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番外編!
ルード視点から見たサディアスとニコロの話
しおりを挟む初めて会ったのは私が十三歳の頃。王都の聖騎士団に入った時、サディアスに紹介された。人気ヒトケのないところで紹介された。入団テストでそれなりの成績を収めたらしい私は、一番隊に所属することになった。
私が入団した時、既にサディアスは聖騎士団長で、ニコロはその隣に居てサディアスのフォローをしているように見えた。
「初めまして、ニコロです」
「初めまして、ルードリィフ・K・メルクーシンと申します」
互いに挨拶を交わして、それからサディアスへと視線を向けた。サディアスの視線はニコロに注がれていて、にこりと微笑むサディアスに、ニコロが小さく息を吐いた。そして、私の肩をぽんと叩く。
「慣れるまで大変だろうけど、フォローはするから。そう言えば、どんなスキルなのか聞いても?」
「攻撃系です。こんな感じの」
すっと氷の剣を作り出すと、ニコロが「暑い時に丁度いいかも」と呟いた。……攻撃系のスキルを一体どのように使おうと思ったのか、それがわかったのはこの国でも珍しいくらいの猛暑が襲ってきた時だった。
汗をハンカチで拭いても止まらない! とタオルを取り出す聖騎士団員たちに向かい、ニコロは私に出せるだけの氷の剣を出して欲しいと言った。断る理由もないので出せるだけ出した。三本だったか四本だったかは覚えていない。
わらわらと氷の冷気を浴びようと集まり出す団員たちに、ニコロが「ちょっと涼しくするぞー!」と氷の剣に向けてニコロのスキルである突風を使った。
氷の剣は地面に刺さっていたからか、それともニコロのスキルの使い方がうまかったのか、とても涼しい風が私たちを少しの間暑さから守ってくれた。
「……う、羨ましい……!」
後日、出張(?)から帰って来たサディアスが、誰に聞いたのかその時のことを詳しく話して欲しいと私に頼み込んできたが断った。ニコロから聞けばいいのにと思ったから。サディアスが居ない時のニコロは、サディアスと言う盾がないからか、それとも気にしていないのか、貴族出身である団員たちから色々なことを言われていた。
「聖騎士団長を丸め込んだんだろ?」
「アシュリー家に相応しくはないだろうに」
「ああ、きっとアシュリー団長もお遊びなのさ」
ニコロはそれに気付いていながらも、聞こえないふりをしていた。聞こえていないはずがない。何も言わないニコロ。サディアスはこのことを知っているのだろうかと口にしようとしたら、ニコロから「団長には内緒ね」と言われた。
その後も色々とあったが、特に気にしていなかった。サディアスとニコロがどんな関係であろうと、私には関係ないと思っていたから。
――それでも、陰でこそこそと、誰にも聞かせないように言うのならまだしも、ほぼ聞こえるように口にするのを耳にするのはあまりにも不愉快だった。
あまりにも不愉快だったので、それなりの実力があるのだと思い練習に付き合ってもらうことにした。――弱すぎて驚いた。
「何やってんですか……」
「口が達者のようだったから、腕も達者なのだろうと思って」
「……案外子どもっぽいところあったんですね……」
意外そうに私を見た後、ニコロは私を食事に連れ出してくれた。とは言え、買って来た出来合いのものを公園のベンチで食べるというものだったけど。それでも外で食べるのは美味しかった。
思えば、あれはニコロなりのお礼だったのかもしれない。
ちなみに私が徹底的に倒した相手たちは、気付けば聖騎士団から姿を消していた。後日そのことをニコロに伝えると、「え、今頃気付いたんですか……?」とちょっと呆れた顔をされた。
「多分、団長が追いやったんでしょうね、頼んでないのに」
「サディアスが?」
……サディアスが、そんなことを……? と首を傾げると、ニコロは曖昧に微笑んだ。その後、ニコロはサディアスの命じられて一番隊へやって来た。恐らく、サディアスの気遣いもあったのだろう。
ニコロは私がひとりにならないように、話し掛け、周りの団員たちと話させた。最初はなぜそんなことをするのかと思ったが……あれは恐らく、私に聖騎士団で気軽に話せる人を作るためだったのだろう。
戦闘面においても、ニコロのフォローは絶妙だった。彼が孤児院出身だと聞いて驚きもしたが、同時に納得もした。きっと元から面倒見が良いのだろう。……ああ、だからサディアスは私にニコロを紹介したのか。
聖騎士団での生活は、メルクーシン家に居る時よりも楽しかった。
サディアスに王立図書館の話を聞いて本を借りたり、行き場のない人を拾ったり、割と自由に過ごせていた。
これからもこんな生活が続くのだろう――そう考えていた。
だが、――ある日、ニコロが負傷した。サディアスを庇って。命はあるが、足の負傷は重く……聖騎士団員としては退職するしかなくなった。
ニコロには世話になっていたし、軽い気持ちで屋敷に誘った。ニコロは葛藤なんてせず、「ありがたくお世話になります」と言葉を出した。……その言葉の響きに、色はない。
傷が癒えてニコロのリハビリが始まった。じいやのスパルタが始まり、ニコロは大変そうだったが歩けなくなるのは絶対イヤだとがんばっていた。
その成果が実り、杖もなく歩けるようになったニコロに待っていたのは、じいやとリーフェのこれまたスパルタな指導だった。……よく、耐えていたな、と今更ながらに思う。
サディアスからはニコロのことを聞かれたので、そのたびにリハビリと仕事のことを話した。他愛のない話だったが、サディアスは真剣に聞いていた。
「ルードの屋敷って、確か外れのほうにあるよね」
「……? そうですね」
「うん、場所さえわかれば良い。今は、遠征について話し合わないとね」
ニコロが屋敷に来て三年ほど経過した。今年の遠征のことを話し合う前に、サディアスに尋ねられて答えると、彼は綺麗に微笑んでみせた。……何を考えているのだろうか?
遠征の話し合いをして、屋敷に帰るとヒビキが「おかえりなさい」と声を掛けてくれた。……屋敷のものたちに『お帰りなさいませ』と言われることは多いが、こんな風に言われることは初めてかもしれない。心がくすぐったい気がした。
――その日、ヒビキを抱いた。気を失った後のヒビキの顔は艶やかで、なぜか心が満たされた気がした。……ずっと欲しかった人が、私の胸の中にいる。
……私でも、人を愛せるのだな。そんなことを考え、目を閉じた。
「――迎えにね、行こうと思うんだ」
遠征のために屋敷から離れていた時、サディアスがそんなことを口にした。迎えに? と首を傾げると、サディアスは小さく口角を上げた。
「ニコロだよ。三年待ったんだ、もう良いと思わない?」
「……ニコロが受け入れると思いますか?」
「どうだろう。……ニコロに嫌われていない自信はあるんだけど」
そういうサディアスは獲物を狩る目をしていた。前に私の屋敷の場所を尋ねていたのはそのためか、と納得した。
「それに、ルードの雰囲気を変えた子にも会ってみたいし」
ヒビキのことを言っているのだろうと、すぐにわかった。
私の表情を見たサディアスが不思議そうに目を瞬かせる。
「どうしたの、そんな顔をして」
「……私は今、どんな顔をしているんですか」
「うーん、愛おしくてたまらないって顔?」
――間違ってはいない。ヒビキのことを想うだけで、心が温かくなるから。そして、サディアスはふっと優しく目元を細めると「良かった」と呟いた。
「ルードが幸せを掴んでくれそうで、わたしは嬉しい」
「……団長……」
「自分の幸せを掴めるのは、自分だけなのだから」
その心を、大切になさい。
――サディアスはそう言って――兄のように、微笑んだ。
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