【本編完結】十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、攻略キャラのひとりに溺愛されました! ~連載版!~

海里

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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!

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 遠征中に外で食べることはあったかもしれないけど、気兼ねなく食べることは出来なかったのかな? とりあえず、お腹が空いていたので屋台で美味しそうなものを買ってベンチで食べる。肉の串焼き、野菜の串焼き、サラダ系クレープ、デザート系クレープとぽんぽん買っていった。

 早速手を合わせて「いただきます」と言ってから肉の串焼きにかぶりつく。肉汁がじゅわっと口の中に広がって、思っていた以上に柔らかい肉でホロホロとほぐれていく。シンプルな塩だけの味付けなのに、なんでこんなに美味しいんだろう……!

 隣を見るとルードが野菜の串焼きを食べていた。かぶりついているのに絵になるとはどういうことなのか。もぐもぐと食べ進めて、今度はサラダ系のクレープを食べる。シャキシャキのレタスに甘いトマト。たまごサラダも入っている! …………サンドウィッチの具をクレープでまとめた……? パンとクレープだと食感が違うからこれはこれで美味しい。もちろん、サンドウィッチも好きだけど!

 おれが食べている様子を見ていたのか、ルードの手がぴたりと止まっていた。



「ルード?」

「ヒビキは本当に美味しそうに食べるね」

「そうですか?」



 そうだよ、とルードが優しく笑う。……おれって食べている時もそんなにわかりやすいのか……。



「見ているとなんだか私まで食事が楽しくなる」



 と、言ってからクレープを食べる。その表情はとても楽しそうだ。



「ルードは……あまり人と食事をしたことがないんですか?」



 前々から思っていたことだけど……。おれがそう聞くと、ゆっくりと首を縦に動かした。



「幼い頃からほぼひとりで食べていたな。こうして並んで食べたりすることは滅多になかった……と思う」



 過去を振り返るように目を伏せて肩をすくめた。…………ひとりでの食事、か。おれの場合ひとりと言うか、リーフェやニコロ、じいやさんやリアが話し相手になってくれているけれど……。ルードの場合はどうだったんだろう。



「ごちそうさまでした」



 買って来たものを全て食べ終えて、手を合わせて呟く。ゴミはゴミ箱へぽいっと捨てて、改めて歩き出す。ルードはおれの手を握って、おれもルードの手を握り返す。



「食事が楽しいと思えるようになったのは、ヒビキのおかげだな」

「じゃあこれからずっと楽しいままですね!」



 ルードの顔を見上げながら言うと、ルードは一瞬目を大きく見開いて、それから柔らかく微笑んだ。



「それはありがたい」



 ルードが優しい声でそう言った。表情も相まって、街を歩く人たちの視線を奪っているような気がする。って言うか奪っている。こっちを見つめてくる人たちの多いこと、多いこと……!



「なに往来でいちゃついてんの」



 後ろから声を掛けられてびっくりした。振り返ると、アデルが荷物を持っていた。



「びっくりした……。いちゃついているように見えた?」

「見えた見えた。みんなの視線を奪うくらいにいちゃついてたじゃん」

「……そうか?」



 ルードにとってはいちゃついているに入らないんだろうか。甘い表情に声。こうしてみるとやっぱりイケメンなんだよなぁ。背も高いし。その身長にどのくらい近付けるのだろうか……。



「自覚なし? ルードって結構そういうの鈍いんだね。……いや、まぁ、らしいって言えばらしいか」



 アデルはどこか納得したように呟いて、それからにやりと口元を上げておれに近付いて耳元で囁く。



「ラブラブじゃん」



 からかうような声色だったけど、良かったね、と言われた気がした。ルードがアデルから引き離すようにおれを引き寄せる。その様子にアデルはカラカラと笑い、



「ボク、彼は好みじゃないから安心してよ」

「出来るか!」

「信用ないね~」



 これはこれで漫才を見ている気分になる。それにしても大量の荷物だ。なにに使うんだろうと思わずマジマジ見てしまった。アデルがその視線に気付いて、首を傾げた。



「気になる?」

「山のような荷物だなぁって」

「全部玩具の材料だよ。子ども用から大人用の、ね」



 ぱちんとウインクするアデル。色々作ってるんだなぁ……。



「気になるなら来る?」

「いや、今日はルードと行くところがあるから!」

「ふぅん。じゃあ今度遊びにおいでよ」



 それじゃあ、とアデルは去っていった。……普通に暮らしているんだな……と思うのと同時に、ハーレムの人たちどこに行ったんだろうと首を傾げる。ルードは知っているのかなと顔を向けると、ルードはおれの視線に気付いて「ん?」と首を傾げた。



「……ええと、ルードはどこに向かっているんですか?」



 やっぱり聞かなくてもいいや。それほど興味があるわけではないし。代わりに気になっていたことを尋ねる。



「すぐにつくよ」



 そう言ってまた歩き出す。五分もしないうちに目的地についた。……こ、ここは……。



「武具屋だ。ヒビキ用の装備を一通り揃えておこう」

「え、おれの、ですか?」

「お守りのようなものだ」



 そう言って中へ入る。うわぁ、格好いい鎧や剣が並んでいる……! こういう場所行ったことがないから圧巻だ……!

 キラキラと輝きを放つ白銀の鎧や切れ味の鋭そうなショートソード。誰が使うんだと思うくらい長い槍。様々な武器や防具だ。



「いらっしゃい、メルクーシン隊長と……」

「ヒビキです」

「ああ、噂の!」



 ……いつになったらおれに関する噂って消えるんだろう?

 声を掛けて来たのは多分、店主さんだとは思うんだけど……。ルードより頭ひとつ低いけれど、すごい筋肉だ。いや、ルードもすごいと思うけど、なんていうの、マッチョ? そう、これぞマッチョ! って感じの筋肉。ボディビルダー? だっけ。そんな感じの筋肉だ。



「ヒビキに持てるような武器はあるか?」

「その前にお聞きしますが、武器を持ったことは?」

「ありません」



 きっぱりと答える。おれが持ったことのある刃物なんて包丁とカッターくらいだし。あ、彫刻刀も刃物かな? ……高校に入学してから一度も触れていない気がする。どこに置いたかも覚えてないや……。



「初心者向けですね。でしたら……、こちらはどうでしょうか」



 すっと取り出されたのは小さめのナイフだ。へぇ、こんなナイフも置いているんだ。と、じっと見ていると「持たせてみても?」とルードが店主さんに聞いた。店主さんは笑顔で「どうぞ」と差し出してくれた。

 恐る恐る持ってみると、程よい重さでしっくりと来た。こういうナイフもあるんだ……。



「うん、良さそうだ。じゃあこれを十本お願いしよう」

「十本!?」

「そのうちの八本はニコロに渡すから」



 一本だけでも良いような気がするんだけど……。と言うか、八本ニコロに渡すってどういう事だろう? と首を傾げるとルードは店主さんと色々話していた。



「かしこまりました、では少々お待ちください」



 店主さんは奥へと向かう。すると、ルードは他のも見始めた。自分の分も買うのかなって思っていたら、「……もう少し重りを足しても良いかもしれんな……」と聞こえた。……重り? おれ用のナイフにってことかなぁと思ったけど、おれがルードの服の袖を引っ張ると、ルードは「どうした?」と微笑んだ。



「重りを足すって?」

「ああ……。最近の訓練で……」



 あ、聖騎士団の話か。びっくりした。どうやら第一部隊の人たちの筋肉が更についたらしく、訓練用の武具を軽々と使うようになってきたのでそろそろ重りを足しても良いと考えていたようだ。聖騎士団の訓練って大変そうだなぁ……。

 おれが見たのは多分ごく一部だし、他の訓練もあるんだろう……。

 ……想像がつかないや。筋トレしたり走ったり? うーん……おれが想像しているのって、部活の内容だよな……。

 そんなことを考えていたら、店主さんが戻って来た。
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