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3章 偶然の再会
偶然の再会 16-2
しおりを挟む「口元しか見えなくても、流羽さんの表情ってわかりやすいですね」
「そう、か……?」
前髪は伸ばしているから、目元はあまり見えないだろう。見づらくないのかと問われたら、多少は見づらいけれど、目を晒すよりは気が楽と答えるようにしている。目つきが悪い自覚はあるし、な。
「そんなこと、初めて言われた」
「そうなんですか? 意外です」
陸矢が本当に意外そうに言うから、ちょっと面白かった。高校時代の友達は俺の容姿に関してはなにも言わない人たちで、『まぁ、浜本がいいなら良いんじゃね?』で終わっていたし、担任は『それ視力検査通るのか?』と興味津々だった記憶がある。
……緩い高校だったな、いろいろと。
「流羽さん?」
「ああ、ごめん、高校時代を思い出してた」
「流羽さんの高校時代って、ちょっと興味あります」
「いやぁ、普通だったよ。さすがに水泳のときは帽子被るから、目つきが悪いってバレたけど」
「流羽さんの高校、水泳の授業あったんですか?」
意外そうに言われて、一瞬理解するのが遅れた。陸矢の通っていた高校は水泳の授業がなかったようだ。それは暑い時期大変だったろうな、と思った。夏の水泳の授業は、涼しくて気持ち良かったから。
「陸矢のところはなかったのか」
「はい。泳ぎたかったら各自プールや海に通えって感じでした」
「それはまた……」
高校と一口に言っても、いろいろなんだなぁと改めて思った。小~中学生の頃は楽しくなかったけれど、高校生になって自由度も増えて楽しくなった。……苦手な人も居なかったし。そう考えると、少し無理したけれど高校は遠くのところに行けて良かった。中学時代の同級生、先輩や後輩もそこにはいなかったから、一から友達を作れたし、みんないい奴だった。
「オレが通っていた高校は成績にこだわっていましたね。塾に通っていた人たちも多かったし、家庭教師を雇っていた人たちもいた」
「陸矢は?」
「オレは先輩から教わっていました。その代わり、部活の助っ人として活躍してくれてって言われましたけど」
「へぇ~! それは大変だったな?」
「それなりに。でもまぁ、結構活躍したと思うので、恩は返せたと思います」
当時を懐かしむように微笑む陸矢に、「そっか」と言葉をこぼす。互いに高校時代を懐かしむのって、なんだか不思議な感じがする。
「――今度は、俺が好きそうなの見てもいい?」
「もちろん。流羽さんが気に入るのがあればいいのですが」
陸矢がいろいろと渡してくれた。アクション映画を見たからか、そういう系もあったけれど、俺が選んだのはミステリーだった。アクション要素もあるものだけど、な。
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