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「改めて言います。あの男を殺したのは僕です」

薄々気づいていた。
登場人物の数、
そして逃走中のこの状況。
可能性としては、ペコットというのもありえたが、流れ的には彼が一番高い。
だが、分からない。
そのまま私に罪を被せておけば、それで終わりだったのに。
どうして、助けたのか。
加えて、従者が主人を殺す理由。
いやーーアンドレアル様はあの性格だから、理由なんて幾らでもあるかもしれないが。

「その顔だと、予想はできても覚えてはいないようですね。まあ、それも当然でしょう。イデア様に乱暴したことも、流れでカストリアを椅子で撃墜したことも、記憶に残っていないのですから」

記憶にない。
それも全く。
思い出せない靄のような部分、そこに隠されているのだろう。
あの方を自らの意思ではないとは言え、事故とは言え暴行を働いたのだ、消したい記憶、思い出したくない記憶であることに間違いはない。

横を見れば、ペコットが腹を抱えて笑っている。
笑い事ではない。
全く、この子はこの子で酷いやつだ。
そのあっけらかんで、コミカルな部分に、救われているところも少しはあるのだけれど。
ーーいや、事実として彼女は命の恩人なのだけれど。

「嫉妬に狂った女は怖いねー。だから諦めろって言ってるのに。私の言うこと聞かないからだよー」

「まあ、僕としては、あの男を殺す機会をいただけたので。とても助かりました」

「あの男は沢山の人を不幸にしてきた。意味のない、価値のない計画ーーカストリア様の殺害計画で多くの血を流してきた。誰かが止めなければならない。だが、あの方は言葉で止まるような人間ではない。だからーー」

殺すしか無かった、と。
息の根を止めるしか無かった、と。
彼は続ける。

「チャンスもタイミングも日常に転がっていました。だけど、一撃必殺。失敗すれば次はない。なので、待つことにしたのです。あの方が一番油断する瞬間、勝利を目前にしたそに瞬間を。人は勝ったと思った時に一番隙ができます。待ちに待った瞬間なら、尚更。僕としては、カストリア様を最後に殺させてあげるのもあり方と思いました。かつての仲間を犬死にさせないためにも。価値はなくても、意味はあったとするためにも。でもーー」

彼は続ける。

「貴方が守ったんですよ、リトア様」

彼は言う。
私の知らない、私の行動を。

「あの男の凶刃から、まさに、身をていして。貴方の手の刺し傷、それはその時についたものです。名誉の負傷、いや、愛の証なのかもしれませんね」

と、微笑みながら。
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