追放された悪役令嬢は残念領主を導きます

くわっと

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二章

18.尋問

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「……だれ、です、か?」

先程の流暢な謝罪の言葉とは違い、少し継ぎ接ぎの疑問文がパトリシアに向けられた。
元々、言語体系が違うのだ。その若さで喋れるだけ、尊敬に値するだろう。
どのような流れで、こちらの言葉を覚えているのか、非常に興味があるけれど。

鎖で繋がれた少女。
蛮族の少女。
外見からは、特段自身と違いは分からない。
噂では、肌の色が若干褐色であると言う話であるが、こう薄暗くてはその程度の判断は難しい。

それに、色の違いが一体何だと言うのだろう。
そんなもの、顔の良し悪し、体型の違いと大差ない。
文化が違う言葉が違う、と言うのは意思疎通する上で問題はあるだろうが。
同じ人という定義には十分過ぎる程に収まる。

「私の名前はパトリシア。この領地の偉い人よ」

彼女はしゃがみ込み、少女と視線を同じにした。
真丸な目が、パトリシアの姿を捉える。
瞳の奥には疑いと恐怖が見て取れた。
だが、それをどうこうする時間はないし、そもそも彼女にはそのつもりはない。

「あなた、も、いたい、ことする?」

怯えた声で、少女は言った。
可哀そうだとは思う。
酷い扱いだとも思う。
しかし、そこまででしかない。
パトリシアとこの蛮族の少女はまで会って少ししか時間を過ごしていないし、たとえ過ごしていたとしても、助ける理由がない。
誰かの物語の元悪役で、この物語の現主役でも。
彼女は正義の味方ではない。
正しくは、彼女の正義にその行為は当て嵌まらない。
自身の生存、
自身の願いの成就。
それだけが、彼女にとっての正義。

「しないよ。それにそちら側へは行かないし、行けない」

牢獄の鉄檻に触れながら言う。
パトリシアは入る許可をもらっただけで、それぞれの檻の鍵はもらっていない。
少女とはいえ、傷だらけとはいえ、油断はできない。
自身の危険は、できるだけ低くしなければ、足元をすくわれる。
あの時のように、
あの時のように。

「よかっ、た」

安堵するように、少女は息を吐いた。
だけれど、少女にとってパトリシアが味方ではないことに変わりない。
どころか、敵地の有力者である。

「細長い怖いおじさんから、色々聞かれていると思うけど、質問が同じになってしまったら、ごめんなさいね」

前置きを一言つけて、彼女は続ける。

「どうして、貴方たちはここを襲いにくるの?」

その問いに、少女はびくんと体を痙攣させた。
怯えたように目を伏せて、
恐れるように体を震わせて。
鉄の柱に囲われているのに、守られているのに。
少女は眼前のパトリシアに恐怖した。
質問という行為そのものに。

「いつ、ここに来るの?」

少女は答えない。

「どのくらいの人数で、ここに来るの?」

少女は答えない。

「他に協力してくれる人はいるの?」

少女は答えない。

「どんな武器を使うの?」

少女は答えない。
口も開かず、ただ震えながら頭を押さえて。
時間が、パトリシアの言葉が終わるのを待った。
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