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3章:その出会いはきっと必然
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しおりを挟む笑うのを耐えていたルードが顔を上げる。愛しそうにおれを見て、そしてふんわりと微笑んだ。その微笑みがまぶしい。ルードの笑顔を見慣れているハズのおれでも、思わずドキリとする微笑みだ。
……きっと、ルードは待っていたんだ。八年前からこの時を。ルードの顔に手を添えると、彼は目元を細めた。どんな思いで待っていたんだろう。引き寄せられるようにルードの唇とおれの唇が重なった。頬に添えていた手をルードの首へと移動して、触れるだけのキスを何度も角度を変えて繰り返す。徐々に深くなっていくキスに目を閉じると、舌と舌が触れ合った。甘噛みされるとそれだけでゾクゾクとした甘い痺れが走る。
キスをしながら、ルードの手が下がっていく。首筋を撫でられ、鎖骨を撫でられ、躰のラインを確かめるように手が動く。くすぐったくて、キスの合間に笑ってしまった。目を開けると優しくおれを見つめるルードと目が合った。その目の奥にはっきりと情欲の色が見える。唇が離れるとそのまま舌で舐められる。おれの存在を確かめるような愛撫に、小さく笑みを浮かべた。
「ここに居ますよ、ルード」
「……ああ。だが、どうしても確かめたくなる」
ヒビキがここに居ることを、と小声で呟かれた。言いながらもおれへの愛撫を止めないのはすごいな。乳輪を丹念に指で撫で、もう片方の乳首は吸われた。ぢゅっと強めに吸われて下半身に熱が集まる。
「んっ、ぁ……」
乳輪を撫でまわされ、ぷっくりと立ち上がった乳首をちょんと指の腹で触られた。それだけでもびくんと躰が跳ねる。ルードが触れる場所、すべてがじんじんと熱を持つようだ。くりくりと指で転がされ、舌で転がされ、快感でなにも考えられなくなる。乳首への愛撫ですっかり勃ち上がったモノには一切触れずに、ルードは乳首にだけ愛撫を続ける。
「ルード、下も……」
さわって、と言う前にルードと目が合った。にやりと目元を細めるルードに、イヤな予感を感じる。もしかして――。
「乳首だけでイったらね」
想像していた通りの答えだった。楽しんでる、絶対楽しんでる……! おれがそう思っていたことに気付いたのか、カリッと甘噛みされて口から喘ぎ声が出た。じわじわと快感の波が大きくなっていく感覚。
いつも、乳首でイかせるときに使う玩具を今日は使わない。ルードの手だけでってことだろう。丹念に乳首を舐めて、爪でカリカリと刺激する。一度口を離すと、舐めていないほうへと吸い付き、舐めていたほうを指でつまんでくりくりと動かす。唾液で濡れた乳首は空気に触れて余計に感じてしまう。
「ぁ、ぁあっ」
乳首を引っ張られて甘噛みされて、気持ちいいとしか考えられなくなってきた。引っ張りながらもクリクリ動かすの器用だな! ちゅうっと乳首を吸ったり舌で転がしたり、甘い痺れが下半身に集まっていく。
ルードは舐めていた乳首から口を離し、両方の乳首を摘んで引っ張る。そして、身を屈めておれの耳元で、
「気持ちいい?」
と聞いてきた。こくこくうなずくと、ルードは嬉しそうに乳首への刺激を強めた。あ、ダメだこれ……!
「もっと可愛いところ、見せて?」
甘く響くルードの声。目まぐるしい快感が躰中を巡る。目の前がチカチカするような強い快感が襲ってきて――……。
「ァッ、ァああああっ!」
乳首だけ……というより、ルードの声に導かれるようにドライでイってしまった。玩具を使わないでイくのは初めてかもしれない。快感の波が引かないドライ。はぁはぁと息を荒げるおれに、ルードが優しく頬に手を添えて、キスをする。
唇を離すとすぐにナイトテーブルから小瓶を取り出して、蓋を開けて手にとろりとおれに見せつけるかのように出すと、下は下でも蕾にローションを塗り付けた。
「んぅ……」
「やわらかいね」
つぷりと中指が入って来た。ルードの指がナカを探るように動いて、ふふ、と小さく笑う。なぜ今笑ったのだろう……とルードを見上げると、彼はただ優しく――いや、この笑みは――……。
「知っているかい、ヒビキ」
「な、なにを……?」
指を増やしつつ、ルードはわざと前立腺に当たらないようにナカを広げていく。なにを言うつもりだろうとドキドキしていると、ルードが口角を上げた。
「あの時、ヒビキが教えてくれたこと全て、再び出逢えた時にしようと思っていたことを」
媚薬の効果を抜いた時のことを言っているんだと思った。ルードにとっては八年前のこと。良く覚えていたなと考えるのと同時に、こんなにも乱れるおれにしたのは、そう言う理由があったのかと頭の片隅で納得した。
「指が三本入ればいいとか、乳首が感じるとか、出さないでイくとか……ね。媚薬の効果がなければもう少し鮮明に覚えていられたのかもしれないと思うと、少し悔しくて。たくさん乱れるヒビキが見たくて仕方なかったんだよ」
ルードが饒舌だ。ルードがおれの躰に快感を教え込んだのって……。
「ヒビキが私の屋敷に来た時に、なにも知らないことに気付いて驚いたけれど……。年齢を聞いて納得もした。その時が来るまでに、ヒビキに快感を教え込むのも楽しみのひとつになったし。ヒビキの躰は快楽を覚えれば覚えるほど敏感になっていくし……ふふ」
最後の笑いはなんなんだ! とルードを見ると、ルードは心底楽しそうに笑みを浮かべていた。
「もっともっと溺れて、私なしではイけない躰になれば良いのに……」
ぽつりと呟かれた言葉に、おれは目を瞠った。……前にニコロの言ったことを思い出して、おれは胸が苦しくなる。ルードがおれの躰に快楽を教え込んだのは、きっと不安があったからだ。おれがどこかに行くんじゃないかという不安。離れてしまうのを恐れているのだと感じた。
「……もう、とっくに……」
とっくに、そういう躰にされてしまっているような気がするんだけどなぁ。ルードにぎゅっと抱き着くと、ルードはナカの指を抜いて抱きしめ返した。
「ルードを感じたい」
おれがそう言うと、ルードはこくりとうなずいて先端を蕾にあてがいぐっとナカへ挿入していく。熱くて硬いルードのモノ。おれの蕾やナカを傷つけないように入っていく。全身がルードの熱に喜んでいる感覚があった。挿入の時、最初の痛みは消えないけれどその後の快感を知っている。なによりも、おれのナカで感じているルードが愛おしくてたまらない。
「ぁ、ァあああッ」
前立腺を刺激されてまたドライでイってしまった。ドライになる頻度も早くなっている気がする。きゅうとナカを締め付けると、ルードが気持ちよさそうに息を吐いた。ピストンを始めて、どんどんと快感が広がっていく。出していないから快感はおれの躰に残ったままだ。
「あっあっぁんッ」
何度も最奥を突かれて甘い声が出る。気持ちいい。気持ち良くてなにも考えられない。おれを追い込むようにカリカリと爪で乳首を刺激するルード。彼の動きに合わせるように腰が動く。
「もっと感じて、ヒビキ」
ぎゅうっとルードに抱き着いた。肌と肌が密着して心地いい。キスをねだると応えてくれた。口の中も、乳首も、ナカも、全てルードを感じて快楽が全身に巡る感覚。ひとりじゃ絶対に味わえないのだと思う。そのくらい、強い快感。頭の中が真っ白になって、ビクビクと躰が動く。前立腺を擦られてぴゅっぴゅっ、と細かく白濁の液体が飛んだ。嬌声はルードの口の中に吸い込まれていった。同時に果てたようで、ナカに熱い液体を感じた。ルードと目が合うと、とろりとした甘い感覚が襲う。吸い込まれそうなほど、澄んだ瞳。
「触らなくてもイけたね」
下半身に手を伸ばしておれのモノを扱く。さっき出したばかりと言うのにすっかりと元気になり、ルードが与えてくれる刺激に期待するかのように震えていた。
「ヒビキはかわいいね」
「……ァッ、んん、ふ、ぁ……」
ただ上下に扱かれているだけなのに、直接的な刺激にナカのルードのモノを締め付けてしまう。抜かれていないから、また大きくなっていくのを感じた。挿れたまま動かないってきついと思う。おれの腰が動きそうになると、ルードは「だめ」と一言だけ言って、ぎゅっと根元を掴んだ。
「ぁ、な、んで……?」
「もっとヒビキを感じたいから」
うっとりとそう言われると、なにも言えなくなってしまう。おれが動きを止めるとルードの手が先端へと移動した。優しく撫でまわされて動きたくなくてもビクンと跳ねてしまう。ルードは何度も何度も「かわいい」と言いながらおれを絶頂へと導こうとする。その手がぴたりと止まり、体位が変わった。挿れたまま躰を横にされ、ぐりっと前立腺を掠める。四つん這いにするとぴったりと密着して躰を起こす。さっきよりも深いところまでルードのモノが入り込んだ。
「ふぁッ、ぁあっ!」
その刺激に出さないでイった。思わずルードのモノを締め付けてしまう。熱い。
「わかるかい、ヒビキ。ナカ、とろとろになっているよ」
耳元でそう囁かれた。その低音ボイスを聞いて、顔が熱くなる。耳まで真っ赤になってしまったのか、かぷりと耳を食まれた。唇で食まれてぞくりとする。性感帯を増やされている……!
ルードが触れる場所、すべてが熱を持っていく感覚。ルードの胸とおれの背中が密着して、おれはルードの胸に寄りかかるようにしないと前に倒れそうだった。それに気付いているのか、おれの胸に手を置いて、もう片方の手でおれのモノを刺激する。爪で先端の窪みをすりすりとされて、ゾクゾクと甘い痺れが駆け巡った。
「ここのナカも性感帯だって知っている?」
「……ぇ? ァッ、ん……んぅ……ッ」
トントンと爪先で鈴口を弄る。ナカって、え? え?
ルードの言葉を理解する前に快感が襲ってくる。最奥をゆっくりと突かれて、乳首を摘まれ、先端を撫でられて快感の波が走って――……。
「ふ、ぁ、ァああああああッ!」
「――ッ、ヒビキ……」
すごい勢いでなにかが込み上げる。ビュクビュクと止まらない。そしてそれがとても気持ちいい……。ナカにルードが出したのを感じて、彼の胸に身を預ける。ルードはしっかりとおれを抱きとめといて、そっとおれの目を塞ぐように手を当てて、
「――おやすみ、ヒビキ」
甘く囁かれて、おれはそのまま意識を失った――……。
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