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一章 黒髪令嬢の日常

17.マーテルロ家

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マーテルロ家。
この世界を支配する、7大名家の一つ。
始まりはどこからかはよく分かっていません。
ただ、いつの間にその7つに世界は分断されました。
それぞれの名家を中心に繁栄を築いていきました。

私の生まれたマーテルロ家は、動物を中心にする産業・商業で栄えました。
動物を食料、愛玩、軍事、様々な用途に展開し、
効率的に『生産』・『運用』することで発展した領地です。

動物、と一言で表現はできますが、その種類は様々です。

従順な犬さん、
美しく高貴な猫さん、
巨大で力強い象さん、
怒ると最強な河馬さん。

もう色々です、
たくさんいます。

マーテルロ家は、その色んな動物を生産する手段だけでなく、操る術も手に入れていました。
その術は一族の秘伝であり、マーテルロ家の『血』が必要だそうです。
それこそ、私から見れば魔女のような異質な存在、呪われた能力と言えなくもないですが、私の意見は置いておきましょう。
とにかく、重要なことは、マーテルロ家が名家として隆盛を極め続けるためには、その『血』と『秘伝』の二つが必要ということです。
その二つを、受け継ぎ維持していかなくてはいけないのです。

「さて、フォルテシア。今日の講義を始めようか」

お父様は、眉間の皺をいつも以上に深めながら、逆さずりにされている私に話します。
この体勢、いつもですけど辛いです。
頭がボーッとします。

「知識欲旺盛なお前なら、よく理解していると思うが、マーテルロ家の血はとても重要だ。如何なる理由があろうと、絶やす訳にはいかない」

「は、はい。そうです」

「仮にお前が呪われてようといまいと、その体に流れるマーテルロの血には価値がある。無論、それは血液という意味ではなく、お前の母体としての素質ということだ」

呪われているのに、生かされている意味。
虐げられているのに、殺さない理由。
分かっています。
何度言われなくても、承知しています。

「お前はアデルが失敗し、オルコットがどうにもならなかった時の保険だ。お前が呪われていようと、お前から出てくる子供が呪いを引き継ぐとは限らない」

お父様は私の顔をぎゅぅと掴みます。
手袋の感触、ごわごわしてます。

お父様はじっと見つめています。
汚れた物を見る目で。
私のことを、
一応は娘であるはずの、私を。

「お前というフィルターを通した結果、呪いが浄化された、という解釈もできるからな」

と、笑いました。

私は頑張って、笑いました。
そうしないと、お父様は怒るから。
自身の考えを否定されたと、怒るから。

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