【本編完結】十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、攻略キャラのひとりに溺愛されました! ~連載版!~

海里

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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!

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 部屋に入るとルードが場所を指定しているみたいだった。三人でワープポイントを通って、食堂についた。早朝だから静かにね、とルードが人差し指を口元で立てる。……こういう姿も絵になるイケメン……。

 おれがこくりと首を縦に振ると、そろりそろりと忍び足で玄関まで向かう。そう言えばこんな早朝に鍵開いているのかな? と考えていると、玄関の前にはソニアさんが立っていた。



「おはようございます、みなさん」

「おはようございます、ソニアさん。待っていて下さったんですか?」

「ええ。事前にルード坊ちゃんから聞いていましたから。気を付けて行ってきてね」



 そう言って扉の鍵を開けると、軽く手を振って見送ってくれた。北門までは歩いていくみたい。その時間を考慮して早めの時間に屋敷を出たのだろう。広場のベンチでお弁当を食べてから北門に向かう。

 広場から北門は歩いて三十分くらいらしい。ルードたちの歩幅で、だからおれが歩くともう少しかかるかな。彼らはおれの歩幅で歩いてくれるから、ちょっと申し訳ないような……。おれのペースで歩いてくれるからとても歩きやすい。ふたりともこういうところ紳士だよね……。ちなみにお弁当はすごく美味しかった。

 門まで行くのって実は初めてなんじゃ……。北門までつくと、既に聖騎士団の人たちが待機していて、おれらに気付くとばっと頭を下げた。いや、正確にはルードに頭を下げたのだろう。



「おはようございます、隊長! ヒビキさま」



 みんなで一斉に挨拶をしてくれた。おれにまで……。って言うか、聖騎士団の方々にも『さま』って呼ばれるのか……。……あれ、ところでなんでおれの名前知っているんだ? 名乗った覚えはないけれど……?

 はて? と首を傾げていると、ヘクターさんが近付いてきた。



「おはようございます、メルクーシン隊長、ヒビキさま」

「おはようございます、ヘクターさん」

「おはよう」

「お久しぶりです、バビントン副隊長」



 ヘクターさんはおれらに挨拶をすると、ニコロに気付いて彼の肩をぽんぽんと叩く。そう言えばニコロも第一部隊にいたんだっけ。他の人たちもニコロに気付くと「久しぶりー」って声を掛けに来ていた。みんなに囲まれて懐かしそうに目元を細めるニコロ。

 楽しそうに会話を弾ませているのを見ると、ニコロと聖騎士団の人たちは仲が良かったんだなぁ。



「団長は?」

「もう来ていますよ」



 ってことはやっぱりおれらが最後か。待たせてしまって申し訳なく思っていると、ヘクターさんが気にするなとばかりに手を振った。サディアスさんがおれらに近付くと、聖騎士団の人たちがばっと姿勢を正した。



「おはよう、ルード、ヒビキさん、ニコロ」

「おはようございます、サディアスさん。えっと、待たせていたみたいで……」

「ああ、まだ集合時間には早いから大丈夫だよ」



 柔らかく微笑むサディアスさんに、聖騎士団の人たちはなぜか少し震えている。サディアスさんは恐怖の対象なんだろうか。おれがみんなを見渡すと、ルードは呆れたように肩をすくめた。



「団長、そろそろ出発しましょう。ヒビキは私と一緒で良いかい?」

「あ、はい。フェンリルですか?」

「ああ。ニコロ、悪いが団長と馬車に乗ってくれ」

「え」



 目を丸くするニコロ。サディアスさんはにこっと微笑むとニコロの手を取って馬車へと向かう。それを見ていた聖騎士団の人たちは「……三年経っても相変わらずか~」と呟く声が聞こえた。



「フェンリル」



 ルードがフェンリルを呼ぶと、フェンリルが召喚された。もふもふ……。じゃなくて、他の人たちも馬に乗り始める。馬はフェンリルに慣れているのか、怯える様子もない。ルードがフェンリルの毛並みを梳くように撫でると、フェンリルは心地よさそうにすりすりとルードに頬ずりした。……見ているとなんか……和む……。



「ヒビキ、おいで」

「はい!」



 ルードに声を掛けられてフェンリルに近付く。フェンリルはおれに気付くと乗れとばかりに座った。ルードがおれをひょいと抱き上げてフェンリルに乗せた。おれの後ろにルードが乗ると、ゆっくりフェンリルが立ち上がる。最初に会った時のような大きな姿のフェンリルだから、見晴らしがすごく良い!



「わぁ……!」

「乗り心地はどうかな?」

「とっても良いです! ふわふわですし、もこもこですし!」

「…………ふわふわもこもこ?」



 フェンリルが解せんとばかりに口にしたけれど、まぁいいが、と言って歩き出した。うわぁ、進んだ! ドキドキしていると後ろからぎゅっと抱きしめられた。



「怖い?」



 おれはルードのほうに顔を向けてふるふると首を横に振った。後ろにルードが居るのに、怖く感じることなんてない。おれがそう伝えれば、フェンリルがくつくつと喉を鳴らして笑った。首を傾げると、ルードがおれの躰を支えるようにお腹に腕を回して、片手でぽん、とフェンリルの背中を叩く。



「随分と信頼を得ているではないか。その調子で契約者を頼む」

「……?」



 歩きながらそんなことを言うフェンリルに首を傾げる。ルードは「気にしなくて良い」と言ったので、とりあえず今は気にしないでおこう。……って言うか、おれがルードを信頼しているのは当たり前なんじゃ……?

 この世界に来て、拾われて、色々あったけどルードはおれが嫌がることをしないし、面倒を見てくれた。そんな人を信頼しないわけないのに。



「……フェンリル、いつもより抑えめで走ってくれ」

「ああ」



 おれのことを気遣ってか、ルードはフェンリルにそう言うとフェンリルは軽快に走り出した。おれらを乗せているのなんて思わせないくらい軽快な走りだ。そして驚いたことに全然揺れない! そりゃあいくらか風は感じるけど――……。



「驚いた、精霊たちが風圧を抑えてくれている」

「え。いつもは違うんですか?」

「ああ。ふふ、本当にヒビキは精霊に好かれているね」



 ぽんぽんとおれの頭を撫でるルードに、精霊さんありがとう、と心の中で呟いた。それに応えるように風が頬を撫でた。

 フェンリルはそんなおれらの会話を聞いているのかいないのか、ただ走ってくれていた。初めて見る王都の外。いつの間にかフェンリルが先頭になっていて、後ろから聖騎士の人たちが続いている。



「ここから結界の外だよ」



 王都から五分くらい離れた場所でルードが教えてくれた。結界の外に出るのはこれで二回目だ。



「八年前の魔物行進から結界の範囲が少し広がったんだ」

「そうだったんですね……」



 結界があるのに魔物が王都に近付いていたのはなんでなんだろう? 力技で入るつもりだったんだろうか。そういう知識って魔物にあるのかな……。そしてもしも中に入ったら王都は大変なことになっていただろうなぁ……。想像でしかないんだけど、さ。



「さて、第一弾のお出ましだ。各員戦闘準備!」



 前を見据えていたルードがなにかをみつけたようで、視線が鋭くなる。大き目な鈴を取り出すと口元に近付けてそう叫んだ。え? え? と辺りを見渡すと、ルードがスキルを使う。数えきれないほどの氷の剣がフェンリルの前に出て、フェンリルが吠えると同時にルードが攻撃を仕掛けた。それに続くように聖騎士団の人たちが馬に乗って武器を構えたままザシュッと音を立てながら魔物を蹴散らしていく。後方に居た人たちが魔物を浄化していき、気が付いた時にはルードを取り囲むように聖騎士団の人たちが陣形を組んでいた。

 戦闘準備って叫んだだけでこんなこと出来るの? とぽかんとしてしまった。それと同時に、湧き上がるのは格好いい! ってこと。

 絵画の中で見た聖騎士団の戦い方はバラバラだったのに、今の戦い方は連携が取れていた。すごい。こんな風に戦っているんだ!



「気を抜くな、すぐに第二弾が来るぞ!」



 ルードの声が響く。それに応えるように、空から魔物が襲い掛かって来た。



「フェンリル、跳べ!」

「了解」

「え? うわぁっ!」



 フェンリルが高く飛ぶ。空を飛んでいる魔物たちが驚いたようにビクッとしたが、すぐに向かってきた。ルードはもう一度氷の剣を作ると魔物たちに向かって飛ばす。それを援護するように風が吹く。下を見るとニコロとサディアスさんが馬車を降りていた。ニコロの突風か!

 サディアスさんはなにをしているのかわからなかったけど――……彼が剣を手にしたと思ったら、一瞬で彼らの元に向かっていた魔物が薙ぎ払われた……ように見えた。

 ルードとフェンリルが上空の魔物を下に落として、聖騎士団の誰かが武器で切りつけ、別の団員に浄化されている。役割分担されているのかなってくらい、見事な連携だった。
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