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1章 転生と初めての婚約破棄
16.この物語について
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懸命な読者諸氏におかれては、改めて説明するべくもないとは思うが、念のため、確認のため再度言っておこう。
この物語は醜い少女が美しいお嬢様に転生するも、
婚約破棄や、
婚約破棄とか、
婚約破棄といった、
そんな困難を痛快爽快に打ち破る『恋愛』ジャンルの物語である。
決して、バトルものではない。
従って、アリシア=ラインバルトと火龍の壮絶な死闘を詳細に記す、なんてことはない。
もし、そのような熱い戦闘モノをお望みであれば別途感想等にて指摘することを提案する。スピンオフとかがあるかもしれない。
ーー
妙なナレーションが入った気がする。
まあ、いいか。
それは私が気にすべきことではない。
私が今気にすべきことは、ただ一つ。
帰りの『足』をどうするかだ。
まだ馬車的なモノは残っているようだし、マジカル暴力交渉でいくしかないか。
てくてくと、馬車的な所まで戻っていく。
存外、終わってみるとあっけない。
作業時間より移動時間の方が長いと、やはり複雑な気分になるな。
「……お前、今、何を……」
顎が外れそうになるほど、驚いているアルベルトの間抜け顔が見える。
使用人も、彼ほどではないが、その身を恐怖に震わせているのがわかる。
相変わらず、無口を貫いているが。
こんな時まで、仕事熱心な人だ。
「火龍を、馬鹿な、一撃で、一瞬で……馬鹿な、馬鹿な……あり得ぬ!」
「おや、アルベルト様は私のこの力をご存知で、火龍『駆除』を頼んではなかったのですか?」
私は皮肉っぽく言う。
併せて、彼に向けてゆっくりと近づく。
一歩一歩、
てくてく、
てくりてくりと。
距離を詰めていく。
「相手は炎の化身だぞ?我が軍が総力を尽くしても傷一つ、痛み一つ与えられなかった化け物だぞ? それを……それを、あんな簡単に消したなんて、あり得るか!」
醜く恐怖にがたがたと震える。
私のことが恐ろしいなら、彼がすべきことは状況の言語化ではなく逃走だろうに。
愚かなことだ、
哀れなことだ、
虚しいことだ。
「あり得ない?いや、アリエーー」
っと危ない、これは別の世界のネタだった。
私はこほんと咳払いをして、口調を戻す。
「あり得ない、なんてことはないですわ。現に火龍は消滅し、私はあなたの元に舞い戻った。流石はアルベルト様、前言通り、私の勇姿を見守って下さっていたんですね。アリシア、とっても嬉しい!」
「くるな、来るなぁ!この化け物!悪魔!魔女!」
「あ、魔女は正解でしたね。流石は次期当主様」
とうとう、アルベルトの眼前まで歩き着いてしまった。
怯える表情が見える。
こんなに綺麗な私を見て、恐れている。
化け物と、
悪魔と、
魔女と。
その瞳に残るのは恐怖のみ。
さて、どうしたものか。
「お疲れ様です、お嬢様」
馬車的なモノの運転手的な人が喋った。
その声は、聞き覚えのある声。
この世界において、一番触れてきた声。
落ち着いた、恐れの『お』の字もない。
忠義に満ちた、愛らしい声。
「お久しぶりです、お嬢様」
べりべりと、
自らの顔面の人皮を、
一皮剥くとあら不思議、美少女メイドメノウちゃんの登場だった。
この物語は醜い少女が美しいお嬢様に転生するも、
婚約破棄や、
婚約破棄とか、
婚約破棄といった、
そんな困難を痛快爽快に打ち破る『恋愛』ジャンルの物語である。
決して、バトルものではない。
従って、アリシア=ラインバルトと火龍の壮絶な死闘を詳細に記す、なんてことはない。
もし、そのような熱い戦闘モノをお望みであれば別途感想等にて指摘することを提案する。スピンオフとかがあるかもしれない。
ーー
妙なナレーションが入った気がする。
まあ、いいか。
それは私が気にすべきことではない。
私が今気にすべきことは、ただ一つ。
帰りの『足』をどうするかだ。
まだ馬車的なモノは残っているようだし、マジカル暴力交渉でいくしかないか。
てくてくと、馬車的な所まで戻っていく。
存外、終わってみるとあっけない。
作業時間より移動時間の方が長いと、やはり複雑な気分になるな。
「……お前、今、何を……」
顎が外れそうになるほど、驚いているアルベルトの間抜け顔が見える。
使用人も、彼ほどではないが、その身を恐怖に震わせているのがわかる。
相変わらず、無口を貫いているが。
こんな時まで、仕事熱心な人だ。
「火龍を、馬鹿な、一撃で、一瞬で……馬鹿な、馬鹿な……あり得ぬ!」
「おや、アルベルト様は私のこの力をご存知で、火龍『駆除』を頼んではなかったのですか?」
私は皮肉っぽく言う。
併せて、彼に向けてゆっくりと近づく。
一歩一歩、
てくてく、
てくりてくりと。
距離を詰めていく。
「相手は炎の化身だぞ?我が軍が総力を尽くしても傷一つ、痛み一つ与えられなかった化け物だぞ? それを……それを、あんな簡単に消したなんて、あり得るか!」
醜く恐怖にがたがたと震える。
私のことが恐ろしいなら、彼がすべきことは状況の言語化ではなく逃走だろうに。
愚かなことだ、
哀れなことだ、
虚しいことだ。
「あり得ない?いや、アリエーー」
っと危ない、これは別の世界のネタだった。
私はこほんと咳払いをして、口調を戻す。
「あり得ない、なんてことはないですわ。現に火龍は消滅し、私はあなたの元に舞い戻った。流石はアルベルト様、前言通り、私の勇姿を見守って下さっていたんですね。アリシア、とっても嬉しい!」
「くるな、来るなぁ!この化け物!悪魔!魔女!」
「あ、魔女は正解でしたね。流石は次期当主様」
とうとう、アルベルトの眼前まで歩き着いてしまった。
怯える表情が見える。
こんなに綺麗な私を見て、恐れている。
化け物と、
悪魔と、
魔女と。
その瞳に残るのは恐怖のみ。
さて、どうしたものか。
「お疲れ様です、お嬢様」
馬車的なモノの運転手的な人が喋った。
その声は、聞き覚えのある声。
この世界において、一番触れてきた声。
落ち着いた、恐れの『お』の字もない。
忠義に満ちた、愛らしい声。
「お久しぶりです、お嬢様」
べりべりと、
自らの顔面の人皮を、
一皮剥くとあら不思議、美少女メイドメノウちゃんの登場だった。
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