虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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四章 呪いと反乱

83.オルコット=マーテルロ、動く

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「では、私はこれで」

重苦しい空気を作るだけ作って、私は退散します。
こんな腐臭の立ち込める空間、居心地が悪いですから。
とても、
とっても。

「オルコット様、では私もーー」

「いえ、ペントレイアさんはお兄様とこれからについてご相談ください」

「では、尚更貴方も残っていただかないと」

彼の言葉に、私は首を振って否定します。

「先ほども伝えましたが、私はまだ少女。経験も実績もない、ただの血筋だけの少女です。奇跡でも起こさない限り、民衆は私をお父様の代わりとは思わないでしょう。それ以上に、彼らの不安の種を増やすばかりです」

「それは、あるかもしれない。オルコットの存在自体、最近までは秘匿されていたのだから」

まさかのお兄様の援護射撃。
お兄様としても、敵対者がこの場に残るのは好ましくないといことでしょうか。
やれやれ、です。

「そうかもしれないですけど、それでは……」

不安そうな表情のペントレアイアさんでしたが、私はそれ以上の言葉を返しませんでした。
後は将来ある2人の判断にお任せしましょう。
どちらがお父様の跡を引き継ごうと、同じ話です。
今のやりとりだけでも、改めてこの2人が統治者の器ではないことは理解できました。

一方は、野心はあるが能力がまるで足りていません。
一方は、能力も野心もありますが、自己への信頼感が欠如しています。

加えて、この呪いのような疫病の氾濫。
これを治めることができれば、それこそ奇跡のような事象です。

私はばたりと扉を閉めて、お父様の部屋を後にします。
扉が閉めきられる直前、お父様と目があった気がしました。
助けを求めるような、そんな視線。
きっと、気のせいでしょう。

さて、事態がここまで進んでいるとなりますと、私も行動を急がなくてはいけません。
時間はたくさん、それこそ腐敗するほどの時間があったのである程度準備は完了しています。
後は実践あるのみ、です。
行動あるのみ、です。

さて、ここで質問です。
私の行動とは、何のための行動でしょう?


ーーもちろん、奇跡を起こすための、です。
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