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体が勝手に動いた。
無言、無表情の自分。
それを、上から眺めている私がいる。
自分の制御できていない。
暴走。

イデア様の座っていた椅子を、乱暴に蹴り飛ばす。
突然のことにカストリア様は動けず、
元より虚弱で動きの鈍いイデア様はそのまま倒れる。

私は踏みつける。
彼女の顔を、腕を、腹を、足を。
乱雑に、乱暴に。
特に何の反応もなかった。
呻くだけで、反撃もない。

人形を壊しているような感覚、
罪悪感も何もない。
始めてしまえば、何も難しいことはなかった。
好きな人の、好きな人を壊すということは。

「……、………、…………」

あのお方が何かを言っている。
だけど、言葉の意味が分からない。
ただの音の羅列として耳に届く。
怒った顔で、私に叫んでいる。
何か言っている。

視界に転がった椅子があった。
私はそれの脚を取り、持ち上げる。
簡単に持ち上がる。
どうやら私はそれを武器として用いようとしているらしい。
勢いよく、振りかぶる。
その際に、何かに当たった。
何か音がした、声がした。

だけど特に気にしない。
今は私のやりたいようにさせてあげよう。
どうせ最後だ。
今まで抑圧的な生活をさせた分、自由を満喫させてあげよう。

私は私に言う、
私は私に思う。

『好きにしなよ、君は自由だ』

その言葉とともに、振りあげられた椅子は勢いよく、イデア様の頭蓋へと進む。
ーーだが、方向こそ合っていても、私は椅子を主武装として使い慣れていない。
そもそも、椅子は座るものだ、武器ではない。
頭蓋は砕けず、椅子の一部が砕ける。
外れた先の床に大きな傷が残る。
私は壊れた椅子をひょいと捨て、代わりに壊れかけの女性を手に取った。
軽い、椅子よりも軽い気がする。

綺麗な顔だ。
傷つけて、傷つけて尚美しい。
これが、私を狂わせた。
これが、私の人生を狂わせた。
こいつさえ、
こいつさえいなかったら。
私は、私はーー

「おいおい、それはやり過ぎだろう。それ以上やったら死ぬぞ?」

誰かが私の手を止めた。

「毒ではなく拳とはーー流石はエーテルザット、血は争えないね」

アンドレアル様がそこにいた。
いつもと変わらない、薄笑いを浮かべて。
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