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3章 偶然の再会
偶然の再会 15-2
しおりを挟む不自然に会話が途切れたような気がして、少し困惑して彼を見た。陸矢はなぜか顔を赤くしていて、それを隠すように手で顔を覆う。耳まで赤くなっていたから、首を傾げて彼の名を呼んだ。
「DVD、見ましょうっ」
「お、おう……」
がばっと顔を上げて、ノートパソコンにDVDをセットして、再生する前に「お菓子と飲み物用意しますね」とキッチンに向かった。俺はひょいと陸矢がセットしたもののパッケージを眺める。
男女の恋愛ものとして、数年前にヒットした映画だった。洋画なので字幕と吹き替えが選べるらしい。……そういえば、こういうの見るのっていつぶりだっけ? 家族と暮らしていたときはたまに見ていたような気がする。弟たちが選んだものを一緒に。
『お兄ちゃん、映画見たいからお菓子作って!』
『そして兄ちゃんも一緒に見よ!』
なんて言われて、簡単なお菓子を作って弟たちと一緒に見たんだっけ。懐かしいなぁ。そんなことを考えていたら、陸矢が戻ってきた。
「えっと、……なんかいろいろ持ってきちゃいました」
「あー……まぁ、うん、たまにはいいんじゃないか?」
昼飯も食ってないし。とりあえず、陸矢が持って来てくれたお茶に手を伸ばす。こぼれないように、ペットボトルのお茶を持って来てくれたようだ。
蓋を開けてそのままごくごくと飲む。ああ、喉乾いていたんだな。だいぶ声は戻って来たと思うけど。
「それじゃあ、だらだらと過ごしましょう」
「……そうだな」
陸矢の言葉に小さく笑いながらうなずくと、陸矢はDVDを再生させた。
それから陸矢の好きな映画を一緒に見て、映画館ではないから「あっ!」とか「ここなんだけど……」と多少会話をしながら。お菓子と一緒に本当にだらだらとした時間を過ごした。思えばこの一ヶ月、こんな風な時間を過ごしていないな、ということに気付いた。陸矢が気遣ってくれているのだろう。
映画を見終わり、小さく息を吐く。
「……陸矢はこういう恋愛がしたかったのか?」
結構どろどろとした内容だったから、思わず尋ねてしまった。三角関係でフラれる側の男の末路はなかなか切ないものがあり、くっついた男女はハッピーエンドで終わった。
「え? まさか。こういうのは創作だから良いんですよ」
きっぱりと言われて目を丸くしてしまった。
「創作だから?」
「はい。だって実際こんなにどろどろした恋愛なんて、体験したくありませんから。オレがこの映画が好きな理由は、フラれた側の男性、イイ躰しているなぁと思ったからで……」
「あ、そっち……?」
ただ単に俳優が好みだったのか。
「……流羽さんは、こんな恋愛してみたい?」
「いや、絶対無理」
断言した。こんなにどろどろな状態で普通に過ごせる気がしない。
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