虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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終章

103.神さまの不在証明

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湿気った空気、
特有の臭気。
懐かしい、昔の私の日々。
お父様と記憶。
教育的指導、
痛み、
一瞬に安らぎ、
強制的な裏切り、
また痛みーー。

「ぐぅるぅう」

「お久しぶりですね、皆さん」

唸るように呼ぶ声に、私はぺこりと頭を下げます。
これから、一緒に戦うのです。
お互いに礼儀は大事です。
どちらが上も下もありません。
私がいないと彼らは戦えませんし、
彼らがいないと私は何もできません。

がしゃり、
鍵を開けて、鉄格子の部屋から彼らを解放します。
のそりのそりと、周りを警戒するように、
ゆっくりと、それでいて確実に私の方へと足を進めます。

私はしゃがんで、彼らと視線を合わせます。
鋭い眼光煌めくその瞳に、私の姿が写っています。

「あなた方と会うのは、本当はもう少し先のつもりでした。この国を滅ぼす最後の仕掛けとして、協力していただく予定でした。このような形でお力を借りるのは非常に恐縮なのです」

「ぐぅっぅ、がるぅう」

私の言葉に頷き、慰めるように彼らは唸りました。
私を取り囲み、かつてのように私の指を優しく舐めました。
ざらりとした感触。
敵意や害意のない安心感。
落ち着きます。
ここにお父様はいません。
私以外に、彼らを使役できるものはいません。
あの時のような状況は起こりません。
このまま、何もせず彼らと共に過ごすのもよいかもしれません。
何もせず、ただ朽ちていくのも、いいかもしれません。

私は少し前の日々を回想します。
お父様が倒れ、彼らを使役する権利が宙に浮いた段階で、すぐに面会に行こうとも思いましたが、下手に周囲に勘ぐられてもいけないので、我慢していました。
来たるべき日を、ずっと待っていました。
けれど、こうして外的要因で、好機でもないタイミングで会いに来てしまいました。

「これは最後の戦いではありません。最初の戦いになります。私のようなか弱いだけの少女に付き従うのは嫌かもしれませんが、どうぞお付き合いの程、宜しくお願いします」

私は彼らの頭を順に撫で、
抱擁し、
地上へと先導します。

さて、戦いの始まりです。
ーーいえ、違いますか。
きっと、戦いにはなりませんから。

戦力が違います。
今から起こるのは、一方的な虐殺。
数と身体能力の高さにモノを言わせた、圧倒的戦力差で行う鎮圧行為。

「行きましょう。この世に神さまなんていないことを、証明しに行きましょう」
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