上 下
199 / 222
web拍手再録(現代シリーズ)

拍手お礼SS 放課後デート編(2020/05/09~2020/05/31)

しおりを挟む
~もしも迷い込んだのがヒビキではなくルードだったら~

異世界→日本



 ゴールデンウィークはどこにも行かなかった。あ、いや。訂正しよう。バイトをしていたからどこにも行けなかったが正解だ。だってまさかバイトが受かるとは思わなくて。星空と一緒にカフェのウェイターを数時間、ゴールデンウィーク中ほぼ毎日通っていた。

 ルードも撮影があったようで家に居ない日もあったし、姉は相変わらず料理をしたり彼氏と出掛けたりしていたみたい。我が姉ながらアクティブだ。

 ……そう言えば、恋人(仮)になってからルードとふたりで出かけていないな、と思い出す。あの後、色々あって姉には報告した。



『恋人(仮)ってどこまでOKなの?』



 なんて聞いてくるから知らんっと部屋に戻ったのを良く覚えている。……確かに(仮)ってどこまで? 手を繋ぐとか? いや、手を繋ぐのは恋人じゃない時にもやってたし……、き、キスとか!? いや待ってハードルが高い!



「……百面相の保科くん、大丈夫ですかー?」



 星空に声を掛けられてびくっと肩が跳ねあがった。ゴールデンウィークも終わって学校は普通に始まっている。そして今日は月曜日だからノークラブデーだから後はこのまま帰るだけだ。



「……おれ、そんなに百面相してた?」

「すっごいしてた」



 うわぁ、と顔を手で覆い隠す。すると、教室がざわざわとしていることが気になった。女子なんて窓の近くでなにかきゃーきゃーと黄色い声を上げている。……?



「ねえねえ、あの人モデルのルードじゃない?」

「そうだよね! あの紺色の髪色、間違いないよ!」



 ぶっと思わず吹き出してしまった。なんでルードが学校に!?



「ほ、星空、おれもう行くわッ!」

「ん? ああ、また明日なー」



 慌てて鞄を手に取って昇降口まで向かい、靴を履き替えて校門まで抜かうと、ルードはおれに気付いて軽く手を振った。周りに居る女子たちの視線が痛い。



「な、なんで学校に?」

「仕事が早めに終わったから迎えに来た。学校と言うのも気になったしな」



 あー、好奇心が勝ったかー。ルードって結構日本と元居た世界を見比べるのが趣味なんじゃないかって思うくらい、日本の話を聞きたがるから、もしかしたら今日もその延長なのかも。



「それじゃあ、行こうかヒビキ」

「あ、はい」



 ルードがそう言うのと同時に、周りの女子からはえーっと残念そうな声が上がる。もっと話したかったのだろう。写真は撮られていないようで良かった。

 女子たちにルードがちらりと視線を投げる。それだけで、女子たちは黙って身を硬直させたかのように動かなくなった。



「あの、ルード? どこに行くんですか?」

「デートをしよう、ヒビキ」

「はい!?」



 いきなりのことにびっくりして思わず変な声が出た。もしやこれは放課後デート!? おれの頭をポンと撫でて、近くのカフェに入ってルードはコーヒーを、おれはココアとチーズケーキを頼んだ。運ばれてきたケーキを一口食べてみると、すごく美味しくてびっくりした。



「美味しい?」

「美味しいです。あ、一口食べますか?」



 と一口分のチーズケーキを差し出してから気付いた。これ「あーん」じゃん! ナチュラルになにやってるんだ、おれ!

 そしてそれを躊躇わずに食べるルードもルードだ!



「あ、本当だ。美味しいね」

「……ソウデスネ」



 にこにこ笑っているから、まぁいいか……。なにが良いのかはわからないけれど!

 食べ終わってカフェを出ると、今度はゲーセンに向かった。ルードは入ったことがないらしくて、物珍しそうにきょろきょろと周りを見渡していた。



「遊ぶなら両替しなきゃ」

「両替?」

「そ。小銭じゃないとさ」



 両替機に千円を入れようとすると、ルードが財布を取り出しておれの代わりに両替機に入れた。じゃらじゃらと出てくる百円玉を手に取って、定番であるUFOキャッチャーから遊んでみることにした。



「って言ってもおれ、あんまり取れたことないけどさ」



 眉を下げて肩をすくめて見せる。自分の財布から百円玉を取り出して、さっそく始めて見た。ルードに操作の仕方を教えてながらやったけど、やっぱりスカした。難しいよな、こういうのって。



「じゃあ私もやってみよう」



 そう言ってルードが百円玉を取り出して、真剣な表情で操作し始めた。その姿はいつも見ている大人っていう感じはなく、むしろ初めて遊ぶゲームに夢中になっているのはとても子どもっぽいとは思うんだけど――……その姿がなんだか可愛く見えるのはなぜなのか。



「……あ、ヒビキ、なんか取れたみたい」

「えっ、すご!」



 三回くらいでコツを掴んだのか、ルードは嬉々として取った物をおれに見せた。クマのぬいぐるみだ。それも結構大きいヤツ!



「わ、良く取れましたね!」

「ふふ、中々楽しかった。これはヒビキに」

「ありがとうございます……」



 はい、とクマのぬいぐるみを渡された。ルードの目の色を思わせる空色のぬいぐるみ。結構大きいけど、まぁこのまま持って帰るか……。

 それからもう一回やってルードは黒色のクマのぬいぐるみを取っていた。もう一度やって今度はピンクのぬいぐるみ。多分これは姉に渡すのだろう。……って言うかめっちゃうまいな!



「じゃあ帰ろうか」

「そうですね」



 ゲーセンから家に帰れば、姉が夕食を作り終えているくらいになるだろうし。ゆっくりと歩きながら家までルードと話しながら帰った。

 ちなみに、姉は三人でおそろいのクマのぬいぐるみにめっちゃ嬉しそうに微笑んだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

曇らせ系BL鬱ゲーに転生したけど、イチャらぶエッチしまくりたいのでモブくん達と付き合います!

雨宮くもり
BL
曇らせ系学園BLゲームの世界に転生した僕は、最悪の鬱展開を回避するために攻略対象・イベントを総スルー! 攻略対象とはまったく関係ないモブくんたちとイチャイチャらぶらぶえちえちのファンタジーキャンパスライフを送ります! ※連作短編風味です。 ※主人公の性質上ほぼエロシーンです (表紙イラスト→トワツギさん)

鳥籠の中の宝物

胡宵
BL
幼い頃に誘拐され10年間監禁されてきた陽向(ひなた)。そんなある日、部屋に入ってきたのは見たことのない男だった。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

【完結】海の家のリゾートバイトで口説かれレイプされる話

にのまえ
BL
※未成年飲酒、ビールを使ったプレイがあります 親友の紹介で海の家で短期アルバイトを始めたリョウ。 イケメン店長のもとで働き始めたものの、初日から常連客による異常なセクハラを受けた上、それを咎めるどころか店長にもドスケベな従業員教育を受け……。

イケメン後輩に性癖バレてノリで処女を捧げたら急に本気出されて困ってます

grotta
BL
アナニーにハマってしまったノンケ主人公が、たまたまイケメン後輩と飲んでる時性癖暴露してしまう。そして酔った勢いでイケメンが男の俺とセックスしてみたいと言うからノリで処女をあげた。そしたら急に本気出されて溺愛され過ぎて困る話。 おバカな2人のエロコメディです。 1〜3話完結するパッと読めるのを気が向いたら書いていきます。 頭空っぽにして読むやつ。♡喘ぎ注意。

傾国の伯爵子息に転生しました-嵌められた悪女♂は毎日が貞操の危機-

ハヤイもち
BL
”だからお前のことを手に入れることにする” 高校三年生卒業間際の誰もいない教室で親友に告白された主人公。 しかし、気づいたら悪役子息:シャルル伯爵子息に転生していた。 元の世界に戻るためにはシャルルを演じ切らないといけない。 しかし、その物語のシャルルは王子を陥れ、兄弟たちで殺し合わせた末に、 隣国の王子をたぶらかし亡命→その後気まぐれで自国に戻った際に 騎士団長に捕らわれて処刑されるというすさまじい悪役だった。 それでも元の世界に戻るために主人公は悪役を演じ切ると誓うが…。 ※主人公は関西弁で本心隠す系男子。 2chスレ描写あります。 親友→→主人公(ヤンデレ) 隣国王子→→主人公 など主人公愛され描写あり。

地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる

冷凍湖
BL
人生だめだめな陰キャくんがありがちな展開で異世界にトリップしてしまい、公爵サマに拾われてめちゃくちゃ甘やかされるウルトラハッピーエンド アルファポリスさんに登録させてもらって、異世界がめっちゃ流行ってることを知り、びっくりしつつも書きたくなったので、勢いのまま書いてみることにしました。 他の話と違って書き溜めてないので更新頻度が自分でも読めませんが、とにかくハッピーエンドになります。します! 6/3 ふわっふわな話の流れしか考えずに書き始めたので、サイレント修正する場合があります。 公爵サマ要素全然出てこなくて自分でも、んん?って感じです(笑)。でもちゃんと公爵ですので、公爵っぽさが出てくるまでは、「あー、公爵なんだなあー」と広い心で見ていただけると嬉しいです、すみません……!

処理中です...