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web拍手再録(本編設定)

拍手お礼SS キスについて(2020/04/12~2020/05/01)

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・本編設定

・キスの息継ぎについてニコロに相談するヒビキ

・サディアス×ニコロが強い



「あ、いたいた。ニコロ、ちょっと良いかな?」

「どうしました、ヒビキさま」



 目当ての人物を探し当てて、おれはニコロに声を掛けた。リーフェから今日はニコロが休みだと聞いていたから、ちょっと話をしたくなったのだ。ニコロとふたりで会話することってあんまりないしね。



「あのさ、ちょっと聞きたいことがあって……」

「はあ。まぁ、俺で良ければ聞きますけど……」



 むしろ、ニコロにしか聞けないことなんだ……。おれが真剣な表情を浮かべているのを見て、ニコロは辺りをきょろきょろと見渡してから、こちらへ、とおれを屋敷の裏側へと案内した。木漏れ日が心地よい場所で、物珍しそうに眺めていたらニコロが壁に背をつけるように座った。なので、おれも彼の隣に座る。



「それで、聞きたいことってなんですか?」

「……あの、さ。ニコロは……キス、する時に息継ぎできる……?」



 おれの言葉があまりにも意外だったのか、彼は目を大きく見開いてそれから「え?」と聞き返してきた。なので、もう一度同じことを言う。恥ずかしいけれど、こういうのを聞くのならニコロが一番だと思ったんだ。



「あー……えーと、……まぁ、そう、ですね……」

「コツとかある?」

「えっと、なんでそれを俺に聞くんでしょうか」

「だってリーフェやリアには恥ずかしくて聞けない……!」



 それにニコロなら茶化すわけでもなく聞いてくれると思ったし。リーフェやリアは茶化すというよりもすっごい目をキラキラと輝かせそうで……。真剣に聞いてくれそうなニコロを相談相手に選んだ。



「コツって言うか……、相手が唇を離した時に吸うだけでしょう」

「……それが出来ないから困ってるんだよ……。サディアスさんとのキスってどんな感じなの?」



 サディアスさんのことを思い出したのかニコロはかぁっと顔を赤くした。……確かにリーフェの言う通り、嫌っているようには見えないなぁ……。サディアスさん、昨日来ていたから今日は来ないと思うし、ちょっと突っ込んだことも聞いてみたい。



「ノーコメント!」



 ぶんぶんとニコロが頭を勢いよく振る。言いたくないらしい。



「でも息継ぎは出来るんだよね……?」

「慣れですよ、慣れ。唇を離した時に、呼吸してまたキスしての繰り返しなんだから。あー、でも隊長のキスってねちっこそう」

「……おれ、キスをしたのもルードが初めてだから、他の人と違うのかどうかなんてわからないんだけど……。とりあえず、息止めちゃうんだよね……」

「酸欠で苦しくなるでしょうに……」



 肩をすくめるニコロに、おれはこくりとうなずいた。どうすればキスはうまくなるのか……! こんなことなら恋愛もののドラマとか見ておくべきだった……! いや、あれ参考にして良いものか?

 おれがうーん、と悩んでいると、ぽんぽんとおれの頭をニコロが撫でた。ルードとは違う撫で方だ。



「あ、すみません。つい」

「ううん。頭撫でられるの好きだよ、おれ」

「そうですか」



 なら、とわしゃわしゃ撫でてくれた。そしてぽつりと「ヒビキさまは本当に隊長が好きなんですね」と優しく笑った。おれは首を縦に振った。ルードを好きなことは本当のことだし、この屋敷で隠すこともない。



「ニコロは? サディアスさんのこと好き?」



 おれの問いに、ニコロはぴしりと身を硬直させた。そして、おれから手を離すと空を見上げる。



「……嫌いではありませんよ」



 曖昧な言葉だな、と思った。嫌いじゃないってことは好意は持っているってことだと思うけど、多分ニコロはそれを認めたくないんだろう。

 それがなぜなのかはわからないけど……。



「あのさ、そもそもなんだけど……どっちがどっち?」



 前からの疑問を口にする。おれの予想だとニコロが受け入れるほうだと思うんだけど……ニコロはおれに視線を戻すと、すごく怪訝そうな顔をした。おれがこういうことに口を出しているからだろう。



「その、おれ、こういう関係になったの、ルードが初めてだから……。ニコロも似たような感じなら、相談しやすいなって」

「……ヒビキさま、素直なのは大変良いと思いますが……、ちょっとダメージ受けてません?」

「ダメージって言うか、うん……、その、聞いて良いのかなって思ってるのは確かだけど……」



 だって聞くだけでこんなに恥ずかしい。聞かれたニコロも恥ずかしいだろうなぁと思うけど。ニコロはそんなおれを見て小さく息を吐いた。



「予想通りだと思いますよ。俺と団長のそういうことなら」

「えっ、やっぱりニコロが受け入れるほう!?」

「――大きな声は出さないでください。聞かれたら俺も恥ずかしい」

「ご、ごめん……」



 しゅんと肩を落とすとニコロが眉を下げる。そして、そのままもう一度おれの頭をぽんぽんと撫でる。優しい手つきだ。



「ところでなんでそんなことが気になったんです?」

「ルードに触れられるたびに、感度が増している気がして……。おれ、こんなに感じやすい躰じゃなかったはず、なんだけど……」

「え、隊長以外にも経験が?」

「自分でする時だよッ」



 ああ、と納得したようにニコロがうなずいた。そしてさっきルードが初めてだとちゃんと言ってあるから、ニコロはわざとボケたんだろう。意趣返しか!

 ともかく、こういう話を出来る同性が居るのは心強い。ルードには言い辛いし……。ニコロはおれの心境を察したのか、もう一度肩をすくめると「まぁ、話を聞くだけなら出来るので」と励ますようにおれの肩を叩いた。



「――……ちなみに、ニコロは感じやすいほう?」

「……ノーコメントで」

「サディアスさんとする時、ちゃんと気持ちいい?」

「……ノーコメント! って言うかちゃんとってなんですか、ちゃんとって」

「いやぁ……だってサディアスさんがどんな風にしてるのかなんて、全然わからないから」

「知らなくて良いこともたくさんあるんですよ、ヒビキさま――」



 おれの問いに疲れた顔をしながら、それでもちゃんと答えてくれるんだから律儀だよなぁとニコロを見る。そして、一気に顔を青ざめたニコロに気付く。



「――そんなに気になるのなら、見てみる?」

「へ?」



 いつの間に来ていたのか、サディアスさんがめっちゃいい笑顔でおれらを見ていた……。隣にはルードが居て、「なにを言い出すんだこの人は」とばかりにサディアスさんを見ていた。

 おれは慌てて首を横に振る。ニコロは慌てて立ち上がろうとして、転びそうになったところをサディアスさんに助けられた。



「ひっ」

「助けてあげたのに悲鳴なんて酷いなぁ……」

「団長。今日はそういう目的じゃなかったでしょう……」

「ああ、そうだった。でも、ちょっとくらい良いよね?」



 え、と思うのと同時にサディアスさんがニコロの顎を持ち上げて唇を重ねる。返事を聞く前にニコロの唇を奪うとは……。ルードがすごく呆れたような顔を浮かべていたのが印象的だった。

 そして、おれはニコロに内心ごめんと謝りながら、ついサディアスさんとニコロのキスを眺めてしまった。息継ぎが出来る、と言っていた通り唇と唇が離れたほんの一瞬の隙を見て呼吸しているようだった。だんだんと激しくなっていく彼らのキスを見ていて、顔が赤くなのを感じる。ごめん、ニコロ。ほんっとーにごめん。



「ヒビキは後で私とたくさんキスしようね」

「あ、はい……」



 見られたくない部類のコトだと思うんだけど、とても参考になりました……。

 ちなみにその後、ニコロはおれらに対して「見なかったことにしてください……」とか細く伝えて、サディアスさんから逃げるように去っていった……。走れないから、壁に手をついてよろよろとしながら……。



「ニコロの照れ屋は変わらないね」



 そんなことを爽やかに言うサディアスさんに、おれとルードは目を見合わせて肩をすくめた。

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