【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?

海里

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2章 不幸は幸運とともに

不幸は幸運とともに 4-2

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 スーパーの中で考え込んでいると、ぽんぽんと肩を叩かれた。

 え? と思い振り向くと――そこに居たのは陸矢りくやだった。

「え、なんでここに?」
「仕事が早めに終わったので、流羽るうさん、ここかなーって来てみたら当たりでした」
「……そっか。あ、今日肉じゃがだけど良い?」
「もちろん! わぁ、楽しみです」

 にこにこと人懐っこい笑みを浮かべながら、カルガモよろしく俺のあとをついて来る陸矢。

「仕事が終わったのが早いってことは……」
「明日と明後日休みです」
「フリーランスなのにカレンダー通りなのな……」
「たまにズレますけどね。オンとオフはしっかり分けたい派なんですよ、オレ」

 イラストレーターとして働いている陸矢は、出来るだけカレンダー通りに動きたいらしく、土日・祝日はしっかりと休みたいらしい。

 もちろんゴールデンウィークやお盆、年末年始もしっかり休みを取ってゆっくり過ごすらしい。

 いわく、『オレが休まないとアシスタントたちが休めない』、そうだ。

「イラストレーターっていうか社長だよな……」
「あはは。まあ、似たようなもんですよ。ところで、さっきからきゅうりとピーマン眺めてどうしたんですか?」
「あー、副菜。無限ピーマンかきゅうりの醤油漬けか悩んでた」
「どっちも美味しそうですね。どっちもじゃダメなんですか?」
「……いや、お前が良いなら良いけど……」

 きゅうりの醤油漬けは大量に作って作り置きしても良いし。

 これは冷蔵庫に入れておけば一週間くらいは持つ。それに、作り立てよりも味がしみ込んだ四日目や五日目がうまい。

「まあ、置いといてもいいしな。じゃ、両方作るか」
「やった。流羽さん、料理しているところ見ていても良いですか?」
「……別に構わないけど、面白いもんじゃないんじゃ?」
「そんなことありませんよ。オレ、自慢じゃないけど料理できないから」

 ……それについては確かに、と思ってしまった。

 だってこいつの家、調味料も調理器具もほぼほぼなかったもん。

 あまりの物のなさに愕然とした。そして、頼むから食材と調味料、調理器具を買い足させて欲しいと言った。

 ……そしてその金は陸矢が出したという……。

 俺が払うっていったけど(使うの俺だし)、陸矢はかたくなにゆずらなかった。

 ――ひとり暮らしの男のキッチンでも、フライパンと包丁、小鍋くらいはあるだろうと思っていたが……。

 普段はコンビニ弁当か外食が主のようで、それすらなかった。

 かろうじてあったのはキッチンバサミと耐熱ガラスボウル。なんでこれはあったのか、それはとても単純な理由だった。

 レトルトカレーを温めるのに使っていたらしい。そのうち、中身を取り出さなくても良いものが売られたので、耐熱ガラスボウルはお役御免ごめんになり埃をかぶることになった。
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