4 / 12
恋人の戯れ
しおりを挟む将軍は客室に入るや否や目をかっぴらいた。
「おいおいお前ら……。まさか、1発やってきたんじゃねえだろうな」
「将軍の催促がなければて……クスッ」
「シヴァン」
リンゼンがシヴァンの顔を隠すように引き寄せる。色っぽく笑うシヴァンの顔を他の男に見せたくないと嫉妬し、将軍を睨みつけていた。
「おい嘘だろ……。お前らの仲直りにと少々荒療治なことをしたが、仲直りどころかラブラブじゃねえか」
今どういう状況かというと、
風呂に押し込む前まであんなに険悪だった2人は、それはそれは甘い空気を醸し出していた。
ソファに座るリンゼンの膝上にシヴァンが横座りし、首に手を回しているし、リンゼンはピッタリとくっつくよう腰に腕を回してシヴァンを固定している。
交わされる視線は蕩けるように甘く、人前でも気にすることなく睦み合うように軽いキスを繰り返している。
「はぁ。もうお前らには振り回されっぱなしで疲れたわ。じゃシヴァン!引き続きこのバカを頼むな、俺は部屋に引き込もる!」
実際2人も将軍にかなり振り回されたのだが、それは棚に上げる。
「ええ、ゆっくりお休みになってください」
「シヴァン、よそをむくな」
1人は、言葉に含みを持たせつつ退出を促し、もう1人は完全無視だ。将軍は2人の世界に入ってしまった若者達を疲れた顔で見遣り、少し微笑むと部屋を後にした。
「暫く2人にしてやれ」
「はっ」
控える家令に指示して、部屋を後にした。
「良かったな、リンゼン」
将軍の独り言は2人の耳に届かず、消えた。
◇
「今度こそ、2人きりですね」
「シヴァン……」
「はい」
リンゼンは膝に腕を回すと、そう背の変わらないシヴァンを軽々と持ち上げ、客室の寝室にあるベッドに下ろした。そのまま自分も乗り上げてシヴァンを押し倒す。
「リンゼン、今回は私が貴方を受けいれますよ。」
「ああ。」
リンゼンはゆっくりと顔を近づけていく。
しかし触れる直前、シヴァンはリンゼンの唇を指で止めた。
「っ、」
「ですが、次は私が勝ちますので、私が貴方を抱きます。」
「!……ふっ、望むところだ」
今度こそ、リンゼンを受け入れ濃密なキスを重ねる。ゆっくりと互いを味わうように舌を絡ませる。
リンゼンはそのままシヴァンの服を脱がせていくと自分も手早く服を脱ぎ捨てた。
裸になると、長いキスに息絶えだえになっているリンゼンはまたシヴァンに覆い被さった。
「はぁっ…何だか、慣れてます?」
「そんなことない。抱くのは初めてだ」
「抱くのはってことは……。いえ、何でもありません」
「いい。汚ぇ体だからな。」
シヴァンが飛び起きた。
「そんなこと!不快なことを思い出させてしまって!決して責めるつもりじゃ……」
「本当にいいんだよ。今までは生き伸びるためだったし、別に何とも思ってねえ。それとも、こんな体いやか?」
「そんな訳ありません!貴方の全てが愛おしいと思ってます。」
シヴァンは1つ1つ傷跡にキスを落とす。
リンゼンはそれだけで胸がいっぱいになった。
「…それに、これからはシヴァンのものだから。」
「っ!、はい。貴方は私だけのものです。」
「シヴァンは?」
「もう…わかるでしょう?」
「いいや、何せ筆記0点なんでね。バカにもわかるように教えてくれよ、優等生」
「はぁ。全く仕方ないですね。」
耳を引っ張られ、囁かれる。
『自分で考えろばーか』
「……ふっ、上等だよ」
今度こそ、2人の身体はベッドに沈む。
荒々しく、技巧も駆け引きも何も無い、真正面からの愛のぶつかり合い。昂ぶる熱に任せた稚拙な行為だが、気持ちの通じ合う行為に2人は満たされていた。
「シヴァンっ、はっ、そろそろ、」
「あぁ、あぁん、リン、ゼン、こい」
「シヴァン!」
ラストスパートにかけて激しくなる。
頂きへ向けて快感が徐々に高まっていく。
リンゼンの背中に回された指が、羽の付け根部分に爪を立てた。
「あああ!ァ、あぁ!はげ、しぃぃ、んン~~~っ!」
「くっ、、んっ、は、ぅん」
同時に達した瞬間、口が塞がる。
中に熱い飛沫を感じながら、舌を絡ませあった。
絶頂に至った直後のシヴァンの敏感な身体は、痙攣し、ビクン、ビクンと波打っている。
その刺激に、中に埋まったままのモノが、固さを帯び始めた。
「シヴァン、すまない」
「この、絶倫が!、あぁ!あっ、はぁ、んあ、」
こうして初めての激しい交わりは、シヴァンが気絶するまで続いた。
……いやもうちょい続いた。
◇
シヴァンが身支度をし、帰宅の準備をしていた。
「シヴァン」
「……」
シヴァンは、目覚めてから1日起き上がることが出来なかったのだ。こうして動けるようになっても、一切口を聞いてくれない。
「すまない」
「……」
シヴァンの機嫌は氷点下まで下がり、リンゼンは捨てられた子犬ように隅で様子を伺っている。
「流石にやりすぎた」
「……ふふ、ふふふふふ。リンゼン、覚えておきなさい。次は貴方だということを。」
シヴァンの纏う空気はどす黒く、魔王もかくやというような邪悪な笑みをたたえていた。
「悪いが、今後も譲る気はない」
シヴァンがピンッと片眉を上げ、青筋を立てる。
「ほう?強情ですね。しかし、決定権は勝者にあるのですよ、関係ありません。」
「次も勝つのは俺だ」
「次も?、次はの間違いでは?」
「は?」
「はあ?」
◇
───数分後
「ちょっとおおお!お前ら何でまた喧嘩してんのおお!?ああああ!これ高かった壺おおお!」
「うるせえ、どっちが上になるかを、」
「黙れ!!また懲りずに騒ぎを起こして、お前ら覚悟は出来てんだろうな?!」
「しかし、これは由々しき問題で!」
「今すぐ魔物の巣窟で逆さ吊りにしてやってもいいんだぞ」
「「ひっ」」
「分かってるよな」
「「……。」」
「分かってるよな!!?」
「「……はい」」
「よろしい。俺は必ず有言実行するからな。覚えておけよ。」
「「旦那様!!ありがとうございます!!」」
部屋の片隅で、メイドや侍従達が咽び泣いている。抱き合ってお互いの健闘を称えあっていた。
こうして、屋敷の平穏は一旦保たれたのであった。
1
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説




推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる