【本編完結】十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、攻略キャラのひとりに溺愛されました! ~連載版!~

海里

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2章:1週間、ルードと一緒です!

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 近付いてきた人物はふたり。ひとりは金髪碧眼の美少年――に、見えるけど実年齢知らないからもしかしたら青年かもしれない。このゲームの主人公のアデルだ。
 そしてもうひとり、薄紫の長髪をポニーテールにして、金色の瞳でニヤニヤと笑みを浮かべている人物。アデルよりも背が高い。そもそもアデルって身長どれくらいあるんだろう? おれよりは高い気がする。

「ルード、一週間の休暇じゃなかった?」
「ああ。……あいつらを待たせているようだが、良いのか?」
「構わないよ。それより今からみんなでお昼なんだ、ルードもどう?」
「断る」
「相変わらずつれない!」

 面白くなさそうに唇を尖らせる姿も、中々愛嬌があるけれど……。やっぱり姉に聞いたゲームの主人公のアデルと、なんか違う……。アデルがおれに気付いたようで、少し眉を眉間に寄せた。

「……久しぶりだね」
「え、と、はい……」

 そしておれを覚えていたのか! いやそれを言うならおれもアデルを忘れたことはないから、お互い様なのか……?
 ルードが手を離してさっとおれの前に腕を出す。アデルともうひとりから、おれを遠ざけるように。
 それを見たアデルが面白いものを見たかのように笑みを浮かべ、さらにもうひとりもなにかを察したかのようにうなずいていた。なにを察したのだろうか。

「お噂はかねがね。初めまして、ルーちゃんの愛し子くん」
「……ルーちゃん!? あ、初めまして」

 薄紫色の髪を持つ男性がおれに話しかけてきたけれど――挨拶を返す前に思わずルードのことを指しているであろう言葉に驚いてそっちから口に出てしまった。

「シリウス、その呼び方はやめろと前にも言ったはずだが?」
「怒らないでよ、ルーちゃん。可愛くていいじゃない、ルーちゃん」
「わざとだろう、貴様……」

 うーん、からかわれているルードってなんか新鮮。そしてこの人シリウスって言うのか……え、星の名前? 思わずシリウスさんを見るとどこかで見たことがあるような顔だった。パッケージにいたのかも。でも正直もう記憶が怪しい。あれ、ってことは彼も攻略キャラ?

「俺はシリウス。商店街の裏通りで玩具屋をしているんだ。よろしくね」
「ヒビキ、です。よろしくお願いします」

 商店街の裏通り、がどこなのかさっぱりわからないから見当もつかない。それにしても玩具屋さんってこの世界にもあるんだ。

「……ヒビキ、ねぇ……」

 ぽそりと呟いたアデル。

「やっぱり日本人か」
「え?」

 ちらりとおれを見てそう言った。その言葉は小さくて、多分おれにしか聞こえなかったとは思う。ルードとシリウスさんはなんか話していたし。……なんでおれが日本人だってアデルにわかったんだろう?

「おっと、そろそろ行かなきゃ。今日はお昼食べたらみんなを可愛がる予定だし」
「えっ……」

 可愛がる? どういう意味だろうとルードを見上げると、ルードは緩やかに首を振って息を吐いた。

「それじゃあね、ルード、ヒビキ」
「今度ゆっくり話そうね~」

 大きく手を振って去っていくシリウスさんと、それを見て呆れたように肩をすくめるアデル。ちらりとおれを見てから、ふいっと顔を逸らして集団へと戻っていった。……ざっと数えて十人以上はいるけど、もしかしてあの人たちがアデル親衛隊……?

「……嵐だな」
「……ハーレム……?」

 戻ったアデルたちを歓迎するように、周りの人たちが「アデルさま」と声を掛ける。アデルはそれに応えるようにひとりの手を取って甲に唇を落とす。それを羨ましそうに見る人たち、ひとりひとりの手を取って唇を落としていく。
 気が済んだのか、ぞろぞろと城の門を出て行った。

「……あの、ルード。彼と一緒にいた人たちって……」
「アデル親衛隊だ」

 ……当たってはいたけれど、聞きたいところはそこじゃない。

「城の人たちですか?」
「ああ。とはいえ、どこの誰とはわからないが」
「聖騎士団でもハーレム作ったんですよね?」
「趣味なんじゃないか、ハーレム作るの」

 ……どんな趣味だ! しかしひとりひとり、割と丁寧に対応していたからちょっと驚いた。……そしてひとりも女性がいなかったのは、ここがBLゲームの中だから? でもこの世界って結構……どころかかなり恋愛関係自由だからなぁ……。

「シリウスさんとはお知り合いなんですか?」
「ああ、あいつとは昔少しな。昨日ヒビキに使った道具があっただろう、あれはあいつの店から買ったものだ。特注で」
「……えっ!?」

 玩具屋って言ってたよな、それはもしかして、頭に『大人の』がつく店と言うことだろうか。そしてそれを買っているルードを想像すると中々シュールだ。

「シリウスさんもアデルの親衛隊なんですか?」
「さぁ。あいつのことはよくわからん。アデルのことを好いているのは確かだろうがな」

 好きな人が自分以外の人を相手にしているって、シリウスさんの気持ち的に大丈夫なんだろうか。

「とりあえず、歩きながら話そうか」
「そうですね」

 手を繋ぎなおして、歩き出す。見張りの兵士さんに「ありがとうございました」と頭を下げると「いいえ」とにっこり微笑んでくれた。
 朝とは逆に歩く。なんだか不思議な気分だ。整備された道路は歩きやすい。そしておれ、この世界が某有名RPGみたいな世界だと思っていたけど、訂正します。SFっぽい。なんで建物浮いてるの……?

「朝は気付かなかったんですけど、あの浮いている建物って……?」
「あれは……なんだったかな。確か高級ホテルだったような気がする」
「まさかの曖昧!?」
「使ったことがないからな。ちなみにアデルが泊っているホテルだ」
「え、そこに住んでいるんですか!?」
「一応来賓扱いだからな、色々あってそこになった……らしい」

 ルードがアデルに興味ないのはわかっているんだけど、こういう情報を知っているのにちょっと驚いた。多分、そのまま疑問が顔に出たのだろう。ルードは眉を下げて「聞いていないのに団長が教えてくれる」とほとほと困ったように呟く。

「……ルードとサディアスさんって、なんだか兄弟みたいな仲の良さですよね」
「私と団長が? 仲が良い? ……え?」

 思ったことをそのまま言葉にすると、ルードは足を止めておれを見る。だからおれもルードを見た。……仲が良いと思うんだけど……、本人はそのつもりがないようだ。だって心底意外そうにおれを見ている。

「……まぁ、確かに保護者のように接してきていたような……?」
「あ、そこも曖昧なんですね」
「昔から団長はあんな感じだったということを、今思い出した」

 ルードの言葉にはなんとなく含みがあるように聞こえた。長い付き合いなんだろうなぁとは思うけど、もしかしてプライベートでも付き合いがあったのかな? そこまで聞いて良いものかどうか。ルードはあんまり気にしないような……そんな気はするけど、プライベートを根掘り葉掘りするのもちょっと憚られる。
 あれ、でもニコロとサディアスさんと、ルードとサディアスさん、付き合いが長いのはどっちなんだろう。
 再び歩き始めてから、ふと思い出した。兄弟と言えば……。

「そう言えばルードは兄がふたりいるって聞きました」
「ああ、ひとりは家を継いで、ひとりは大学に通っている」
「……大学って王都にあるんですか?」
「王都にもあるが、他にもある。南の国が一番広いんじゃないかと思う」
「行ってみたことが?」
「仕事でな」
「仕事ってことは、魔物退治ですか? え? 大学で?」
「いや、ただ単に護衛で」

 ……聖騎士団の仕事って一体どんな種類があるんだろうか……。
 そう言えば前も護衛でって言っていた。魔物が出る道は聖騎士団が護衛するってことなのかもしれない。
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