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1章 転生と初めての婚約破棄
13.火龍対峙
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「ーーとは言っても、まだまだ火龍の住処までは少々時間がある。お茶でも一つ如何かな」
アルベルトはそう言うと、使用人に合図をして、飲み物を注がせた。
取っ手のない、湯のみのようなカップ。
私と彼に一杯ずつ。
ホットなお茶なのか、湯気が立ち込める。
「彼の分は良いのですか?」
私が使用人の分の有無を尋ねると、クスリと笑う。
「彼? それは『コレ』のことか。気にするな、コレは人ではない。私に仕える便利アイテムだ。故に、飲み物など必要はないーーというのは半分冗談だが、コレは特殊な訓練を受けている。48時間程度までなら、不眠不休、飲まず食わずで稼動可能だ。よって、コレの分は不要だ」
『コレ』扱いされている使用人は、その言葉を無言で聞いている。
いつものことのように、
何も感じないように、
ただ黙って聞いている。
「そう……ですか」
全く、このアルベルトという奴は一周回って清々しいくらいの王様野郎だ。
自身の使用人をモノ扱いとは。
恵まれた人間とは、こうも歪に育つものなのか。
ノブレスオブリージュはどこへ行った?
ーーあ、世界が違うからそんな道徳もないのか。
私は気を取り直し、出されたお茶(?)に目を向ける。
色は茶色、
匂いはーーうん、いい香り。
敵陣で出された食べ物は手に取るべきでない、とどこかで聞いたことがある。
だが、彼は昨日の会談にも普通に参加していたし、半ばこの状況、私を眠らせるあるいは毒殺メリットは低いように思える(最早彼らの手中なのだろうし)
私はずずり、と大人しく口をつける。
ほのかに甘い、紅茶のような味。
「美味しいです」
「それは良かった、淹れたてだが、熱くはなかったか?」
「程良い温度でした」
「それは、良かった。火龍に会う前に火傷でもしたら叶わんからな」
ははっと、大仰にアルベルトは笑う。
ーー
「そろそろ到着するようだな。心の準備はできたかな?」
「はい、大丈夫です。いつでもやれます」
「それは安心だ。僕らの輝かしい将来のためにも、是非とも頼むよ」
アルベルトはそう言うと、私の肩をポンと叩く。
ここまで本性をさらけ出されると、いくらイケメンでも最早ときめかない。
ただただ、不愉快なだけだ。
嫌いな人間に体を触れられる程、嫌なことはない。
だが、それを気取られてはいけない。
今のところは。
穏便に、
マジカル武力制圧は、あくまでも最後の手段。
私は虐殺主義者ではない。
とりあえずは、まだ。
「では、駆除活動に出向こうか。無論、僕も隣で見守っているがね」
アルベルトは、運転手的な人に合図をし、馬車的な物を止めさせた。
むくりと立ち上がり、外へと出た。
そういえば、結局彼は用意されたお茶的なものに口をつけなかった。
やはり、何かし仕込まれていたかもしれない。
だが、飲んでしまったものは仕方がない。
マジカル腸内細菌が私の中で奮闘してくれることを信じよう。
お腹に一抹の不安を抱え、私も外へ出た。
「Oh,So mush big!」
火龍の姿を見るなり、何故か英語で思った事が口に出てしまった私であった。
アルベルトはそう言うと、使用人に合図をして、飲み物を注がせた。
取っ手のない、湯のみのようなカップ。
私と彼に一杯ずつ。
ホットなお茶なのか、湯気が立ち込める。
「彼の分は良いのですか?」
私が使用人の分の有無を尋ねると、クスリと笑う。
「彼? それは『コレ』のことか。気にするな、コレは人ではない。私に仕える便利アイテムだ。故に、飲み物など必要はないーーというのは半分冗談だが、コレは特殊な訓練を受けている。48時間程度までなら、不眠不休、飲まず食わずで稼動可能だ。よって、コレの分は不要だ」
『コレ』扱いされている使用人は、その言葉を無言で聞いている。
いつものことのように、
何も感じないように、
ただ黙って聞いている。
「そう……ですか」
全く、このアルベルトという奴は一周回って清々しいくらいの王様野郎だ。
自身の使用人をモノ扱いとは。
恵まれた人間とは、こうも歪に育つものなのか。
ノブレスオブリージュはどこへ行った?
ーーあ、世界が違うからそんな道徳もないのか。
私は気を取り直し、出されたお茶(?)に目を向ける。
色は茶色、
匂いはーーうん、いい香り。
敵陣で出された食べ物は手に取るべきでない、とどこかで聞いたことがある。
だが、彼は昨日の会談にも普通に参加していたし、半ばこの状況、私を眠らせるあるいは毒殺メリットは低いように思える(最早彼らの手中なのだろうし)
私はずずり、と大人しく口をつける。
ほのかに甘い、紅茶のような味。
「美味しいです」
「それは良かった、淹れたてだが、熱くはなかったか?」
「程良い温度でした」
「それは、良かった。火龍に会う前に火傷でもしたら叶わんからな」
ははっと、大仰にアルベルトは笑う。
ーー
「そろそろ到着するようだな。心の準備はできたかな?」
「はい、大丈夫です。いつでもやれます」
「それは安心だ。僕らの輝かしい将来のためにも、是非とも頼むよ」
アルベルトはそう言うと、私の肩をポンと叩く。
ここまで本性をさらけ出されると、いくらイケメンでも最早ときめかない。
ただただ、不愉快なだけだ。
嫌いな人間に体を触れられる程、嫌なことはない。
だが、それを気取られてはいけない。
今のところは。
穏便に、
マジカル武力制圧は、あくまでも最後の手段。
私は虐殺主義者ではない。
とりあえずは、まだ。
「では、駆除活動に出向こうか。無論、僕も隣で見守っているがね」
アルベルトは、運転手的な人に合図をし、馬車的な物を止めさせた。
むくりと立ち上がり、外へと出た。
そういえば、結局彼は用意されたお茶的なものに口をつけなかった。
やはり、何かし仕込まれていたかもしれない。
だが、飲んでしまったものは仕方がない。
マジカル腸内細菌が私の中で奮闘してくれることを信じよう。
お腹に一抹の不安を抱え、私も外へ出た。
「Oh,So mush big!」
火龍の姿を見るなり、何故か英語で思った事が口に出てしまった私であった。
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