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終章

105.そして、全ての悪を私が背負う

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自由を手に入れたはずの動物さんたちは、律儀にも私の後ろをついて来てくれたようです。

麒麟さん、
狼さん、
お猿さん、
鳥さん、
河馬さん、
他にも、たくさんの動物さんたちが私について来てくれています。

「おい、これは不味いんじゃないか?」

白い方々はワナワナと震えています。
想定とは違う状況に、恐れを感じているようです。

「でも、神様が守ってくれるんだろ?俺たちは信仰厚き選ばれた者なんだから」

自分たちに都合のいい神さまの存在を、頼ろうとしています。
本当に神さまがいて、
本当に貴方が方を選んでいるならば、
こんな状況が起こるはずもないのに。

「大丈夫だ、冷静になれ。俺たちもマーテルロ家の領民だ。商売道具にびびってどうする?」

今度は別視点からの現実放棄。
ただの領民にこの子たちを操る術はありません。
この子たちは、
この子たちの仲間は、ただ仕方がなく従っていただけ。
自身たちよりも力に劣る貴方達に、
逆らい続ける力とメリットがなかったから、従っていただけ。
商売道具よりも商売人の方が優れている、そんな道理はありません。

「おおぃ、いや、ごめん、お願い、だからーー」

とうとう、怯える白い方々の眼前まで来てしまいました。
震える声の息遣いが聞こえる距離。

黒い髪を靡かせながら。
何も恐れず、
何も怯えず。

ふと、一番奥で不安の表情をしている方と目が合いました。
小太りの、眉間に皺が印象的の男性です。
きっと、彼がこの騒動の首謀者なのでしょう。
彼は何かを思いついたように叫びます。

「ーーあの女を見ろ!あの黒い女を」

私を指差し、他の白い方々に語りかけます。

「あれは娘のオルコットに似ているが、この前見たときと髪色が違う。闇のように、負の感情のように、醜く汚れた黒だ」

なるほど、恐怖をまやかしの正義で誤魔化すつもりですか。
私が悪い人で、
自分たちがいい人。
悪い私を倒す自分たちは正しいと、『正義』という名のお酒に酔うつもりなのでしょう。

ーー実に、愚かしいです。
とても、不愉快です。
そんなことをしても、現実はまるで動かないのに。

「あれは呪いの証拠だ!あんな奴が支配者側にいるから、神がお怒りになったのだ」

彼の声に合わせ、乗せられた方々が口々に言います。

「そうだ、あいつのせいだ」

私が悪いと。

「全部、あいつのせいだ」

自分たちは悪くないと。

「家族が死んだのも」

何も努力せず、

「友達が死んだのも」

ただ時間だけを空費して、

「国が貧しくなったのも」

分かりやすい理由に飛びつく、

「全部あの女が悪いんだ!」

私が嫌いな人たち。

「俺たちの手で、平和な国を取り戻すんだ!」

お見事です。
綺麗に酔うことができましたね。

ーーでは、覚悟が決まったところで、虐殺のお時間です。
神さまと、正義とか、
物理干渉できない幻想を頼る愚かさを教えてあげましょう。

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