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3章 偶然の再会
偶然の再会 7-2
しおりを挟む座席に座って、スマホの電源を落としていないことに気付いてすぐに電源を落とした。良かった、今気付いて。
そして、映画の上映時間になり、俺は久しぶりの映画を楽しんだ。
アクション映画だったので、爆発あり、カーチェイスあり、肉弾戦ありというなかなか盛り込んだものだった。上映時間が終わり、俺がほう、と息を吐くと、陸矢が立ち上がった。
「行きましょうか」
「あ、うん」
食べ終わったので全部片付けてから映画館をあとにした。
「この近くにカフェがあるんです。寄りませんか?」
「いいね、さっきの映画のことについても話したいし」
陸矢はこくりとうなずいて、楽しそうに目元を細めていた。
「――良かった、流羽さんが楽しそうで」
「陸矢も楽しそうだと思うけど……」
「そりゃあ、楽しいですよ。こういう『王道』のデートコース、実は一度もやったことがないんですよね」
それはあまりにも意外な言葉だった。
陸矢なら男女問わずデートの誘いが多そうだと思っていたから。俺が驚いていると、陸矢は「そんなに意外ですか?」と首を傾げた。
「いやだって……モテるだろ?」
「モテてもデートするかどうかは本人たち次第でしょ?」
……いやまぁ、そりゃそうだけど。
「流羽さんは?」
「あ~……ない。普通にない」
この見た目だからか、ナンパされることもない。だからこそ、ああいう場所で相性の良さそうな人を探していたわけで……。……考えてみれば、陸矢があの場所にいたことってかなり珍しいことだったのでは……?
「あれ、なにか考え込んでます?」
「いや、あの居酒屋に陸矢がいたことが不思議で」
「流羽さんはオレのことをなんだと思っているんですか……」
どこか呆れたように肩をすくめる陸矢に、俺は曖昧に微笑んだ。こんなに気遣ってくれる人だから、黙っていても人が寄ってきそうだ。なのに、あの居酒屋ではひとりだった。
思い返してみればかなり不思議なことだったな。
「恋人がいないってことがとても不思議なヤツ」
「……褒め言葉ですか?」
「そのつもりだけど……」
「じゃあ、受け取っておきます」
くすりと笑う陸矢。一緒に歩いていると、陸矢に視線を奪われている人が多いように思える。男女問わず。……本当、不思議なヤツだ。
「あ、カフェはここですね」
「へぇ、なんか、……落ち着きそうなところだな」
キラキラしているようなカフェではなく、どこか懐かしさを感じるシックなカフェだった。照明がオレンジ色だ。
「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」
カランカラン、と鈴が鳴る音。それに気付いてカフェの店員……かな? がにこりと微笑みを浮かべて俺らを迎え入れてくれた。
周りを見渡すと、隅のほうが空いていた。陸矢に声を掛けて、そこにしようと言うと、陸矢は「はい」と言ってそこに向かう。
ソファ席だった。向かい合う形で座り、そっとソファを撫でる。座り心地の良いソファだった。
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