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1章 転生と初めての婚約破棄

14.アルベルトの真意

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その龍は巨大だった。
とにかく、サイズが大きい。
その衝撃から、私の口から母国語でもない英語が飛び出した。

龍を一般動物の範囲で語るのは非常に愚かなことだとは思う。
だが、私が過去(といっても転生前)までに見た中で最大の物はどこぞの水族館で見たジンベエザメだ。
あれも随分とでかかった覚えがあるが、こいつはすげぇ!
縦にも横にも、その5倍以上あるんじゃねぇかってくらいにでけぇ!

しかも、体中が炎で覆われてやがるっ
ーー最早龍そのものが炎で形作られているような、デザイン。

空を羽ばたけるだろう逞しい翼、
人を容易に引き裂くだろう紅蓮の爪、
山を吹き飛ばした私でさえ、無傷で勝てるのかどうか不安になるぜっ!

ーーおっと心理口調がお嬢様どころか、普通の女の子のソレで亡くなっている。
落ち着け、私。
深呼吸をしよう。
ふぅ、
ふぅ、
ふぅーー

「ーーっがはっ、けほっ……吐きすぎました」

「大丈夫か?火龍様の威容に当てられたか?」

「いえ、大丈夫ですけど……今、どこかおかしくありませんでした?」

アルベルトは、今駆除対象である火龍に敬称をつけなかったか?
火龍『様』と。
使用人をモノ扱いする彼が、いくら竜種であろうと駆除対象に敬称などつけるだろうか、いやつけまい。
ということは……

「アルベルトよ、よく来たな。待ちわびたぞ」

火龍が重々しくその口を開く。
その言葉に、アルベルトは平伏する。

「はい、貴方様への貢物、このアルベルトが確かにお届け致しました」

つまりはこういうことである。
火龍とアルベルトは協力関係、正しくは支配者と被支配者の関係にあった。
そして、私はかの龍の欲望を満たすための生贄としてここに連れてこられたのだ。

「ご苦労、下がって良いぞ」

ははっ、と足早に馬車的なものへと立ち去るアルベルト。
おい、私の勇姿を隣で見守ってくれるんじゃあなかったのか。

火龍は観察するように、私をじっと見据える。
二重の意味で熱視線を送られる。

「ほほう、見れば見る程美しい。金色の艶やかな髪、大きく愛らしい目、瑞々しい白き肌ーー最高、最高だぞ、アルベルトよ!」

がはがはと火龍は笑い、「お褒めにあずかり、恐縮ですっ!」と遠くからアルベルトの声がした。
あのクソイケメンが。
後で覚えてやがれ。

「我は困っておったのだ。この炎の肉体、圧倒的な巨躯。確かに戦闘には便利なことこの上ないのだが、その他の情欲を満たす際に不便でな、探しておったのだ。そなたのような特殊でかつ、美しい人間を」

「は?」

情欲を満たす?
特殊?
どう言うことだ?
食べるって性的にいただきます、ってこと?
ご飯的な意味ではなくて?
とんだどすけべドラゴンもいたものだな、おい。
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