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3章 偶然の再会
偶然の再会 4-1
しおりを挟む「このあとはどうするんですか?」
「温めたフライパンにバターをぽーいと」
「……たまに流羽さん、説明雑になってません……?」
「つい弟たちと同じような説明に……」
「弟……」
ちょっとだけムッとしたような陸矢の様子に、クスクスと笑いながらフライパンを用意し火にかける。冷蔵庫からバターも取り出してもらい、適当な大きさに切ってぽーいと温めたフライパンに入れる。じゅわ~と溶けるバターを、陸矢は目を輝かせながら見ていた。
「……珍しいものじゃないだろうに」
「でも、なんかワクワクするんですよね」
すべて溶ける前にフライパンに玉ねぎのみじん切りを入れた。木べらでかき混ぜながらゆっくり炒めていく。透き通ってきたら火を止め、冷ます。
「玉ねぎってこんなに透明になるんですね」
「……結構楽しいだろ?」
「新しい発見がいろいろありますね。エプロンもたくさんありましたし……」
「エプロン?」
こくり、と陸矢はうなずいた。エプロンを見る機会があったのだろうか? ちなみに俺と陸矢が使っているのは、近くの服屋で買ったものだ。大急ぎで買ったのでそろそろ新しいものが欲しいところ。
「……なんというか、一口に『料理』と言っても、いろいろなことが重なっているんだなぁ、と」
「……ああ、道具とか食材とか?」
「はい。流羽さんが使っているのを見ると、まるで魔法のように思えます」
「大袈裟だなぁ。俺のレベルはそこまでじゃないよ」
でも、陸矢にそう見えているのなら、俺の料理人としての腕はそこそこ上がっていると思っても、良いのかな。
「……前から思っていたのですが、流羽さんって自己評価低すぎませんか?」
「……そうか?」
軽く首を傾げて問う。自分では普通だと思っているのだけど、陸矢の目にはそう見えるのだろう。きっと。
「そうですよ。もっと自信を持っても良いのに」
「自信ねぇ……」
素顔を晒すと人に怖がられる自信はあるけど、なんて言ったら怒られそうだからやめとこう。
「その切れ長の目だって、流羽さんの魅力のひとつですよ?」
「いやぁ、目つきが悪いから怖がられているし……」
前髪を伸ばしているのはむやみに人を怖がらせないため。って言っても、この前髪でも怖がられているような気がして、ちょっと眉を下げた。
「目は見えていたほうが可愛いと思います」
「……俺は本気で陸矢の視力を心配するよ……」
家族以外で俺の顔に対してそんなことを言う人、いなかったから。照れ隠し半分、心配半分でそう口にすると、陸矢は「本当ですよ?」と念を押してきた。
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