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2章 第2の婚約者
26.お父様
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私のお父様、ゴットファザ=ラインバルトは想像の斜め上を言っていた。
領主、という単語からイメージしていたのは
髭もじゃで、
少し太っていて、
踏ん反り返って、
豪華な衣装を身に纏っている。
そんな風だった。
だが、彼は違う。
上半身は裸、
下半身はステテコパンツのようなラフな格好、
一人でアメリカと平和条約を結んでしまいそうな圧巻の筋肉、
一本の毛の存在も許さないスキンヘッド、
鷹のような鋭い視線が、私を品定めするように抉る。
王様というよりは将軍と言うべき。
それも、ゴリゴリの武闘派の。
裸の大将、というか裸の将軍。
「そう遠くに立っていないでもっとこっちに来るがいい、我が娘よ」
覇気を感じさせる声。
言われるままに、私は彼の前にてとてとと近づく。
空気が重い、
呼吸が苦しい。
これが覇者の威容か、と感じる。
同じ領主であるアルベルトーー彼の場合は『次期』であり序列が低いのだが、それとは比べものにならない、圧倒的重圧。
「お父様、私を呼びつけたのはどういったご用ですか?」
丁寧な口調で尋ねた。
「お前にお父様、と呼ばれる筋合いはない」
まさかの言葉が飛んできた。
女の体でついぞ、その言葉を聞く日が来るとは思わなかった。
というか、さっき自分で我が娘って言ったじゃん!
「その気色悪い口調もやめよ。儂相手に偽りは不要」
「そうですか。分かりました」
敬語は崩さず、お嬢様モードだけを解除する。
「ひとまず、アルベルト=アルバートの確保、ご苦労と褒めておこう。これで我が覇道が一歩前へ進んだ」
「確保?どういうことですか?」
「理解して軟禁しているのではなかったのか?まさか、あの小僧との婚約を本気にしていた、とでも言うまいな」
情報が錯綜している。
認識が混乱している。
お互いが、お互いにを正しく理解していないために。
説明スキル、空気読みスキルが高いのは使用人の嗜みであり、王者は含まれないらしい。
「すみません。お互いに誤解し合っているように思えます。一度、状況整理をしませんか?」
「うむ、それが上策か。アルベイスの術も完全ではなかった、ということか」
ふぅ、と重い息を漏らしゴットファザは語り始める。
先行はこちらから、ということらしい。
「では、順に語り聞かせるとしよう。どうして、貴様が愛娘アリシア=ラインバルトの中身になるに至ったか。そして、これから貴様が何なんのために何をするかを」
今明らかになる、驚愕の真実。
そんな煽りが、入っていそうな導入だった。
領主、という単語からイメージしていたのは
髭もじゃで、
少し太っていて、
踏ん反り返って、
豪華な衣装を身に纏っている。
そんな風だった。
だが、彼は違う。
上半身は裸、
下半身はステテコパンツのようなラフな格好、
一人でアメリカと平和条約を結んでしまいそうな圧巻の筋肉、
一本の毛の存在も許さないスキンヘッド、
鷹のような鋭い視線が、私を品定めするように抉る。
王様というよりは将軍と言うべき。
それも、ゴリゴリの武闘派の。
裸の大将、というか裸の将軍。
「そう遠くに立っていないでもっとこっちに来るがいい、我が娘よ」
覇気を感じさせる声。
言われるままに、私は彼の前にてとてとと近づく。
空気が重い、
呼吸が苦しい。
これが覇者の威容か、と感じる。
同じ領主であるアルベルトーー彼の場合は『次期』であり序列が低いのだが、それとは比べものにならない、圧倒的重圧。
「お父様、私を呼びつけたのはどういったご用ですか?」
丁寧な口調で尋ねた。
「お前にお父様、と呼ばれる筋合いはない」
まさかの言葉が飛んできた。
女の体でついぞ、その言葉を聞く日が来るとは思わなかった。
というか、さっき自分で我が娘って言ったじゃん!
「その気色悪い口調もやめよ。儂相手に偽りは不要」
「そうですか。分かりました」
敬語は崩さず、お嬢様モードだけを解除する。
「ひとまず、アルベルト=アルバートの確保、ご苦労と褒めておこう。これで我が覇道が一歩前へ進んだ」
「確保?どういうことですか?」
「理解して軟禁しているのではなかったのか?まさか、あの小僧との婚約を本気にしていた、とでも言うまいな」
情報が錯綜している。
認識が混乱している。
お互いが、お互いにを正しく理解していないために。
説明スキル、空気読みスキルが高いのは使用人の嗜みであり、王者は含まれないらしい。
「すみません。お互いに誤解し合っているように思えます。一度、状況整理をしませんか?」
「うむ、それが上策か。アルベイスの術も完全ではなかった、ということか」
ふぅ、と重い息を漏らしゴットファザは語り始める。
先行はこちらから、ということらしい。
「では、順に語り聞かせるとしよう。どうして、貴様が愛娘アリシア=ラインバルトの中身になるに至ったか。そして、これから貴様が何なんのために何をするかを」
今明らかになる、驚愕の真実。
そんな煽りが、入っていそうな導入だった。
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