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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!
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しおりを挟む結局デートと言うか、ほぼ一日中えっちをしていたような……。と、翌朝起きてからそう思った。ルードは相変わらず置き手紙を残してくれていた。あ、この置き手紙をしまえる箱があれば欲しいかも。
インテリア関係の本って書庫にあるかなぁ……。探してみよう。ベッドから抜け出してクローゼットに向かおうとしたら蔦が伸びて来た。すりすりと葉っぱをおれの頬に触れさせる。
「おはよ」
嬉しそうにくねくね動く蔦に肩をすくめつつ、その葉っぱを撫でて朝の挨拶をすると、うなずくように縦に葉っぱが動いた。……植物は人の言葉がわかるというけど、この蔦もそうだったりするのかな。……いや、わかっていなかったらあんな風にルードの言うことを聞いたりしないか。
「んーっと……」
ちょっと腰がだるいけど、まぁ、あれだけやれば……。そんなことを考えて顔を赤らめつつ、おれは服を着替えて置き手紙をクローゼットの中にしまった。そして、ナイトテーブルに近付いて、蔦の水を取り替えて光合成出来るように移動させた。ぱちゃぱちゃ気持ちよさそうにコップの中を泳いでいる。もっと広いところに入れたらもっと泳ぐのかなぁ……。……いや、コップ一杯の水で良いってアデルが言っていたし、ちゃんと守っておこう。……それにしても気持ちよさそうに泳ぐよなぁ……。
あのお風呂場、泳いじゃダメかな……なんて考えつつ、久しぶりに泳ぎたくなってきた。泳げないわけじゃないし。でも、この世界ってそう言う場所あるのかな。みんなどこで泳いでるんだろ?
気になったら聞けばいいよね、と緑色の鈴を取り出してニコロに連絡を取る。ニコロはこっちの屋敷に居るみたいだ。
「おはようございます、ヒビキさま。なにを知りたいんですか?」
「おはよう、ニコロ。泳げるところ知らない?」
寝室で待っていて欲しいと言われ、待つこと数分。トントントンと扉をノックする音が聞こえて「はーい」と返事をすると、ニコロが立っていた。ニコロを寝室に入れて、彼はぱたんと扉を閉じ、改めておれを見ると朝の挨拶をしてくれた。ので、おれも挨拶をしてから聞いてみる。ニコロは目をぱちくりと瞬かせてから、「泳げるところ?」と首を傾げる。
「なんでまた……?」
「なんか久しぶりに泳ぎたいなぁと思って。いくら広いとは言えお風呂場を泳ぐのもなんだし……」
「ヒビキさま、泳げたんですね」
感心したように言われた。そりゃあ水泳の授業は一通り受けたからね。泳ぐスピードは遅いけどそれなりに泳げるつもり。クロールも背泳ぎも平泳ぎもそれなりに。この世界にそう言う概念があるかどうかはわからないけどさ。
「意外?」
「ええ、まぁ……。泳げる場所、一応知っては居るんですけれども……人が多いのでやめておいたほうが無難かと」
「え、なんで?」
トントン、とニコロが自分の首筋を人差し指で当てる。おれは首を傾げながらも姿見に近付いて「!」と肩を跳ねさせた。そこにはしっかりとしたキスマークがつけられていて、いつの間に……と昨日の行為を思い出して顔を赤らめた。
「あと、その……隊長と『そういうこと』している時、乳首弄られてますよね……?」
「なんで知ってるの!?」
「……気付いてませんでした? 乳首、服に擦られて勃ってる時ありましたよ」
「……おおう……」
じっと姿見の胸元を見ると、確かに、なんか……主張して……いる……。全然気付いていなかった。
「……もしかして、ニコロも……?」
おれがニコロに顔を向けると、彼は曖昧な表情を浮かべて顔を逸らした。どうやらおれと同じ状態のようだ。
「……ある意味、これも独占欲の現れなのかなぁ……?」
「独占欲の現れ?」
「人前で肌を晒さないで欲しいってことじゃない?」
自分で言っといてアレなんだけど、どちらかというとルードの場合、乳首で感じるおれを見るのが好きで、執拗に弄っているだけという可能性のほうが高いような。サディアスさんはどうかな。ニコロは「なるほど……」と納得してしまったけど。
「……サディアスさんとしてる……?」
「いえ、あまり。サディアスは仕事詰め込んでいるみたいだから、お茶淹れて労わるくらいです」
ぽつりと「先日散々したし」と言った。というか、ニコロがサディアスさんを労わっているのがなんか嬉しい。いや、元々ニコロはサディアスさんのことを突き放せなくて世話を焼いていた時もあったような。面倒見がいいんだよなぁ。
「おれにもお茶を淹れてくれる?」
「もちろんですよ。どこで飲みますか?」
「書庫!」
「かしこまりました、準備をするので、先に書庫に向かっていてください」
おれは大きくうなずいてから書庫へと向かう。書庫の場所はもう覚えた! おれにしてはとても早く覚えられた。日本に居た頃は迷子になるのが日常的だったからなぁ……。今にして思えば、迷子になっても家族が迎えに来てくれると思っていたから、安心して……って言うのも変だけど、迷子になれたんだろう。
そしてきっと、この世界で迷子になったらルードたちが探し出してくれるだろうって思うし。迷子になっても安全。……いや、迷わないのが一番良いことなんだけど……。ひとりで王都に遊びに行ったことないから、なんとも言えない。
……でもやっぱり、王都の中心に行くなら誰かと一緒のほうが安心できるなぁ……。
書庫について中へ入る。本棚の案内を頼りにインテリア関係の雑誌を数冊持って読むスペースへ。雑誌を机に置いて、椅子へ座ろうとしたらニコロが入って来た。
手慣れた手つきでお茶を淹れるニコロ。そのお茶を受け取って、ふぅふぅと息を吹きかけて冷ましてからこくりと飲み込む。うん、美味しい。まったりとお茶を楽しんでいると、本来の目的を忘れるところだった。
ぱらぱらと雑誌をめくる。こういう雑誌も置いてあるって、すごいなぁ。じいやさんもこういうの読むのかな。……読むから置いているのか。
「そう言えば昨日はなにも買わなかったんですか?」
「あ、うん。思ったよりすぐに帰ってきちゃったし……。ちゃんとしたインテリア案も出してなかったし……。今度はちゃんと決めてからにしようかなって」
「そうだったんですね」
――そう言うことにしておこうかな!
実際はルードが欲情して、おれも我慢できなくなって帰って来たんだけど。昨日のやり取りを思い出して、どこでルードの欲情スイッチが入ったのかがわからなかった。どこだったんだろう……。
「一回どんな部屋にしたいのか、描いてみます?」
「あ、それ良いかもっ」
ニコロが紙とペンを用意してくれた。おれはそれを受け取ってどんな部屋にしようかなぁってワクワクしながら絵を描いた。とはいえ、おれ絵心なんてないから下手なんだけど。とりあえず。描いた絵にベッド、机、椅子、クローゼット、カーテン、小物入れと書き込んでいく。絵だけでは首を傾げるかもしれないけど、これならわかるだろ、多分。
ついでに欲しいものを書いていく。まずは下着。下着が欲しい。じっとニコロの胸元を見る。彼の乳首は主張していない……。
「……タンクトップとか、着てる?」
おれの質問の意図が読めたのか、こくりとうなずくニコロ。裸になることはないから、どんな服を着ているのかさっぱりだし。というか、ニコロの服装……前は執事服だったり庭を弄るために汚れても良い格好だったり、護衛になった今ではちょっと騎士っぽい服装になっている。一体どこで手に入れてたんだろう。
「おれも欲しい……」
「隊長におねだりしてください」
――そう言うと思った。乳首を隠せるものと、普通のパンツ……。おれが欲しいのはこれだなぁ。絆創膏はこの世界になさそうだし、かといってガーゼは違う気がするし……。難しいなぁ。
それと……一番気になるのは、ルードが作ってくれたこの服、着られなくなるんじゃないかってことだ。この服にされている刺繍はどうしてもメルクーシンのものだから……。そう言えば出掛ける時に袖を捲ってリボンで結ぶこともしなくなった。なんでなんだろ。ルードに聞きたいような、聞いてはいけないような……。
「……それにしても、ヒビキさま苗字を持っていたんですね。今更ですけど」
「え? あ、うん。まぁね」
「ホシナでしたっけ。なんだか不思議な感じですね」
この世界では、多分おれひとりしかいないと思うよ……。
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