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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!
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しおりを挟むその後、ルードが帰って来るまでに読書でもしようかなーと書庫に向かう。本を読んでいるとルードの鈴が鳴ったので、魔力を込めた。今日は街の見回りがあるみたいで、帰るのは朝方になるから先に休んでいてとのこと。そう言えば聖騎士団も見回りしているんだっけ。……あれ、おれが来てからルードの遠征以外でルードが夜に居ないことあったっけ……?
それとも、今日は誰か担当の人が具合が悪くて休んじゃったとか? 今日はあのベッドにひとりきりかぁ……。あのベッド広いから本当に寂しいんだけど……。かといってなにかと一緒というわけにもいかないし。
いやいや、朝方には帰って来るんだし、それまでの辛抱だ。……前の屋敷よりもベッド広いんだよ……。なんとなく広いベッドにひとりきりって慣れない……。
『……寂しい?』
「そりゃあもちろん、寂しいですよ」
『じゃあ、フェンリル貸してあげる』
「え?」
それじゃあ、明日ね。とルードが鈴の魔力を切ったのだろう、なにも聞こえなくなった。それと同時ににゅっとフェンリルが現れた。び、びっくりした……。フェンリルはふんふんと鼻を鳴らして近付いてきた。
「それはルードの魔力か?」
「あ、わかるんですね……」
「ルードもヒビキの魔力を纏っていた」
……纏えるほど魔力流したっけ……? と思ったけれど、フェンリルは指輪をじっと見てそれからおれを見た。どうしたんだろう?
「……以前のルードの魔力は、氷のように冷たいものだったが、今は大分温かくなった。そして、ヒビキの魔力はいつもぽかぽかと温かい」
大型犬くらいの大きさになって、フェンリルがすりっとおれの手の甲に頭を擦りつけた。おれはぽんぽんとフェンリルの頭を撫でた。フェンリルは気持ちよさそうに目を閉じる。そして、フェンリルはおれの手を離れるとおれの足元で丸くなった。どうやらここに居てくれるみたいだ。
その日はずっとフェンリルが傍に居てくれた。一緒にご飯を食べて、お風呂に入って……。ベッドまでは一緒じゃなかったけど……。広いベッドの中でひとりで眠る。今日は早く休もう。だって明日起きたら、ルードが居てくれるハズだ。目を閉じるとすぐに、睡魔が襲ってきた。
そっと、包み込むような優しい手の温度を感じた。そうっと目を開けると、ルードがおれの頬に触れていて、おれはふふ、と笑って「お帰りなさい」と口にした。ルードは「ただいま」と微笑み、額にキスを落とした。
「ヒビキはあったかいね」
「寝てたから……。今帰ったんですか?」
「少し前にね。今日は休みをもぎ取ってきたから、ヒビキとずっと一緒に居られるよ」
「……じゃあ、ルード。あとで行きたいところがあるんです……。でも、その前に、ちょっとは眠ろう?」
朝方まで働いていたのなら眠いはず。そう思ってルードをベッドの中へ招くと、ルードは「うん」とベッドの中に入って来た。そして、おれをぎゅっと抱きしめると、小さな声で「もうちょっとお休み」とおれの背中をぽんぽんとあやすように撫でる。そしてまた、おれは眠りに落ちて――……。
次に目が覚めた時は昼頃だった。ルードはすやすや眠っている。その姿を見ると、安心しているんだなぁと思ってちょっと、いやかなり嬉しい。ここがルードの安心できる場所ってことだもんな。そっと、そーっとルードの髪を撫でる。ルードがゆっくりと瞼を上げた。そして、ふわりと微笑む。
ルードがおれの手を取って、ぐいっと引っ張る。ぎゅうっと抱きしめられて、ちゅっ、ちゅっと至る所にキスを落とす。
「……昨日、フェンリルを貸してくれてありがとうございました」
「どういたしまして。……それで、行きたいところって?」
眠る寸前の会話を覚えていてくれたのか。おれは「家具屋に行きたくて」と答える。……だって、やっぱりルードの居ないベッドは広すぎるから。早急に自分の部屋を作りたい……!
「いいよ、一緒に行こう」
「ありがとうございます!」
ぱっと表情を明るくしてそう言うと、ルードがおれの髪をわしゃわしゃと撫でてそれからベッドから起き上がり、互いに身支度をして出掛けることに。その前に蔦に挨拶をして――あれ?
「……この蔦、成長していません……?」
「……ヒビキもそう思う?」
ルードがちょっと大きめのコップに移し替えたから……? ちゃぷちゃぷと楽しそうに泳いでいる蔦が「どしたのー?」とばかりに伸びて来た。そのうち屋敷に入れないほどデカくなったりしないよな……? もしかして、木になったり……は流石にないか。ないよな? でもこの蔦、魔物だし……。って言うか魔物って成長するの!?
「えっと、留守番お願いするね……」
蔦は伸びておれとルードの頬に葉を触れさせると、「いってらっしゃーい」とばかりに撫でてわさわさと葉を揺らせた。うーん、自分で動く植物ってやっぱり不思議な感じがするな……怖くはないんだけど……。
「それじゃあ、行こうか」
「はい。あ、その前に書庫に行って良いですか? この前どんな部屋にしたいのか考えたんです」
と言って、書庫に行って、この前考えをまとめた紙を持っていざ家具屋さんへ! 玄関まで向かっていると、じいやさんがバスケットを持って来てそれをルードに渡した。なんだろう? と思ったら、「昼食ですよ」と微笑んだ。そう言えばご飯食べてない……!
「家具屋の近くに公園もあるから、そこで食べようか」
「はい!」
「行ってらっしゃいませ」
そうして、おれとルードは家具屋に向かうことにした。その途中で公園に寄って、一緒にお昼ご飯を食べた。からあげと野菜たっぷりのサンドウィッチ。スープも! 美味しいなぁと言いながら食べ終え、家具屋へ。
今日こそ家具を買うぞー! と意気込んでお店へ!
「どういう風なのか見せてもらっても良い?」
「あ、はい。こんな感じにしたいです!」
店内に入り、ルードに理想の部屋を描いた紙を渡す。ルードはそれを見てから、「じゃあまずはベッドから探そうか」とおれの手を引いてベッドの売り場へ。色々な大きさのベッドを眺めて、おれが選んだのは一番シンプルなベッドだった。ちょっと硬めの。ふかふかのベッドも好きだけど、ひとりで眠るならこっちでも……。ルードが店員さんを呼んでこのベッドを買うことを伝える。それから、おれの描いた紙を見せて、色々案内してもらった。
その甲斐あってか、なんと全部揃えることが出来た! 店員さんのお勧めを聞いて、それを軸に色々と揃えて行った。使いやすさも重要だからね。
「配達をお願いしたい」
「もちろんでございます。いつに致しますか?」
「時間があるのなら、今日でも良いか?」
「少々お待ちください、確認いたします」
店員さんが頭を下げて、予定を確認しに行った。五分もしないうちに戻って来て、「すぐに伺えます!」と返事が来た。おれとルードは顔を見合わせて、それから「お願いします」と頭を下げる。
――選ぶのに時間を掛けすぎてもう夜だ。閉店時間ぎりぎりまで粘ってしまってすみません……。
空間収納のスキルを持っている人が一緒に屋敷に来て、使用人さんたちにも手伝ってもらって――おれの部屋が完成した!
……カーテンの色とか、ところどころ違うところもあるけれど……、日本のおれの部屋のようだ。……狭くて落ち着く。
「ご苦労さま」
ルードが配達員さんにそう言って、配達員さんは頭を下げて屋敷から出て行った。……ほぼルードの色で染まってしまった部屋を見渡して(なんせカーテンの色は藍色、ベッドのシーツなどは水色だ)、ルードは「本当にこれで良かったの?」と首を傾げる。
「だって、ルードの色に囲まれていると落ち着くので……」
新品のベッドに上がって体育座りをするように膝を抱えると、ルードは目元を細めておれを見て、それから「そう」と嬉しそうに声色を弾ませた。
「……夕食を食べようか」
「はい」
日本に居た頃は親の与えてくれた物だけだったけど――今回の部屋はおれがちゃんと選んだ物だ。自分でもびっくりするくらい、心惹かれる色がルードの色だった。藍色と水色。机と椅子はシンプルだけど機能性の高いもの。クローゼットは小さめ。棚も小さめ。なにをどうしようかワクワクが止まらない。
夕食を食べて、お風呂に入って、それから寝室のクローゼットに置いてある服を数着、おれの部屋のクローゼットに移した。刺繍糸はどうしようかなぁ……。後で考えよう。いっぱい考えて疲れたのか、あれだけ寝たと言うのに睡魔が襲ってきたので、ルードと一緒に寝室で寝ることにした。ぎゅっとルードに抱きしめられながら眠るのは好きだ。好きな人の体温を感じて眠れるのって、贅沢だなぁと思ってしまう。
ああ、でも……眠る前にこれだけは言わなきゃ。
「ルード……、いっぱい買ってくれてありがとうございました……」
「ううん、ヒビキが気に入ったのが見つかって良かった。さぁ、もうお休み」
「はい、おやすみなさい……」
瞼を閉じると、瞼の上からルードの唇が重なったのがわかった。おれはぎゅっとルードの服を掴んで――そのまま眠りに落ちた。
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