残念な聖女様が婚約破棄されましたが、従者の私がなんとかしてみせます

くわっと

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「ーーという訳で皆さん、お嬢様を怠惰の道から救い出すために協力してください!」

 私は机をバシンと叩き、集まってくれた皆々様に言います。
 私がなんとかする、とは言いましたが私一人の力は微力です。
 協力を仰がなくてはいけません。
 
「いや、一番甘やかしてるのはアリアナちゃんでしょ。俺らに言うより、あんたの意識改革が先だと思うが」

 ぶっきらぼうに答えるのは掃除主任のブラッキさん。
 短髪の目つきと口が悪いお兄さん。
 けれど、中身はそんなに悪くはありません。
 面倒見の良い、誤解されやすい残念な人です。

「えー、そんなことしたら、御当主様に怒られちゃうよー」

 甘い声で答えるのは調理主任のティエールさん。
 ふわふわでくるくるの長い髪が印象的な女性。
 垂れ目でゆったりとした喋り方、ブラッキさんとは対象的で性格が少し腹黒です。

「例の婚約破棄絡みか? だが、今更だろう。お嬢の怠け癖は一朝一夕に治るものではない」

 お堅い感じで言うのは、護衛主任のスニックさん。
 頬に斜めの傷のある、強面のおじ様です。
 武闘派で口数少なめ、でも優しい方。

「私はアリアナの言葉に賛成。駄目かもしれないけど、挑戦することはいいことだからね。それに、やるなら今が一番早いからね」

 真面目なことを言ったのが、教育主任のペトラさん。
 さらさらの黒髪が綺麗な、優しい女性。
 私の友人でもあり、良き理解者。
 基本、私の味方をしてくれる優しい方です。

 お嬢様に関わりのある方々を一同に介しての、作戦会議。
 司会はお嬢様の専任従者である私です。
 立場としては、皆様より一段階程度下ですが、ことこの議題に関しては私が一番詳しいです。
 なので、私が一番偉いです。

「ブラッキさん、確かに原因の一つは私かもしれません。でも、私が今から厳しくして、お嬢様が変わると思いますか?」

 私はブラッキさんに言います。
 少しぷんすかしながら。
 図星を突かれた、というのもありますが非協力的態度というのがよくありません。
 これは私だけの問題でなく、自身含めた全体での問題、ということを認識していただかなければ。

「それは……思えねぇな」

「そうでしょう、だから皆で協力して考えましょう」

 同意するブラッキさん、私は笑顔で言います。

「まあ、暇だから手伝うけどー。でも、怒られたら全部アリアナのせいにするからねー」

 それに対し、ティエールさんが面倒そうに言います。
 この方はすぐ人のせいにするので苦手です。
 だけれど、好き嫌いは言ってられません。
 彼女の立ち位置は今回に計画においてかなり重要なもの。
 きちんと動いていただかないと。
 そして、失敗したら私のせい、という他責思考は捨てていただかないと。

「そこは連帯責任でいきましょう。私だって怒られるのは嫌なんですから」

 と、バシッと私は言ってやりました。
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