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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!

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 その日から、午前中に文字の練習とナイフの使い方を習い、午後は刺繍をしたりミサンガをこっそり作ったりとしていた。三日くらいかけてなんとか出来上がったミサンガはやっぱりボロボロで、そうっとクローゼットの中にしまい込んだ。練習しているうちにきっとうまくなるはず……。

 ルードには内緒にしたいから、ルードが帰ってくる前にミサンガ用の刺繍糸はクローゼットにしまう。コツを掴んできたのか、二日後には納得のいくミサンガが出来上がった。……おれがやっても効果があるかわからないけれど……。出来上がったミサンガに魔力を込める。ルードを助けてくれますようにって願いながら。精霊さん、お願いします……。

 そろそろメルクーシン領に向かうからか、ルードがなんとも言えない表情を浮かべることが多くなった。憂いている表情も格好いいけれど、やっぱり笑っていて欲しいもんな。



「ヒビキさま、いらっしゃいますか?」

「いるよ!」



 ノックの音の後にリアの声がした。リアが扉を開いて、お茶とお菓子を用意してくれた。もうそんな時間なのかと思っていたら、リアの視線がミサンガへと注がれた。



「ヒビキさま、それは……?」

「あ、これはミサンガって言うんだ。手首に巻いたり足首に巻いたりして、切れたら願いが叶うってもの」

「ヒビキさまの故郷のものですか?」

「え? うん、まぁね!」



 発祥の地がどこかは知らないけど、地球産であることは変わらないからそう言った。リアは「素敵ですね」と柔らかい口調で言うとお茶を淹れ、その間もじぃっとミサンガを見ていたので……思わず、「作ってみる?」と聞いてしまった。

 するとリアはぱっと表情を明るくして「よろしいのですか?」と聞いてきたのでうなずく。そして、お茶菓子目当てで来たニコロも巻き込み、リアの刺繍糸コレクションから好きな糸を三本ほど選んでもらい、おれが編んだやり方を教えた。

 いつもリアには教わってばかりだから、こうやって教えるのってなんか新鮮。



「わぁ、流石器用だね、ふたりとも」



 リアもニコロも器用だから、あっさりとミサンガを編んでしまった。リアに関しては途中でミサンガの作り方を聞くよりも編み出してしまうし。ハート形の作り方なんて教えてないのに、器用だなぁ……。

 ニコロもニコロで「なんで俺まで?」と首を傾げつつ付き合ってくれるのだから……。本当、人が好い。お茶菓子の半分はニコロの腹に収まったような気がする。結構な本数編んでいるのはなぜなんだ……。



「切れると願いが叶う、なんて、なんだかロマンチックですね」

「実際は糸が痛んで切れるんでしょうけど……」

「はは……」



 うっとりとリアが出来上がった三本のミサンガを見つめながら頬に手を当てそう呟くと、ぼそりと小声でニコロが続く。実際どうなんだろう。姉がつけていた時どうだっけ? そこまでは覚えていないや。いつの間にかつけなくなったな、くらいの記憶しかない。おれ自身はミサンガ身につけてなかったし。



「ところでニコロ、そんなに作ってどうするの?」

「あー、なんかつい作っちゃったんですけど、どうしましょう。欲しい人にあげる?」

「サディアスさんに渡せば良いんじゃない?」



 それだけあるなら一本くらい……。と思ったけど、ニコロは嫌そうに首を横に振る。



「きれいに出来たのはかあさんに渡そうかな」



 と、一番きれいに編めたものを手にすると肩をすくめながらそう言った。



「ニコロ、持っていくなら全て持っていって。この屋敷に置いておいたらアシュリーさまに気付かれるわよ?」

「……了解。あ、刺繍糸数本貰っても良いですか? 子どもたちにも教えたいので」

「ええ、どうぞ」



 そう言ってニコロは自分が作ったミサンガを持ち、リアからもらった刺繍糸を持ち、「ちょっと出掛けてきます」と部屋から出て行った。……孤児院に持っていったところでサディアスさんに気付かれる気がするのはなぜだろう。

 ちらりとリアを見ると、リアはおれの視線に気付いて微笑んだ。多分、どちらにせよサディアスさんに気付かれるとリアも思っている……ような気がする。



「素敵なものを教えてくださってありがとうございます、ヒビキさま」

「えっと、どういたしまして?」

「ふふ」



 お茶の時間にこうやって過ごすのも良いなぁと思いながら、すっかり冷めてしまったお茶を飲む。冷めても美味しいのがここのお茶。三本で編むミサンガだから、太めの刺繍糸を選んでもらった。それでもやっぱり結構細くなるよね。男性の手首や足首に巻くならこのくらいの細さのほうがスタイリッシュなんだろうか。そのうちリアがすごく凝ったミサンガを作りそうな気がする……。



「あ、そう言えば確かつける場所で意味が違ったような……」

「そうなんですか?」

「詳しくは覚えてないや、ごめん」



 おれが頭を下げると、リアはふるりと首を横に振る。



「ヒビキさまの故郷のものを知ることが出来て嬉しかったです」



 にこりと微笑むリアに、思わず「優しいなぁ」と呟いてしまった。リアはにっこりと笑って上機嫌で食器を下げてくれた。もちろん、自分が作ったミサンガと刺繍糸コレクションも持って。リアが出て行くのとすれ違いにルードが帰って来た。遠征の準備があるからと早めに上がらせてもらったみたい。ソファに座っていたから立ち上がって駆け寄ろうとしたけど、ルードのほうが早かった。立ち上がったおれをぎゅっと抱きしめる。



「おかえりなさい、ルード」

「ああ、ただいま、ヒビキ。……それは?」



 そして、視線をローテーブルに向けてミサンガを見つけると、不思議そうに尋ねて来た。なので、おれはリアにした説明をもう一度する。ルードがおれから離れるのと同時にミサンガを手にして、



「ルードに渡したくて、作りました。えっと、貰ってくれますか……?」



 おずおずと差し出すと、ルードは一瞬ぽかんとした表情を浮かべて、「私に?」と口にする。こくりとうなずくと、じわじわとルードの頬が赤くなっていくのが見えた。……こういうところが可愛く見えるんだよな……。



「どこにつければいい?」

「目立たないようにするには足首が良いかと……」

「いや、目立たせたい」



 ……じゃあ、とルードの利き手にミサンガを結んだ。一番目立つであろう場所に。ルードは嬉しそうに目元を細めて口角を上げ、そっとミサンガを撫でた。



「切れたら捨ててくださいね」

「……勿体ないな」

「『叶わなくてもいいこと』になっちゃいますよ」

「……それはダメだ。わかった、切れたら勿体ないが処分する」



 ミサンガを撫でていた手を止めて、神妙な顔でうなずくルード。それからぐいっとおれの腕を引っ張って抱きしめる。ぎゅうっと抱きしめられるのも好きだ。おれもそっとルードの背に手を回す。服からゆっくりと互いの体温が混ざる感覚。それがすごく心地よい。

 少しだけ離れてくいっとルードがおれの顎を上げる。目を閉じると、唇が重なった。ちゅっ、ちゅっと軽いリップ音を響かせながら、段々と深く交わっていく。薄っすらと唇を開くとそこからルードの舌が入って、舌を絡めてちゅくちゅくと言う水音が聞こえてくる。じゅっと舌を吸われたり甘噛みされたりすると、段々と躰の奥が熱くなっていく。息継ぎが出来るようになったのは良いけれど、キスが長くなれば長くなるほど、口内の感度も増していくような気がして……。キスをしながら、ルードの手が背中から下へと下がり臀部を撫でる。背中に回した手でルードの服をぎゅっと強く握りしめた。そうでもしないと座り込んでしまいそうだったから。
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