやかになるんだろう? ……いや、さすがに夏の晴天はきついけど。夏の猛暑はいろんなところを蝕む気がして……晴天を見るなら春や秋、冬がいい気がする。
さて、今日はどんな朝食を用意しようかな。
昨日はたくさんお菓子を食べたから、和食がいいだろう。冷蔵庫の中のものを思い浮かべながら、とりあえず米を研ぐことから始めよう。
そして、美味しい朝食を、陸矢に食べてもらおう。
「よし、やるか」
気合いを入れるように、小さく呟いた。
15
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──


視線の先
茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。
「セーラー服着た写真撮らせて?」
……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら
夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。
テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。
Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。
執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺
高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる