【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?

海里

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3章 偶然の再会

偶然の再会 5-1

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「ケチャップいれてみるのも良いし、味見しながらいろいろ自分の好きな味に近付けていけばいい」
「……大事ですね、味見」
「一番大切だと思う……」

 人の味覚はそれぞれ違うのだから……。もちろん、店で働いていた頃はレシピ通りに作っていた。それが仕事だったし……。それでも、こうしたらもっと美味しくなるんじゃないか? というのは話し合っていた……つもり、だけど、それもあまり歓迎されていない感じだったなぁ。

 店長だけが真剣に考えてくれていたように思う。俺が働いていたところって結構誰でも働ける店だったけど、店長はあの店舗がより良くなるようにってがんばっていたことを覚えている。

「――流羽るうさん?」
「……いや、ちょっと店で働いていた頃を思い出して」
「本当に料理が好きなんですね。それを職にするくらい」
「まぁ、な」

 裏方だから髪を上げて素顔を晒しても問題ないと思っていたけど、そうでもなかった……。自分の目つきが少し恨めしく思うときもあるが、存外に扱われるのも慣れてしまったし、自分で言うのも虚しいが、割と諦めは早いほうだと思うし……だってそっちのほうが気楽なんだ。

「えーっと、んで、この出来上がった甘酢あんに肉団子を入れて火にかける」

 さっき作った肉団子をごろごろと入れて、全体に甘酢あんを絡める。これで甘酢あんの肉団子完成だ。

「じゃあ、次はスープですね」
「うん、小鍋に水を入れて沸騰させて、鶏がらスープとほうれん草、卵を溶いたものを入れる。塩コショウで味を調えてごま油を少し垂らせば出来上がり」
「冷凍のほうれん草便利ですね……」
「今はカット野菜とか冷凍の野菜とか、本当便利になったよなぁ」

 しみじみと呟くと、陸矢りくやがなにかを考えるように顎に手を掛けて、「確かにこれなら料理の下ごしらえが少ない分、自炊がしやすいですね」と微笑みを浮かべた。

「いろいろ便利な世の中になったよなぁ」

 俺は同意するようにうなずいて、小皿にスープを入れて味見をした。うん、美味しい。陸矢がじっとこちらを見たので、もう一度スープを入れて陸矢に渡した。陸矢は嬉しそうに受け取って、こくりと飲む。

「美味しいです」
「便利だよな」

 焼いたハンバーグはだいぶ冷めただろう。ラップに包んで冷凍する。そのあと調理器具を綺麗に洗って片付けた。

 時計を見るといつもの夕飯の時間よりは早かった。ちらりと陸矢に視線を向けると、くぅ、と彼のお腹が鳴ったのが聞こえて、顔を見合わせて笑い合った。

「お腹空きました」
「ちょっと早いけど、飯にするか~」

 ぱぁっと明るい表情になった陸矢に、こういう顔に弱いんだよなぁと心の中で思った。
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