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2章 不幸は幸運とともに
不幸は幸運とともに 5-1
しおりを挟むとりあえず、まずは買い物を終わらせるか。
「陸矢、今日、酒は飲む?」
「いただきます。仕事終わりのビールって、どうしてあんなに美味しいんですかね……。流羽さんは?」
「じゃ、俺も飲もうかな」
やった、と陸矢が喜んでいるのを聞いて、俺は眉を下げた。こういうところは年下っぽい。
陸矢はすいっと俺が持っていたスーパーのカゴを持つ。スムーズに俺から陸矢へとカゴが移動した。……モテそうなことをするなぁ。
きゅうりとしょうが、ピーマンを買い物カゴの中へ入れ、必要なものを揃える。確かツナ缶はあったはずだ。調味料関係もこの一週間で揃えたし、あとはメインの材料を揃えて酒も追加して、レジに向かう。
「今日は肉じゃがですか?」
「ああ」
「楽しみですね」
「期待しすぎるなよ」
なんせ肉じゃがに使う味付けはめんつゆがメインだ。一から味付けてもいいが、めんつゆという万能な調味料があるのだから、使わない手はない。……もちろん、多少手は加えるけどな。
レジで支払いをして、買った品物をエコバッグに入れ、帰路につく。
……というか、なんで陸矢がエコバッグも持っているんだ。お前の手は商売道具だろう……と、多少困惑しながらも、陸矢の家まで歩いた。
陸矢は手が塞がっているので、俺が鍵を開けた。
「ただいま」
「お邪魔します」
「……そこはもう『ただいま』で良いのでは?」
陸矢の言葉に、俺は肩をすくめて彼からエコバッグを奪うように取った。
「手洗い、うがい、な」
「……流羽さんも、ですよ」
ダイニングテーブルにエコバッグを置き、「これしまってから」と返事をする。必要な分はキッチンに、あとは冷蔵庫に。ビールは冷えているほうが好きだしな。エコバッグを元の形にたたみ、使ったものをすべて元に戻す。こうすることで、次に使うときも探さずに使える。
地味に大事なことだよな。
陸矢が洗面所からこっちに来たので、入れ替わりのように手洗い、うがいをするために洗面所に向かった。
それからエプロンを身に付けて、食事の準備をする。
「流羽さん、オレも手伝っていいですか?」
「……構わないけれど……、雇い主を働かせる家政夫ってどうなの?」
「いいじゃないですか、オレがやりたいんですから」
陸矢はこうして人懐っこいところがあるから、人に好かれているんじゃないかなと思う。
愛嬌あるし、格好いいし。モテるだろうに、金曜日の夜に俺と過ごして良いのかね……と、そんな考えが脳裏をよぎる。
「……今日、金曜日だけど、家に帰って良かったのか?」
自分用のエプロンを身に付けた陸矢に問いかけると、キョトンとした表情をしていた。
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