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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!

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 おれは思わず目の前の屋敷を見上げる。魔石で出来た屋敷? え、どういうこと? と頭の中が混乱してルードを見る。すると、ルードはぽんぽんとおれの背中を叩いて「こっちへおいで」と手を繋いで玄関から少し離れ横に移動する。



「昨日サディアスに聞いたんだ。どうしてあの屋敷を買ったのかって。理由がこれ」



 そっと壁に触れさせるルード。ぱぁぁあっと光が集まった。おれに力を貸してくれている、精霊さんたちの光だ。



「引っ越しが完了したら精霊にお願いしてごらん。きっと綺麗なものが見られるよ」

「それは楽しみ……でもあるのですが、魔石で出来た屋敷ってすっごく高そうですね……?」

「ああ、お金については気にしなくて良いよ。それより、中へ入ろう。今日からここが我が家だよ」



 壁に触れさせた手を取って、玄関の扉をくぐり室内へ。……やっぱりあっちの屋敷より広いように見えるなぁ……。



「ヒビキの部屋にはなにを置く?」

「あ、使って良いんですね……。ベッドも置いて良いですか……?」



 だからそうショックを受けたような顔をしないで欲しい。ニコロもちょっと呆れたようにルードを見ていた。



「だって、ルードが居ないとあの寝室にいるの結構寂しいんですよ、広くて」



 今度はぎゅうっと抱きしめられた。ニコロは乾いた笑みを浮かべている。ルードがおれの背後にぴったりとくっついて屋敷の中を歩く。ルードが遠征に行っている時、あの寝室おれだけしか居ないからすっごく静かで物悲しくなるんだよなぁ……。今まで言ったことはないけれど、これくらいのワガママは許されるかな? と思って言ってみた。



「遠征の時にヒビキを連れて行くのは……。あまり、危険にさらしたくないし……」

「この前の遠征で初めて連れて行ってくれましたよね」



 多分、サディアスさんが気を利かせたのだとは思うのだけど。場所が場所だったし。メルクーシン家だったもんね、遠征場所。おれが絶対にルードの味方だと思ってくれているんだろうなぁ。ちょっと緊張していたようなルードを思い出して、ぎゅっと彼の腕を掴んだ。

 ――サディアスさん、本当にありがとうございました。あんな場所にルードを渡すもんか。おれがずっと――いや、おれらがずっと、ルードの傍に居るんだから。



「それにしても、本当新築みたいだけど、サディアスここ手放して良いって言ってたんですか?」

「ああ。あれ、ニコロにはサディアス言っていなかった? ニコロの好みも反映された屋敷に住みたい的なこと」

「一緒に住むこと確定されてませんか、それ……」

「住まないの?」

「どうしましょうね。急展開すぎて頭がついていきません」



 って言いながらも、迷いのない目をしていたからこれはきっと自分の中で答えが出ているな。ちゃり、とブレスレットに触れて、ゆっくりと息を吐くニコロを見てしみじみと色々あったなぁとニコロとサディアスさんのアレコレを思い出した。

 ニコロとは鈴で連絡が取りあえるし……ところでなんで鈴なんだろう……。鳴るから? イヤそんなことを言ったら楽器全般大丈夫じゃないか……。まぁ、鈴は持ちやすいけど。どういう仕組みなのか鳴らそうとしなければ鳴らないし。



「それで、ベッドの他に必要なのはある?」

「え? ええと、そうですね……机と椅子と……、あと小さくて良いのでクローゼットが欲しいです」



 おれの部屋にあった物を思い出して数えるように指を折る。あとなにがあったっけ。……おれの部屋、今どうなっているんだろう。日本の家族の顔を思い出してほんの少しセンチメンタルになりつつ、それを誤魔化すように「棚もあれば嬉しいな!」と弾んだ声を出す。



「ヒビキ……」



 ルードはなにかを感じ取ったのか、そっとおれを抱きしめる腕に力を入れた。……ルードって結構人の感情を読み取ってくれるような気がする。あ、もしかして読み取り過ぎちゃうから人に興味がないように振舞っていた? ……もしくは、相手がおれだから、気にしてくれている? 後者はちょっとあれかな、自惚れかな。

 そんなおれらを見てニコロが小さく肩をすくめているのが見えた。



「でも、そんなに置いたらもっと狭くなってしまうのでは?」

「隊長、言っておきますけど平民はそんなに広い部屋に慣れていないんですよ」



 それもっと早く言って欲しかったよ、ニコロ。あの寝室ほんっとーに広かったからなぁ……。書庫に籠っていたのはあっちのほうが狭くて安心出来たからでもある。ルードと一緒ならあの広い寝室とベッドでも良いんだけどさ。一緒じゃないと広すぎる……いや、あのベッドふたりで寝てもまだまだ余裕あったけど……。



「ヒビキは貴族になるのだから、広い部屋でも……」

「隊長が遠征の時だけ使うつもりなんでしょう?」

「そのつもり。本読んだり、ミサンガ作ったり、刺繍したりするかもしれないけど」



 ……あ。そう言えばあのクローゼットの中には最初に作った結構ボロボロなミサンガたちが……! ルードにバレないように回収しておかなくちゃ。バレたら欲しがりそうだし……。あんなに不格好なものをルードに渡すわけにはいかない……!

 おれがそんな使命感に燃えていると、リーンリーンとなにかが鳴った。



「……思っていた以上に早かったな。さすが空間収納のスキル持ちたちは違う」

「空間収納?」

「ああ、バビントン引っ越し業者は全員空間収納のスキルを持つ。なので、引っ越しがサクサクと出来ると巷で有名なんだ」



 なるほど、それは確かに引っ越しに有利だ。重い物でも簡単に運んでもらえる。そっか、スキルで将来の職業を決めるってこう言うことか~……。続々と屋敷の使用人さんたちも来て、アレコレと指示を出している。先陣を切っているのはやっぱりじいやさんだ。メイド長のクレアさんも女性陣を纏めている。

 なんだかこんな風にわいわいしているのって楽しいな~。なんて思いつつ、みんなの様子を見ていた。

 ここの屋敷には既に家具が取り揃えられていて、本当に中身だけ引っ越しするような形みたい。おれが欲しい部屋はなんのために狭く作られたのかわからないけれど、空っぽだったからルードが後で揃えてくれるつもりみたい。

 そこから約四時間後――引っ越しは、無事に完了した。

 マルセルさんが新しいキッチンで料理をして、引っ越し業者さんたちも一緒にご飯を食べた。ルードが小切手を渡して、みんなそれぞれ新しい屋敷の中を探検をしたりしていた。

 ちなみに一番大変だったのは書庫の中身を移動するときだったらしい。「なんでこんなに本があるの!? 図書館!?」と引っ越し業者さんが叫んだらしい。



「じいや、今日、行う」

「かしこまりました、馬車の手配を致します」



 ルードがじいやさんにそう言った。……行う? と首を傾げると、ルードはただ、静かに微笑んだ。そして、おれの頭をぽんぽんと撫でてゆっくりと息を吐いた。



「屋敷を取り壊してくる」

「――あ……。……あの、その取り壊し、おれも連れて行ってください」

「壊すだけだよ?」

「……ルードの傍に居たいんです。ダメですか?」



 ルードを見上げて、彼の服をきゅっと掴んで尋ねる。ルードはちょっと考えるように目を伏せたけれど、じいやさんに「宜しいのではありませんか?」と言われてこくんと首を縦に動かした。じいやさんはそっとおれの肩に手を置いて、「ルード坊ちゃんをよろしくお願いいたします」と囁いた。

 おれはじいやさんに向かって、任せてとばかりに胸元を拳で叩く。じいやさんは安堵したように目元を細めて微笑み、馬車を手配しに行った。

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