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3章 偶然の再会
偶然の再会 1-1
しおりを挟むそれから一ヶ月くらい経ち、週末になれば抱かれるようになった。一度だけ周の真ん中、水曜日に求められたことがあり、木曜日に起きられないことがあった。それ以来、週末にということになったのだ。
俺の仕事は家政夫だから、起き上がれないのは……という理由で。ただし、週末……土日には家事を休んでいいとも言われていた。とはいえ、家事はやらないと溜まるから、平日よりは手を抜いた家事をすることに落ち着いた。料理に関しては俺が起き上がれたら、ということで。
金曜日に抱かれることが多く、土曜日は大体十時頃に起きてブランチを食べる。そのブランチは配達してもらったり、冷凍食品だったりとその日によって違う。
「……さて、今日はなにを作ろうかな」
家事を一通り終わらせてスーパーに向かいながら今日の献立を考える。魚料理も捨てがたい。あ、大葉を買って刺身と一緒に浸け込むのもいいかもしれない。わさびを溶いたポン酢で味をつけるのだ。簡単でさっぱりと美味しい。好みで白ごまをパラパラと振りかけるのもいい。
……そうするか? 刺身と言えば日本酒のイメージだ。この前陸矢がもらって来たものがあるから、それを合わせるのも良いかもしれない。
「――浜本?」
突然声を掛けられてびくっと肩が跳ねた。
「ああ、やっぱり! おれのことわかるか? 小・中と同じだったんだけど……」
「……山村……」
――振り向くと、かつて俺のことをいじめていた張本人が、そこにいた。思わず警戒するように彼を見る。
「本当に久しぶりだな。ここで会うとは思わなかった。……なあ、少し、時間いいか?」
俺が警戒していることに気付いたのだろう。山村は真剣な表情で俺を見て、小さく頭を下げ、「ごめん!」と謝った。
まさかいきなり謝られるとは思わなくて、ぽかんとしてしまった。頭を上げて、バツが悪そうに視線を逸らし、後頭部を掻く山村に、俺は首を傾げた。
「ずっと、これまでのことを謝りたかったんだ。浜本、全然同窓会にも来ないし……」
――俺をいじめていたやつらに会いたくないのだから、行くわけないだろう。俺が黙っていると、山村は眉を八の字にして「本当ごめん」と再び謝った。――改心、したのだろうか? と疑問に思いつつ、ここでは周りの視線が気になる。
「……話をするなら、どっか行こう」
「……じゃあ、近くにあるファミレスでいいか?」
こくりとうなずくと、そのままファミレスへと向かう。まさか、こんな場所で同級生とばったり会うとは想像していなかった。話すことなんて、俺にはないからきっとすぐに話は終えるだろう。
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