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四章 呪いと反乱
91.夢で逢えたら
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暗い、
暗い世界。
空気が湿気っているような、じめじめとした空間。
どこでしょう、ここは?
自身の手すら見えないーーと言うほどではありませんが、手の届く範囲程度にしか、私の視界は有効になっていません。
自身の感覚もどこかお朧げで、
まるで、夢で見ているような感じです。
『久し××だ×』
どこからか、少しノイズがかかった言葉が聞こえます。
耳覚えのある、不安と苦痛を思い出す声。
「あなたは?」
『分かってる××に、分×らな×フリ×するな!』
私の言葉に声の主は怒りを込めて言います。
変わらず、所々ノイズが混じって正確には聞き取れません。
だいたいの意味は把握できますけれど。
『××殺し×く××な』
ん?
今物騒な単語が飛んできたような。
殺し?
『黒悪魔!』
今度ははっきりと聞き取れました。
一切の雑音なく、
懐かしく、
恨めしい単語が。
いえ、恨めしいというのは少々言い過ぎですね。
あの単語は彼女が私につけたあだ名のようなものですから。
『おい』
とか、
『お前』
とか。
そう言った指示名称で呼ばれるよりは、ほんの少しはマシだったのかもしれませんし。
姉として扱われた思い出はなかったけれど、
1人の虐げても良い『人間』としては、
認識されていたのですから。
まあ、どう扱われようと認識されようと、私は彼女たちの所業を許すことはありませんが。
どうでもよい、と無関心程度にはなりますが、思い出せば怒りや憎しみは生じます。
今が平和で満ち足りているから、
忘れそうには、
忘れてしまっている時はありますが。
『おい、無視するな!』
彼女はクリアな声で叫びます。
大分、この世界に私の波長があってきたのかもしれません。
異国の言葉で言うところの『ちゅーにんぐ』というやつなのでしょう。
体の感覚が馴染んできているような気がしてきます。
思考の霞もある程度ははれてきました。
だけれどーー
『こいつ、もしかして本当にこっちのことが見えてないのか?』
この手で殺したはずの妹様が目の前にいるのが、
その残骸はバラバラにばら撒かれてしまった妹様が五体満足でいるのが、
現実ではあるとは思えませんけれど。
暗い世界。
空気が湿気っているような、じめじめとした空間。
どこでしょう、ここは?
自身の手すら見えないーーと言うほどではありませんが、手の届く範囲程度にしか、私の視界は有効になっていません。
自身の感覚もどこかお朧げで、
まるで、夢で見ているような感じです。
『久し××だ×』
どこからか、少しノイズがかかった言葉が聞こえます。
耳覚えのある、不安と苦痛を思い出す声。
「あなたは?」
『分かってる××に、分×らな×フリ×するな!』
私の言葉に声の主は怒りを込めて言います。
変わらず、所々ノイズが混じって正確には聞き取れません。
だいたいの意味は把握できますけれど。
『××殺し×く××な』
ん?
今物騒な単語が飛んできたような。
殺し?
『黒悪魔!』
今度ははっきりと聞き取れました。
一切の雑音なく、
懐かしく、
恨めしい単語が。
いえ、恨めしいというのは少々言い過ぎですね。
あの単語は彼女が私につけたあだ名のようなものですから。
『おい』
とか、
『お前』
とか。
そう言った指示名称で呼ばれるよりは、ほんの少しはマシだったのかもしれませんし。
姉として扱われた思い出はなかったけれど、
1人の虐げても良い『人間』としては、
認識されていたのですから。
まあ、どう扱われようと認識されようと、私は彼女たちの所業を許すことはありませんが。
どうでもよい、と無関心程度にはなりますが、思い出せば怒りや憎しみは生じます。
今が平和で満ち足りているから、
忘れそうには、
忘れてしまっている時はありますが。
『おい、無視するな!』
彼女はクリアな声で叫びます。
大分、この世界に私の波長があってきたのかもしれません。
異国の言葉で言うところの『ちゅーにんぐ』というやつなのでしょう。
体の感覚が馴染んできているような気がしてきます。
思考の霞もある程度ははれてきました。
だけれどーー
『こいつ、もしかして本当にこっちのことが見えてないのか?』
この手で殺したはずの妹様が目の前にいるのが、
その残骸はバラバラにばら撒かれてしまった妹様が五体満足でいるのが、
現実ではあるとは思えませんけれど。
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