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web拍手再録(現代シリーズ)
拍手お礼SS 放課後デート編(2020/05/09~2020/05/31)
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~もしも迷い込んだのがヒビキではなくルードだったら~
異世界→日本
ゴールデンウィークはどこにも行かなかった。あ、いや。訂正しよう。バイトをしていたからどこにも行けなかったが正解だ。だってまさかバイトが受かるとは思わなくて。星空と一緒にカフェのウェイターを数時間、ゴールデンウィーク中ほぼ毎日通っていた。
ルードも撮影があったようで家に居ない日もあったし、姉は相変わらず料理をしたり彼氏と出掛けたりしていたみたい。我が姉ながらアクティブだ。
……そう言えば、恋人(仮)になってからルードとふたりで出かけていないな、と思い出す。あの後、色々あって姉には報告した。
『恋人(仮)ってどこまでOKなの?』
なんて聞いてくるから知らんっと部屋に戻ったのを良く覚えている。……確かに(仮)ってどこまで? 手を繋ぐとか? いや、手を繋ぐのは恋人じゃない時にもやってたし……、き、キスとか!? いや待ってハードルが高い!
「……百面相の保科くん、大丈夫ですかー?」
星空に声を掛けられてびくっと肩が跳ねあがった。ゴールデンウィークも終わって学校は普通に始まっている。そして今日は月曜日だからノークラブデーだから後はこのまま帰るだけだ。
「……おれ、そんなに百面相してた?」
「すっごいしてた」
うわぁ、と顔を手で覆い隠す。すると、教室がざわざわとしていることが気になった。女子なんて窓の近くでなにかきゃーきゃーと黄色い声を上げている。……?
「ねえねえ、あの人モデルのルードじゃない?」
「そうだよね! あの紺色の髪色、間違いないよ!」
ぶっと思わず吹き出してしまった。なんでルードが学校に!?
「ほ、星空、おれもう行くわッ!」
「ん? ああ、また明日なー」
慌てて鞄を手に取って昇降口まで向かい、靴を履き替えて校門まで抜かうと、ルードはおれに気付いて軽く手を振った。周りに居る女子たちの視線が痛い。
「な、なんで学校に?」
「仕事が早めに終わったから迎えに来た。学校と言うのも気になったしな」
あー、好奇心が勝ったかー。ルードって結構日本と元居た世界を見比べるのが趣味なんじゃないかって思うくらい、日本の話を聞きたがるから、もしかしたら今日もその延長なのかも。
「それじゃあ、行こうかヒビキ」
「あ、はい」
ルードがそう言うのと同時に、周りの女子からはえーっと残念そうな声が上がる。もっと話したかったのだろう。写真は撮られていないようで良かった。
女子たちにルードがちらりと視線を投げる。それだけで、女子たちは黙って身を硬直させたかのように動かなくなった。
「あの、ルード? どこに行くんですか?」
「デートをしよう、ヒビキ」
「はい!?」
いきなりのことにびっくりして思わず変な声が出た。もしやこれは放課後デート!? おれの頭をポンと撫でて、近くのカフェに入ってルードはコーヒーを、おれはココアとチーズケーキを頼んだ。運ばれてきたケーキを一口食べてみると、すごく美味しくてびっくりした。
「美味しい?」
「美味しいです。あ、一口食べますか?」
と一口分のチーズケーキを差し出してから気付いた。これ「あーん」じゃん! ナチュラルになにやってるんだ、おれ!
そしてそれを躊躇わずに食べるルードもルードだ!
「あ、本当だ。美味しいね」
「……ソウデスネ」
にこにこ笑っているから、まぁいいか……。なにが良いのかはわからないけれど!
食べ終わってカフェを出ると、今度はゲーセンに向かった。ルードは入ったことがないらしくて、物珍しそうにきょろきょろと周りを見渡していた。
「遊ぶなら両替しなきゃ」
「両替?」
「そ。小銭じゃないとさ」
両替機に千円を入れようとすると、ルードが財布を取り出しておれの代わりに両替機に入れた。じゃらじゃらと出てくる百円玉を手に取って、定番であるUFOキャッチャーから遊んでみることにした。
「って言ってもおれ、あんまり取れたことないけどさ」
眉を下げて肩をすくめて見せる。自分の財布から百円玉を取り出して、さっそく始めて見た。ルードに操作の仕方を教えてながらやったけど、やっぱりスカした。難しいよな、こういうのって。
「じゃあ私もやってみよう」
そう言ってルードが百円玉を取り出して、真剣な表情で操作し始めた。その姿はいつも見ている大人っていう感じはなく、むしろ初めて遊ぶゲームに夢中になっているのはとても子どもっぽいとは思うんだけど――……その姿がなんだか可愛く見えるのはなぜなのか。
「……あ、ヒビキ、なんか取れたみたい」
「えっ、すご!」
三回くらいでコツを掴んだのか、ルードは嬉々として取った物をおれに見せた。クマのぬいぐるみだ。それも結構大きいヤツ!
「わ、良く取れましたね!」
「ふふ、中々楽しかった。これはヒビキに」
「ありがとうございます……」
はい、とクマのぬいぐるみを渡された。ルードの目の色を思わせる空色のぬいぐるみ。結構大きいけど、まぁこのまま持って帰るか……。
それからもう一回やってルードは黒色のクマのぬいぐるみを取っていた。もう一度やって今度はピンクのぬいぐるみ。多分これは姉に渡すのだろう。……って言うかめっちゃうまいな!
「じゃあ帰ろうか」
「そうですね」
ゲーセンから家に帰れば、姉が夕食を作り終えているくらいになるだろうし。ゆっくりと歩きながら家までルードと話しながら帰った。
ちなみに、姉は三人でおそろいのクマのぬいぐるみにめっちゃ嬉しそうに微笑んだ。
異世界→日本
ゴールデンウィークはどこにも行かなかった。あ、いや。訂正しよう。バイトをしていたからどこにも行けなかったが正解だ。だってまさかバイトが受かるとは思わなくて。星空と一緒にカフェのウェイターを数時間、ゴールデンウィーク中ほぼ毎日通っていた。
ルードも撮影があったようで家に居ない日もあったし、姉は相変わらず料理をしたり彼氏と出掛けたりしていたみたい。我が姉ながらアクティブだ。
……そう言えば、恋人(仮)になってからルードとふたりで出かけていないな、と思い出す。あの後、色々あって姉には報告した。
『恋人(仮)ってどこまでOKなの?』
なんて聞いてくるから知らんっと部屋に戻ったのを良く覚えている。……確かに(仮)ってどこまで? 手を繋ぐとか? いや、手を繋ぐのは恋人じゃない時にもやってたし……、き、キスとか!? いや待ってハードルが高い!
「……百面相の保科くん、大丈夫ですかー?」
星空に声を掛けられてびくっと肩が跳ねあがった。ゴールデンウィークも終わって学校は普通に始まっている。そして今日は月曜日だからノークラブデーだから後はこのまま帰るだけだ。
「……おれ、そんなに百面相してた?」
「すっごいしてた」
うわぁ、と顔を手で覆い隠す。すると、教室がざわざわとしていることが気になった。女子なんて窓の近くでなにかきゃーきゃーと黄色い声を上げている。……?
「ねえねえ、あの人モデルのルードじゃない?」
「そうだよね! あの紺色の髪色、間違いないよ!」
ぶっと思わず吹き出してしまった。なんでルードが学校に!?
「ほ、星空、おれもう行くわッ!」
「ん? ああ、また明日なー」
慌てて鞄を手に取って昇降口まで向かい、靴を履き替えて校門まで抜かうと、ルードはおれに気付いて軽く手を振った。周りに居る女子たちの視線が痛い。
「な、なんで学校に?」
「仕事が早めに終わったから迎えに来た。学校と言うのも気になったしな」
あー、好奇心が勝ったかー。ルードって結構日本と元居た世界を見比べるのが趣味なんじゃないかって思うくらい、日本の話を聞きたがるから、もしかしたら今日もその延長なのかも。
「それじゃあ、行こうかヒビキ」
「あ、はい」
ルードがそう言うのと同時に、周りの女子からはえーっと残念そうな声が上がる。もっと話したかったのだろう。写真は撮られていないようで良かった。
女子たちにルードがちらりと視線を投げる。それだけで、女子たちは黙って身を硬直させたかのように動かなくなった。
「あの、ルード? どこに行くんですか?」
「デートをしよう、ヒビキ」
「はい!?」
いきなりのことにびっくりして思わず変な声が出た。もしやこれは放課後デート!? おれの頭をポンと撫でて、近くのカフェに入ってルードはコーヒーを、おれはココアとチーズケーキを頼んだ。運ばれてきたケーキを一口食べてみると、すごく美味しくてびっくりした。
「美味しい?」
「美味しいです。あ、一口食べますか?」
と一口分のチーズケーキを差し出してから気付いた。これ「あーん」じゃん! ナチュラルになにやってるんだ、おれ!
そしてそれを躊躇わずに食べるルードもルードだ!
「あ、本当だ。美味しいね」
「……ソウデスネ」
にこにこ笑っているから、まぁいいか……。なにが良いのかはわからないけれど!
食べ終わってカフェを出ると、今度はゲーセンに向かった。ルードは入ったことがないらしくて、物珍しそうにきょろきょろと周りを見渡していた。
「遊ぶなら両替しなきゃ」
「両替?」
「そ。小銭じゃないとさ」
両替機に千円を入れようとすると、ルードが財布を取り出しておれの代わりに両替機に入れた。じゃらじゃらと出てくる百円玉を手に取って、定番であるUFOキャッチャーから遊んでみることにした。
「って言ってもおれ、あんまり取れたことないけどさ」
眉を下げて肩をすくめて見せる。自分の財布から百円玉を取り出して、さっそく始めて見た。ルードに操作の仕方を教えてながらやったけど、やっぱりスカした。難しいよな、こういうのって。
「じゃあ私もやってみよう」
そう言ってルードが百円玉を取り出して、真剣な表情で操作し始めた。その姿はいつも見ている大人っていう感じはなく、むしろ初めて遊ぶゲームに夢中になっているのはとても子どもっぽいとは思うんだけど――……その姿がなんだか可愛く見えるのはなぜなのか。
「……あ、ヒビキ、なんか取れたみたい」
「えっ、すご!」
三回くらいでコツを掴んだのか、ルードは嬉々として取った物をおれに見せた。クマのぬいぐるみだ。それも結構大きいヤツ!
「わ、良く取れましたね!」
「ふふ、中々楽しかった。これはヒビキに」
「ありがとうございます……」
はい、とクマのぬいぐるみを渡された。ルードの目の色を思わせる空色のぬいぐるみ。結構大きいけど、まぁこのまま持って帰るか……。
それからもう一回やってルードは黒色のクマのぬいぐるみを取っていた。もう一度やって今度はピンクのぬいぐるみ。多分これは姉に渡すのだろう。……って言うかめっちゃうまいな!
「じゃあ帰ろうか」
「そうですね」
ゲーセンから家に帰れば、姉が夕食を作り終えているくらいになるだろうし。ゆっくりと歩きながら家までルードと話しながら帰った。
ちなみに、姉は三人でおそろいのクマのぬいぐるみにめっちゃ嬉しそうに微笑んだ。
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