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1章 転生と初めての婚約破棄

5.アルベルトのお願い

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婚約者になるための条件。
一体、どんな難題を繰り出してくるのか。

「そんなに身構えなくてもいい。ちょっとした生き物の駆除をお願いしたい」

「駆除?私にですか?」

きょとんとする私をアルベルトは嘲るように笑う。

「おいおいおい、僕が婚約者のことを調べもせずにここに来ていると思っているのか。惚ける必要はない。隠す必要もない。君の『力』は、君の『魔法』のことは知っている」

力?
魔法?
まさか、この体の持ち主、アリシア=アルバートは単純な美しさだけでもなく魔法も使えるのか。
魔法少女、ではなく魔法令嬢。
そう言われると、このふりふりのふわふわのドレスもどことなく魔法少女のそれを連想させる。

メノウをちらりと見ると、困ったように目を伏せる。
なるほど、その反応は本当だな。
秘匿事項であるようだが、なんらかの手段を使ったアルベルトに知られてしまった、ということか。

だが、困ったことに私の意識はアリシアではない。
つまり、魔法の使い方を知らないのだ。
井戸の底に水はあっても、汲み取る手段が無ければ意味がない。
さて、どうこの場を収めたものか。

「まあいい。自分の口からは言いにくいことだろう。それに極論を言えば君がやらなくてもいい。結果として『駆除』そのものを完了してくれればそれでいい。僕の、いや僕らの目的はそこだからね」

滔々とアルベルトは語る。
とりあえず聞いておこう。
この手の輩は喋らせておけばペラペラと重要なことも話し出す。

「ご存知の通り、僕らの領地は最近好調でね。飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している。僕も父もこの成長を止めたくはない。止めたくはないけれど、厄介なものに目をつけられた」

「他の名家の勢力ですか?」

「それならまだ良かったさ。相手が人間ならね」

アルベルトはため息をこぼし、天井を見上げた。

「火龍だよ。僕らが発展させた火薬技術が彼の逆鱗に触れたらしい。人間風情が、我が司る物を操るとは何事か、とね」

かりゅう?
火龍。
ファイヤードラゴン。
ここでファンタジー要素が入ってくるのか。

「竜種を倒すには僕らの装備、技術ではまだ足りない。あくまで、まだ、だけれどね。けど、あいつのせいで技術革新が遅れているのは事実だ。一刻も早く排除したい。そのために、君の力を貸して欲しい。報酬は僕との婚約だ」

火鼠の皮衣ではなく、火龍の命、か。
これはこれで十分に難題だな。
私としては、まずは魔法の使い方を思い出さなくては。
だが、魔法で竜種が倒せるものなのか。
竜退治は勇者やそれでなくても複数人のパーティーで入念な計画と準備を元に行うイメージがある。
一抹の不安を抱える私であった。
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