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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!

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「あのー……、そんなに触っていて飽きませんか……?」

「全然飽きない」



 ベッドに横になりながらぴったりと躰を密着させておれの臀部を撫でまわす手。今日どれくらい触られただろうか。こんなにたくさん触られるのはなんだか恥ずかしい。だって普段、撫でまわしていてもすぐに違うところにも触れるから。



「ヒビキのお尻は気持ち良いから」



 自分じゃわからない。撫でようと思ったこともないし。ただ、ルードとお風呂に入っている時、躰を洗い合うけどその時にもお尻を撫でまわされていたような。手で洗ってもらっていたから、そんなもんかなって思っていたんだけど……。……いや、うん、ルードって本当、おれのお尻好きだね……?



「一日中揉んでいたい」

「それは流石におれが恥ずかしいです」

「そうか」



 残念そうに言われたけど、ところかまわず揉まれたら恥ずかしいのは本当だし。でもちょっと嬉しいと思ったのは内緒だ。

 何度抱かれたのか覚えていないくらい、今日のルードはすごかった。最終的にもう出ない! ってくらい出したし、たくさんナカに出された。行為が終わったあとの疲労感は確かにだるかったけれど、それよりも幸福度が高くて幸せだなぁって思えた。くたりと動けなくなったおれの蕾に指を挿れてナカに出されたルードの白濁の液体を掻き出されまたナカでイってしまったりもしたけれど……。ルードに抱かれるたびに、この躰は快感を敏感に受け取っていくようになったような……。この世界に来てからずっと敏感になったな、とは思うんだけどね。触れられるだけで感じてしまう。

 ……それがイヤとは思えないくらい、彼の愛撫に溺れてしまうのは……仕方ないことだと思う。



「私は仕事をするけれど、隣の部屋に居るから安心して眠っていて。帰りに屋敷の下見をしよう?」

「はい、じゃあその時まで……ちょっと、休んでいますね……」



 たくさんルードを求めたから体力が限界だった。ベッドの上で目を閉じると、ルードが優しくおれの頭を撫でてから毛布を掛けてくれた。名残惜しそうにちゅっと頬にキスをしてから、ルードが休憩室から出て行く。……おれが覚えているのは、そこまでだった。幸福な気怠さを感じつつ、微睡の中にとぷんと落ちていく感覚がした。









 目が覚めると既に夕方のようで、どれだけの時間眠っていたんだろうとまず驚いた。寝ていたから大分体力も回復した……したと思ったんだけど、普段とは違う体位でしたからか、もしくはたくさんしたからか、躰が言うことを聞いてくれない。



「ヒビキ、起きた?」

「起きたには、起きたんですけど……」



 おれが困ったように声を弱らせると、ルードが察してくれたようで休憩室に入り脱いだ服を掴んで持って来て、着せてくれた。小さい子どもになった気分。じっとこっちを見るルードに、首を傾げる。彼はただ、幸せに笑った。ルードの目は雄弁だ。おれのことを愛おしいと思っているような、そんな眼差し。きっと気のせいではない。



「ルード、仕事は良いんですか?」

「終わった。さっきまで団長としていたよ」

「……ニコロは一緒じゃないんですか?」

「ニコロは一足先に屋敷の下見に行っているハズだよ。というか……ほら、一緒に行っただろう?」



 ルードの言葉から、ああ、そう言うことかと勝手に納得した。サディアスさん午後からって言っていたもんね。で、サディアスさんの屋敷とは徒歩五分。……だからなんでそんな近くに屋敷を買ったんだサディアスさん。

 どんな屋敷なのかちょっと楽しみだ。おれがベッドから降りようとすると、ルードが膝を床につけておれの手を取った。そのままぐいーっと自分の首元におれの腕を回そうとする。おれが素直にルードの首元にぎゅっと抱き着くと、ルードはひょいとおれを抱えた。

 すりすりと猫のように頬ずりされて、ちょっとくすぐったい。



「ヒビキの頬もお尻も同じくらいの柔らかさだ」

「……」



 幸せそうに言うルードに、おれはなんて返答すれば良いのかわからなかった。ムニっと自分の頬を摘んでみたけど、よくわからなかった。って言うか、やたらおれの頬でムニムニと遊んでいたのはそういう理由だったのか!?

 聖騎士団の塔を降りると、団員さんたちが物珍しそうにおれらに――いや、ルードに注目している。「あの隊長が……」や、「恋人欲しい……」の声が聞こえる。でも、そのどれも声が優しくて……恐れられてはいたんだろうけど、ルードって色んな人に愛されているんだなぁと思うと嬉しくなった。



「サディアスさんの屋敷ってここから近いんですか?」

「目と鼻の先」

「え」



 スタスタと歩いて、十分以内に大きな屋敷についた。……城が近くなるって言っていたけど、なんでこんなに近い場所にこんな大きな屋敷があるんだ!? ってびっくりしたけど、ルードが教えてくれた。



「聖騎士団長と王立騎士団長の屋敷は城の近くって決まりがあるんだ。そのほうが陛下をお守りするのが楽だからって理由で。サディアスが屋敷を買ったのは、多分聖騎士団長辞めたらすぐにでも引っ越せるように、だと思う」

「え、その屋敷をおれらが使って良いんでしょうか」

「将来的にニコロと住みたいみたいだから、ニコロの意見も聞きたいんだって」



 ……なんだかちょっと嬉しいな。サディアスさんとニコロが一緒に居られるのが、自然に思えるから。ニコロはずっと我慢をしてきたと思うから、たくさんたくさんサディアスさんに甘やかしてもらえば良い。そしてサディアスさんもニコロに甘えれば良いんだ。

 ……リーフェが前に言っていたのがわかる。ニコロの表情をよく見ていればって前に聞いたから。やっぱりおれは、自分の好きな人たちには幸せになって欲しいなぁと、心から思うし……。



「で、サディアスの言っていた屋敷がここ。近いだろう?」

「……ルードの屋敷よりなんか、しっかりしてる感……」

「はは、そりゃそうだよ。……あの屋敷はね、ひっそりと修繕して見た目だけ良くしているような屋敷だから。本物と比べるとやっぱり違うさ」

「そうだったんですか!?」

「あの屋敷を手放せば、維持費も必要なくなるからそれを慈善活動に回せば……」

「……おれが働けば、その分のお金も回せます?」



 おれがそう聞くと、ルードが「え?」って顔をした。そんなにおれが働こうとするのが意外なんだろうか。



「え、やだ」



 子どものように言うルードにこっちがびっくりした。ぎゅっと腕に力が入ったのがわかる。



「ヒビキには屋敷に居てもらいたい。ヒビキが『おかえりなさい』って言ってくれるの聞けなくなるのはイヤだ」



 おれが働くようになればそういうすれ違いも起こるのかもしれない……。そっか、となんだか腑に落ちた。高校生になって両親が海外に行っちゃって、姉も大学生になったから家に帰る時『ただいま』って言っても『おかえり』って言ってくれる人がいなかった。そりゃたまに姉のほうが早い時もあったけれど、高校生のおれのほうが家に帰る時間は早かったし。



「じゃあ、せめて屋敷で出来ること……。そうだ、ミサンガを作って売るのはどうでしょう? お守りみたいに!」

「ヒビキのを売るの?」

「おれが魔力込めたら、売れると思いませんか?」

「……それ、私が全部買うから、私のために作って」



 ……売りたくないらしい。ちょっと拗ねたように見えるルードの表情。思わず胸がときめいてしまう。って言うか、売れるとは思っているんだな。



「……あの、すごく声掛けづらい雰囲気作るのやめてください……、ここ外です……」



 そう声を掛けられて、おれとルードは視線を動かす。呆れた表情を浮かべたニコロがこっちを見ていた。そして、あ、と思った。見たことのないブレスレットをニコロがしていたから。



「それサディアスさんにもらったの?」

「へ? あ、ああ……、そうです」



 ふわりと微笑むニコロに、おれとルードは顔を見合わせてそれから声を揃えてこういった。



「似合ってる」



 ――と。

 ニコロは目をぱちりと瞬かせて、それから幸せそうに頬を掻いた。心なしか顔が赤いのは、夕日のせいじゃないだろう。



「鍵は預かっているんで、すぐに屋敷内も……」

「ニコロが預かったんだ?」

「渡されたんで。ここの屋敷の鍵だって言ってましたし。下見に来るだろうからってことで待ってたんですよ。まさかあんなに堂々とイチャイチャするとは思ってませんでしたから、声を掛けるタイミングを失っていました」



 ……そんなにいちゃついてたかなぁ? と首を傾げると、ニコロは「え、無自覚……?」と驚いたように目を丸くしていた。
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