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二章 誘拐と叛逆

33.新天地

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あれから、世間話を含め、色々お話しました。
私の言葉を聞いてくれる人は久しぶり、というか初めてだった気もするので、とても楽しい時間でした。
自分が誘拐されている立場、ということを忘れてしまいそうです。

「到着です。先輩、行きますよ」

謎の箱は振動を止め、黒い後輩さんが声をかけます。
どうやら、彼らの拠点に到着したようです。

「楽しいお話もこれにて終了、か。さて、良家のお嬢様方には堪えるボロ住まいかもしれないが、我慢してくれ」

黒い先輩は、妹様をがばっと背中に背負います。
併せて、私にも外に出るように促します。

私は謎の箱から一歩外に踏み出します。

「ここはーーどこでしょう?」

一面の植物。
草木が生い茂っています。
緑と茶色が調和した世界。
そこにポツンと、木で作られた古屋のような建物が二つ建っています。
音もなく、
声もなく。
静かな場所。
とても悪い人が根城にしている場所には思えなかったです。

「むー、むむむっ、むむむむむー」

妹様もこの光景を言葉にしようと頑張っています。
『む』しか言えない状態なので、何を言いたいか全く分かりませんが。

「のどかで、綺麗なところですね」

「そうですか?何もない、ただのど田舎ですよ」

「いえ、私にとっては素晴らしく感じます。空も広いし、人もいない。静かで落ち着きます」

ずっとこの場所でのんびりしていたい、
そう思ってしまう程に。
ですが、それは言葉にしません。
流石に、狂気が過ぎます。
私の方が、人質の価値がないのでは、と気づかれてしまいます。

「お嬢様の考えることは、よく分かりませんね。てか、あなたは人質なんですよ、怖くはないんですか?」

黒い後輩さんの言葉に、私は首を振って否定します。

「そこまで。大して恐怖は感じません。命を狙われるもの、ということも理解して生きてきましたから」

それに、と私はあえて言葉を区切ります。
相手の注意を引くように、
次の言動に注目が行くように。

「私の家は、厳しかったので」

自身の服をたくし上げて、傷跡を見せます。
反応は予想通り。
やはり、黒い後輩さんは、そこまで悪い人ではないようです。
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