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3章 偶然の再会
偶然の再会 7-1
しおりを挟むそして土曜日。朝食を摂って身支度を整えて一緒に家を出た。陸矢が鍵をかけて、それを眺めていると俺の視線に気付いて、ふわりと微笑んだ。
「それじゃあ、行きましょうか」
鍵を鞄にしまって、歩き出す。その後ろをついて行くように俺も歩き出した。
「ところでどこに行くんだ?」
「まずは、映画館です」
問いかけに少し歩く速度を遅め、ちらりとこちらを見ながらさらりと言われたことに、目を丸くした。まさに『王道』の『デートコース』だと思ったから。
俺の反応に陸矢は軽く頬を掻いた。
「一応候補の映画を数本絞ったんですけど、流羽さんの好みがわからなくて……。見たい映画があれば良いのですが……」
少し不安そうな陸矢を見て、ぽんと彼の肩を叩いた。そんなに気を遣わなくても良いって、という思いを込めて。
「陸矢は見たい映画ないのか?」
「オレは流羽さんが見たい映画がどんなものなのかが、気になるんです」
へぇ、と相槌を打って、映画館に向かう。俺の好みの映画が見たいと言ってくれるとは思わなかった。もしも今度陸矢と映画を見に行くことになったら、今度は彼が見たい映画を見よう。
その機会があるかどうかはわからないけれど。
電車に乗って、家からは少し遠い映画館に行った。上映されているポスターを眺めていたら、俺がCMを見て気になっていた映画があった。
「この映画でもいい?」
「はい。飲み物やポップコーンはどうしますか?」
「いるいる」
「それじゃ、買いましょうか」
なに味のポップコーンにしようかと悩んでいると、陸矢がチケットを買っていた。現金を出そうとしたら、「代わりにポップコーンと飲み物奢ってください」と売店を指さした。
「……わかった。なに味がいい?」
「お任せします。あ、飲み物はコーラでお願いします」
ジュース選ぶの珍しいな、と思いながらポップコーンの種類を確認する。定番から変わり種まで結構種類があった。
とりあえず、定番でいいかと思い塩味のポップコーンとバター醤油のポップコーン、それからコーラをふたつ頼んだ。
たまにはジュースも良いだろう。それに、これもまた『王道』っぽい気がするし。……あ、陸矢がコーラを選んだ理由って、そういう理由だったりするのだろうか?
まぁ、彼の考えていることはわからないけどさ。
いつの間にか隣に来ていた陸矢が、ひょいと自分の分を受け取り、「行きましょう」と促した。俺も受け取り、陸矢に続く。
映画館で映画を見るのって、何年ぶりだろう?
「流羽さん?」
「……映画館で見るの久しぶりだなって」
「オレもですよ。たまにはいいですよね」
「うん、アクション映画だから、大きい画面で見るとかなり迫力ありそう」
少しワクワクしている。映画館に入るのも、こうして王道のセットを注文するのも久しぶりだったから。
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