【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?

海里

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2章 不幸は幸運とともに

不幸は幸運とともに 6-1

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 残りはキュウリの醤油漬けだ。

 きゅうりはヘタを取って一口サイズに切り、生姜は綺麗に洗って水分を拭きとり、皮を付けたまま千切り。皮がどうしても気になるっていう人は、ペットボトルの蓋で皮を剥くといい。剥きすぎないほうがいいからな、生姜。

「しょうゆ大さじ三、酢、酒は大さじ二。砂糖だけ大さじ一」

 味付けは迷ったら一対一が間違いない気がする。これは少ししょっぱめに味付けたほうがうまい。ビールのつまみになる。

 ちなみにきゅうり六本のレシピだ。三本なら大さじ一ずつで良い。陸矢りくやがぷるぷるしながらしっかりと言った分量をフライパンに入れた。

「三本なら十分でいいけど、六本だから二十分火にかける」

 これも好みだけど。加熱したきゅうりって柔らかくてとろとろになるから、食いやすい。

「きゅうりが色付いてきたらお好みで輪切り唐辛子を入れるけど――辛いの平気だっけ?」
「平気です」
「じゃあ入れよう」

 輪切り唐辛子をひとつまみ。パラパラっと。あとは蓋して煮る。それだけ。楽でうまいのが一番だ。

 二十分後に蓋を開けて水分を飛ばす。これも冷えたほうがうまいけど、熱くてもうまいんだよなぁ。

 つまようじに刺して味見。――うん、トロトロしていてうまい。

流羽るうさん、オレにも」
「ほら。熱いから気を付けろよ」

 つまようじに刺して渡そうとしたら、俺の手をぐっと掴んで食べた!

「……ビールに合いそうですね。美味しいです」

 にこにこと笑う陸矢に、「お、おう」と変な返事をしてしまった。

 料理が出揃い、テーブルに並べる。

「ごはんはどうする?」
「ビール飲むので止めておきます」

 酒を飲むときに炭水化物は要らないらしい。まぁ、じゃがいもという炭水化物があるからな。

「こう並ぶと本当に美味しそうですね」
「簡単な料理だけどな」
「いえいえ、オレにはこんなに手際よく作れませんから」
「それは慣れ」

 包丁の使い方や火加減などは自分で覚えるしかない。オーブンレンジも機種によって焼き加減などが違うから、作って研究するしかないんだよなぁ。

 そんなことを考えていると、陸矢がグラスを取り出して、とくとくとビールを注いだ。

「はい、流羽さん。お疲れさまです」
「あ、りがとう。……じゃあ、俺も」

 グラスにビールを注ぐと、陸矢は嬉しそうに目元を細めた。

「一週間、お疲れさまでした。乾杯」
「乾杯」

 カツン、とグラスを合わせる。ふたりだけだし、音が鳴っても気にしない。ごくごくと飲んで、ぷはーっと息を吐く。ビールの最初の一口ってほんっとうにうまいよなぁ。

「あ、このビール美味しいですね」
「だな。俺はラガー系がやっぱり好き」
「エールは香りが良いですよね。のど越しはラガーのほうが良いですが」
「ここら辺も好みだなぁ。ビールの種類多いから、全制覇は出来ないし」
「確かに多いですね……」

 生ビールの他にもリキュールやら発泡酒やらあるから、飲み飽きることはなさそうだけど、全種類を飲むのは難しい。なんせ期間限定のものも多いから。

「期間限定のお酒も良いですよね」
「季節を感じるよなぁ。缶のパッケージも凝ってるし」
「花火とか紅葉とか?」
「そうそう。つい手が伸びる」

 それぞれの季節に合わせたパッケージデザインを思い出しながら、もう一度ビールを流し込む。陸矢を見ると、ワクワクとした表情で肉じゃがを食べていた。
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