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2章 不幸は幸運とともに
不幸は幸運とともに 9-1
しおりを挟む「……陸矢、当たってる……」
「流羽さんの反応が可愛くて」
俺に対して『可愛い』なんていうやつ、家族以外で初めて見た。驚いていると、背中にあった体温が離れ、とさっとベッドに押し倒された。素早い。
ほんのりと、陸矢の頬が赤く染まっていることに気付いて、目を瞠る。興奮しているにしても、その表情は意外で。
陸矢はもう一度ローションのボトルと手に取ると、手のひらにたっぷりと取り出し、ぬちゃぬちゃと音を立てながら手のひらを擦り合わせて、俺の下半身に手を伸ばした。
温められたローションが太ももから足首まで伸ばされる。まるでマッサージを受けているようだ。
「……ふ、っく……」
くすぐったくて笑ってしまう。
「……こんなに敏感なのによく今まで誰にも開発されませんでしたね」
「開発って……」
「感度は育つんですよ」
ぎらり、と陸矢の目が光った気がした。その瞳の強さに、思わず唾をのみ込む。
陸矢はそのまま、俺の足をマッサージするように揉み、そのたびにくすぐったさに身を捩った。足首からふくらはぎを揉まれ、足首から膝裏までをぐいーっと流れるように動かす。それをもう片方の足にも繰り返し、今度は太ももに触れてきた。
太ももは揉むのではなく、するりと撫でられた。ただ撫でられるだけなのに、どうしてこんなにも落ち着かないのか。
「触り方がやらしい」
「やらしいことをしているんだから、当然でしょう?」
くすくす笑う陸矢に、そりゃそうだ、と妙に納得してしまった。ちらりと彼の下半身に視線を向けると、反応を示している陸矢のモノが見えて、そっと彼の肩に手を置いた。
「……口でしようか?」
「たいへん魅力的なお誘いですが、言いましたよね、オレ」
甘やかせてって、とはちみつみたいに甘い響きで言われて、口を噤んだ。
「それじゃ、俺だけ気持ち良くなってない……?」
「流羽さんの性感帯を見つけることが、目的ですから」
すっと触れられていないほうの太ももが撫でられて、ぴくんと躰が跳ねた。すりすりと撫でられて、そのたびにローションが広がり、室内に水音が響く。
「……見つけてどうするんだ」
「開発するに決まっているでしょう」
きりっと真顔で、しかも無駄にイイ声で言われて、目を丸くしてしまった。開発してどうする、性感帯。
「流羽さんの躰、とても敏感だから開発のし甲斐がありそうですし」
「……開発って……」
困惑している俺を見て、陸矢は意地悪そうに目元を細めて口元を吊り上げる。
「気持ちいいほうが良いでしょう?」
ぺろりと唇を舌で舐めるのを見て、なぜかドクンと大きく鼓動が鳴った。……気がした。
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