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web拍手再録(現代シリーズ)
拍手お礼SS 紅葉狩り編(2020/11/01~2020/11/30)
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~もしも迷い込んだのがヒビキではなくルードだったら~
異世界→日本
「うわぁ、もう色づいてる!」
「本当、寒いけどきれーい!」
「……見事なものだな」
紅葉狩りしない? と誘ってきたのは姉だ。なんでも彼氏と行った時に見た紅葉が綺麗だったから、おれらとも共有したくなったらしい。
写真でも共有できるんじゃ? って言ったら、ロマンないわねと笑われた。その後こっそり、ルードと一緒に思い出増やしなさいよ、と言われて姉が誘ったのはどちらかというとルードのためみたいだ。
でも、確かに紅葉は綺麗だった。ルードは紅葉を見たことがないみたいで、色づいている葉っぱに驚いていた。そして、それが落ちていく様子をただ眺めているだけなのに、どうしてこんなに絵になるのか。姉がデジカメを素早く用意して、紅葉を見上げるルードの姿を撮った。
「うーん、眼福……!」
「姉ちゃん……」
「ほら響希もルードのとこに向かう! 早く早く!」
「えええ……」
ドンっと割と強く背中を押されて、ルードにぶつかりそうになったけれども、ルードはおれに気付いてパシッと受け止めてくれた。そして鳴るシャッター音。……狙ってたな、絶対狙ってたな、姉よ……!
「それにしても、姉ちゃん本当に良かったの? おれらと来て」
「当たり前でしょ。私、保護者だもの。彼氏ばっかり優先しません~。彼もわかってくれてるしね。あ、ホテルは私がひとり部屋、ルードと響希は一緒だから」
「え」
「良いじゃない。……付き合ってるんでしょ?」
首を傾げる姉に、おれとルードは顔を見合わせた。姉に言った覚えはない。そんなおれらに、姉はくすくすと笑って肩をすくめた。「バレてないと思ってたの?」と本当に楽しそうに笑うもんだから、おれは顔を真っ赤にして、ルードは意外そうに姉を見ていた。
「……良いのか、私とヒビキが付き合って」
「そりゃ二次元と三次元では感じることは違うけど、でもね、私は響希が選んだ人なら大丈夫だと思ってる。幸せなら良いのよ。……泣かせたら殴らせてね?」
「……泣かせるつもりはないが……」
多分、お月見の時におれが泣いたのを思い出している。バツが悪そうに視線を逸らすルードに、姉は肩をすくめた。そして、仁王立ちするとびしっとルードとおれを指さす。
「響希も、ルードも! 私の大切な弟たちなの! 幸せにならないと許せないの!」
「待て、私も弟枠なのか!?」
「響希の恋人なら私の義弟でしょ!?」
……あのー、ここら辺あまり人が居ないと言ってもちらほら人がこっちを見ているんですがー……とも言えず、おれはおろおろとふたりを見る。そして、姉は二十歳、ルードは二十三歳。自分より年上の男性をこうも堂々と弟と言える姉に、ちょっと感心した。
「……そもそも、結婚してないから義弟っておかしいんじゃ……」
そう突っ込むおれに対して、ふたりはキョトンとした顔をして、「日本で結婚出来るわけないじゃない」と姉は言い、ルードに関しては「私の国なら出来るが……」と真剣に考え始めた。……ツッコミ役が足りない、誰か! 誰かツッコミを入れてくれ!
「養子縁組ってのも手だけど、ルードの戸籍がなぁ……」
「待って? なんでそこまで乗り気になってるの!?」
「……楽しいから?」
「知らないよ!?」
わちゃわちゃ騒いでいるおれらは結構な注目を浴びてしまい、逃げるようにホテルに向かった。予約は姉が取ってくれていて、本当に姉はひとり部屋、おれらは一緒の部屋になっていた。部屋に入るなり、おれはベッドの上に飛び込んだ。ふかふかのベッドに横になって、はぁ~と息を吐く。
「疲れたか?」
「あーいえ、えっと、なんか姉ちゃんがすみません……」
「気にしていない。まさか弟のように思われていたとは……」
あれ? でもなんか、嬉しそうに見えるのは気のせいかな。ルードもベッドの上に座ると、ゆっくりとおれの頭を撫でた。くすぐったいけど、心地良くて目を閉じると、触れるだけの優しいキスをされた。
それだけなのにドキドキと胸が高鳴る。唇が離れて、もう一度頭を撫でられる。秋の気候でちょっとだけかさついている唇の感触を思い出すように、おれは自分の唇を撫でた。
「夜になったらライトアップされるらしい。見に行くか?」
「そうですね。紅葉がこんなに綺麗なんだから、見なきゃ損です!」
おれがそう言うと、ルードは優しく微笑んだ。――ああ、好きだなって思う。その表情が、ルードの長い髪に手を伸ばして指と髪を絡める。ルードは不思議そうにおれを見たけれど、おれは「ふふ」と笑うだけだった。
そのうちに姉からごはんたべよーって連絡が入って、おれらはまたホテルから出て行って、近くの洋食屋さんでご飯を食べた。姉は真剣に味わい、味の研究をしているようだ。これはきっと新メニューが保科家にあがるのも時間の問題だな。
……それにしても、姉は一体いつ、おれとルードが付き合い始めたのを知ったのだろうか。まさか、お月見の時にキスしていたのを見られていたんだろうか。エスパーってわけじゃないよな……?
おれが見ていることに気付いて、姉は「一口食べる?」と聞いてきた。首を横に振ると、「おいしいよ?」と笑っている。
姉にはどうも、頭が上がらないなぁ……。多分、ルードも。女は強いって言うしね。……いや、本当、うちの姉……色んな意味で強くない……?
その日の夜、ライトアップされた紅葉を見たけれど、とても綺麗で……。まるで現実味がないなぁなんて思えた。姉は「彼氏と見たからいい」とホテルに残ってしまったけれど、多分……いや絶対おれらに気を遣ったのだろう。なので、おれはスマホを取り出して紅葉を見つめるルードの写真を撮って、姉に送った。めっちゃ喜ばれた。
『ふたりでも撮れば良いのに』
って言われたけど、自撮りは難しいからしない。……それにしても、本当に綺麗だなぁと思う。紅葉と言うか、紅葉を愛でるルードが。シャッター音に気付いて微笑んでくれるのも、ずるいと思うくらいに格好良かった。
異世界→日本
「うわぁ、もう色づいてる!」
「本当、寒いけどきれーい!」
「……見事なものだな」
紅葉狩りしない? と誘ってきたのは姉だ。なんでも彼氏と行った時に見た紅葉が綺麗だったから、おれらとも共有したくなったらしい。
写真でも共有できるんじゃ? って言ったら、ロマンないわねと笑われた。その後こっそり、ルードと一緒に思い出増やしなさいよ、と言われて姉が誘ったのはどちらかというとルードのためみたいだ。
でも、確かに紅葉は綺麗だった。ルードは紅葉を見たことがないみたいで、色づいている葉っぱに驚いていた。そして、それが落ちていく様子をただ眺めているだけなのに、どうしてこんなに絵になるのか。姉がデジカメを素早く用意して、紅葉を見上げるルードの姿を撮った。
「うーん、眼福……!」
「姉ちゃん……」
「ほら響希もルードのとこに向かう! 早く早く!」
「えええ……」
ドンっと割と強く背中を押されて、ルードにぶつかりそうになったけれども、ルードはおれに気付いてパシッと受け止めてくれた。そして鳴るシャッター音。……狙ってたな、絶対狙ってたな、姉よ……!
「それにしても、姉ちゃん本当に良かったの? おれらと来て」
「当たり前でしょ。私、保護者だもの。彼氏ばっかり優先しません~。彼もわかってくれてるしね。あ、ホテルは私がひとり部屋、ルードと響希は一緒だから」
「え」
「良いじゃない。……付き合ってるんでしょ?」
首を傾げる姉に、おれとルードは顔を見合わせた。姉に言った覚えはない。そんなおれらに、姉はくすくすと笑って肩をすくめた。「バレてないと思ってたの?」と本当に楽しそうに笑うもんだから、おれは顔を真っ赤にして、ルードは意外そうに姉を見ていた。
「……良いのか、私とヒビキが付き合って」
「そりゃ二次元と三次元では感じることは違うけど、でもね、私は響希が選んだ人なら大丈夫だと思ってる。幸せなら良いのよ。……泣かせたら殴らせてね?」
「……泣かせるつもりはないが……」
多分、お月見の時におれが泣いたのを思い出している。バツが悪そうに視線を逸らすルードに、姉は肩をすくめた。そして、仁王立ちするとびしっとルードとおれを指さす。
「響希も、ルードも! 私の大切な弟たちなの! 幸せにならないと許せないの!」
「待て、私も弟枠なのか!?」
「響希の恋人なら私の義弟でしょ!?」
……あのー、ここら辺あまり人が居ないと言ってもちらほら人がこっちを見ているんですがー……とも言えず、おれはおろおろとふたりを見る。そして、姉は二十歳、ルードは二十三歳。自分より年上の男性をこうも堂々と弟と言える姉に、ちょっと感心した。
「……そもそも、結婚してないから義弟っておかしいんじゃ……」
そう突っ込むおれに対して、ふたりはキョトンとした顔をして、「日本で結婚出来るわけないじゃない」と姉は言い、ルードに関しては「私の国なら出来るが……」と真剣に考え始めた。……ツッコミ役が足りない、誰か! 誰かツッコミを入れてくれ!
「養子縁組ってのも手だけど、ルードの戸籍がなぁ……」
「待って? なんでそこまで乗り気になってるの!?」
「……楽しいから?」
「知らないよ!?」
わちゃわちゃ騒いでいるおれらは結構な注目を浴びてしまい、逃げるようにホテルに向かった。予約は姉が取ってくれていて、本当に姉はひとり部屋、おれらは一緒の部屋になっていた。部屋に入るなり、おれはベッドの上に飛び込んだ。ふかふかのベッドに横になって、はぁ~と息を吐く。
「疲れたか?」
「あーいえ、えっと、なんか姉ちゃんがすみません……」
「気にしていない。まさか弟のように思われていたとは……」
あれ? でもなんか、嬉しそうに見えるのは気のせいかな。ルードもベッドの上に座ると、ゆっくりとおれの頭を撫でた。くすぐったいけど、心地良くて目を閉じると、触れるだけの優しいキスをされた。
それだけなのにドキドキと胸が高鳴る。唇が離れて、もう一度頭を撫でられる。秋の気候でちょっとだけかさついている唇の感触を思い出すように、おれは自分の唇を撫でた。
「夜になったらライトアップされるらしい。見に行くか?」
「そうですね。紅葉がこんなに綺麗なんだから、見なきゃ損です!」
おれがそう言うと、ルードは優しく微笑んだ。――ああ、好きだなって思う。その表情が、ルードの長い髪に手を伸ばして指と髪を絡める。ルードは不思議そうにおれを見たけれど、おれは「ふふ」と笑うだけだった。
そのうちに姉からごはんたべよーって連絡が入って、おれらはまたホテルから出て行って、近くの洋食屋さんでご飯を食べた。姉は真剣に味わい、味の研究をしているようだ。これはきっと新メニューが保科家にあがるのも時間の問題だな。
……それにしても、姉は一体いつ、おれとルードが付き合い始めたのを知ったのだろうか。まさか、お月見の時にキスしていたのを見られていたんだろうか。エスパーってわけじゃないよな……?
おれが見ていることに気付いて、姉は「一口食べる?」と聞いてきた。首を横に振ると、「おいしいよ?」と笑っている。
姉にはどうも、頭が上がらないなぁ……。多分、ルードも。女は強いって言うしね。……いや、本当、うちの姉……色んな意味で強くない……?
その日の夜、ライトアップされた紅葉を見たけれど、とても綺麗で……。まるで現実味がないなぁなんて思えた。姉は「彼氏と見たからいい」とホテルに残ってしまったけれど、多分……いや絶対おれらに気を遣ったのだろう。なので、おれはスマホを取り出して紅葉を見つめるルードの写真を撮って、姉に送った。めっちゃ喜ばれた。
『ふたりでも撮れば良いのに』
って言われたけど、自撮りは難しいからしない。……それにしても、本当に綺麗だなぁと思う。紅葉と言うか、紅葉を愛でるルードが。シャッター音に気付いて微笑んでくれるのも、ずるいと思うくらいに格好良かった。
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