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二章 誘拐と叛逆

27.交渉

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「何、その子?マーテルロの娘は1人じゃなかったんですか?」

「ああ、そうだと思ったが、1人目は出来損ないらしい。こっちが俺たちの本命だ」

黒いのお仲間さんも黒い人でした。
移動手段と思われる謎の箱に連れ込まれ、私は最初の黒い人の隣に座りました。
隣では、妹様は縄でぐるぐる巻きにされて眠っています。
若干、着衣が乱れています。
きっと相当に暴れまわったのでしょう。
私と違って。

謎の箱は轟音とともに動き出します。
馬さんや牛さんもいないのに、不思議です。
どういう仕組みなのでしょうか、興味はありますが、別に今はどうでも良いですね。
とりあえず、お屋敷からの脱出に成功したのです。
お父様も、お兄様も、お母様も近くにはいない。
いるのは、
謎の黒い人たちと、
ぐるぐる巻きで、文字通り手も足も出ない妹様だけ。

本は読めないけれど、私にとっては大分幸せな環境に思えます。
とりあえず、今、この瞬間は。

さて、これからどうしましょうか。
行き当たりばったりではありますが、
考えられる時に、
考えるべきことは考えなくてはいけません。

この人たちに殺されない方法、
今後の生活、
マーテルロ家との交渉、
妹様の取り扱い。

考えることはたくさんです。
ただ、私の手札はそこそこに揃っています。
どれを、
どの順番で使うか。
効果と効率を考慮した上で、
戦術と戦略を構築しなければなりません。

「ふふっ」

「どうした、この状況で笑うか?」

思わず、声が出ていたようです。
表情もそうですけれど。
油断はいけません。
この状況を楽しむことなんて、もっての他です。
やはり、オルテシアでいると、フォルテシアらしさはなくなりますね。

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