【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?

海里

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3章 偶然の再会

偶然の再会 9-2

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 カフェを出て、陸矢が「こっちです」と歩き出す。十数分くらい歩いて、陸矢が「ここです」と入って行く。……なんだか、ラブホテルっぽくはない場所だった。

 でも、入ってみると受付に人の気配はなく、陸矢は「少し待っていてください」と言うと、受付のほうに向かい、なにかを話しているようだった。……受付に人がいないだけで、どこかで見てはいるのだろうけれど……なんだか不思議な感じだった。

 陸矢が鍵を受け取り、「行きましょう」と俺の腰に手を回した。エレベーターで二階に上がり、陸矢が選んだ部屋の前で止まり、鍵を開けて中へ入るように促す。

 部屋の中に入って、俺は思わず目を見開いた。

「ひっろ!」
「ネットで調べて予約していたんですが、本当に広いですね……」
「予約!?」

 あまりにも意外な言葉で驚いた。俺の声に、陸矢が悪戯に成功した子どものように笑った。

「驚かせたかったので成功ですかね?」
「予約までしているとは思わなかった」

 素直な感想を口にすると、陸矢はそっと俺の頬に触れた。陸矢? と口を開こうとしたら、むにっと頬を摘ままれる。びっくりして彼を見ると、熱い視線を感じて思わず目を逸らしてしまった。

「……シャワー、浴びてきますね」
「あ、ああ」

 そう言って陸矢は俺から離れてシャワーを浴びに行った。俺は摘ままれた頬を擦りながら、ベッドに腰かける。ベッドまでかなりの広さ。男ふたりが寝転んでも余裕がある。

 ザーザーと流れるシャワーの音を聞きながら、そういえばスマホの電源消したままだったと鞄に手を伸ばす。スマホを取り出して、電源を入れると……まぁ、連絡はひとつもない。

 陸矢くらいと家族くらいしか連絡してないからな。高校の頃の友達は地元に残っているから、なかなか会うこともない。……そう考えると、山村に会ったのって、かなり珍しいような気がしてきた。鞄の中に彼の名刺が入っていた。取るのを忘れていたようだ。それだけ動揺していたということかもしれない。

「流羽さん?」
「うぉっ」
「そんなに驚いて、どうかしました?」
「いや、なんでもない。思考が明後日のほうに行っていただけ」

 スマホを鞄に戻してチャックをしめる。

「俺もシャワー浴びてくる」
「はい、待ってますね」
「……ああ」

 はちみつのような甘い声色でそう言われて、なんだかソワソワとしてしまう。

 それを隠すように浴室に向かう。……その浴室もかなりの広さだった。ジェットバスまでついていることに気付き、非日常のワンシーンのように感じて、なぜか笑ってしまった。
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