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第四章
2023年 東京
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今日は葵の様子がいつもと違っていた。朝からずっとぼんやりしていて、心ここに在らずといった感じだった。今日は学校が終わったら空の家で楽器の練習をしようと前もって約束していたが、葵は何も言ってこない。
「なぁ、葵、今日うちに来るよな?」
「んー。」
「途中でコンビニ寄って何か買ってく?」
「んー。」
「そうそう、アレ聞いたよ。お前が勧めてた…ニルヴァーナの『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』?すげー良かった!」
「んー。」
何を言っても生返事ばかりだった。空はだんだんと苛立ち、前を歩く葵の手を思いっきり引っ張り、怒鳴った。
「おい、葵!今日お前、どうかしてるぞ!一体何があったんだ?!」
「……。」
すると、葵のビー玉のような目にみるみる涙が溜まっていき、空は焦った。
「いや、別に怒ってるわけじゃないんだ。ただ、お前が元気ないから心配でさ…。」
「空…俺…俺さ…店長と…龍二さんとヤッた。」
「えっ、ヤッた…?えええーっ!?!」
葵の爆弾発言に、空の頭は真っ白になった。
「なんか…酒の勢いみたいな感じで…でも、龍二さん、俺を誰かと勘違いしてたみたいでさ…忘れてくれって土下座されたんだ。」
「……。」
「奥さんが五年前に亡くなってたことがわかって…俺にもチャンスがあるんじゃないかって思ったけど、やっぱり全然なくてさ。片思いだって分かってるけど、好きな気持ちに嘘はつけなかった。」
「……。」
「人を好きになるって、こんなに辛いんだな…。」
葵は泣きながらハハッと笑った。その表情を見た空は、本当に美しいと思った。
(そう…俺もその気持ち、よく知ってるよ。)
「アイツ、サイテーだな。」
空の心は激しく揺れ、龍二への怒りで震えていた。
(許せねぇ…。)
「葵、今日は練習ナシだ。俺、ちょっと行くところがある。」
「えっ?どこ行くの?」
葵の問いに答えず、空は足早に駅に向かって走り出し、下北沢行きの電車に飛び乗った。
(葵のバイトは週末だけだけど、店は平日も営業してるはずだ。ホームページで確認して…今日は月曜日だからやってるな。)
怒りで沸き立つ胸の内を抱えながらも、頭は冷静に働いていた。下北沢駅に着くと、龍二のライブのときに通った道を思い出しながら、一直線に『ドラゴン』へ向かった。
龍二は開店準備をしながら、何度目か分からないため息をついた。昨日は葵のことを思い出して、つい3回も自分を慰めてしまった。
(俺もたいがいだな…高校生に溺れるなんて…ドラマの世界じゃあるまいし。それにしても…本当に可愛かったな…。)
龍二が妄想にふけっていると、突然入り口のドアが開いて誰かが入ってきた。
「いらっしゃいませ…。」
営業スマイルを浮かべて挨拶した瞬間、突然胸ぐらを掴まれ、カウンターから引きずり出されると同時に、強烈なパンチが左頬に炸裂した。龍二は1メートルほど吹っ飛び、カウンターの椅子に背中を強打した。
「いってぇ…いきなり何しやがる…。」
「葵を…泣かせる奴は許さねぇ!」
龍二は自分を殴った相手が誰か分からなかったが、その台詞を聞いて空の顔をじっと見つめ、ようやく彼が葵の友達だと思い出した。それから、彼が自分を殴った理由を瞬時に理解した。
「ああ…空くん…だっけ?葵くんの友達の…。」
「アイツから聞き出しました。俺が無理矢理問い詰めたんです。アンタ…サイテーだよ。」
「…そう、俺はサイテーだ。」
(ああ、この子の目も葵くんと同じ…真っ直ぐで綺麗な目をしてる。俺みたいに汚れていない。)
「殴られて当然だよ、俺は…。」
「でも…アイツは…本気なんです!本気でアンタのことが好きなんですよ!」
龍二は袖で口の血を拭い、立ち上がってカウンターの奥に行き、グラスにお茶を注いでカウンターの上に置いた。
「まぁ、空くん。ここに座って、お茶でも飲みなよ。少し話をしよう。」
「俺は話をするつもりで来たんじゃないです。一発殴らなきゃ気が済まなかっただけです。」
「まあまあ、そう言わずにさ…君に頼みたいことがあるんだ。」
空はしぶしぶカウンターに座り、龍二が注いだお茶を一口飲んだ。
「葵くん、父親がいないんだって?」
「…はい。父親はアメリカ人で、葵が産まれる前に亡くなったそうで、葵は父親の顔も知らないみたいです。」
「ふーん…父親がアメリカ人…死別してる…と。彼には父親がいないことで、年上の男性に憧れる傾向がある。無意識に父親を追い求めてるんだろうな。そんな時に、たまたま自分の父親くらいのオッサンに出会って、好きだと勘違いしたんだ。ただそれだけさ。だって、彼が俺の何を知ってる?俺の過去も何も知らない。そんな状態で好きになれるか?もしかしたら、俺は人殺しの極悪人かもしれないぜ。」
「…まぁ、否定はしません。葵はずっと父親の存在を求めてましたから。」
「だから、彼のはただの若気の至り、勘違いってやつさ。」
「だからって…葵にそう言っても無駄です。」
「まあいい、俺から言うさ。で、君に頼みがある。この手紙を葵くんに渡してほしい。」
そう言って龍二はカウンターの下から手紙を取り出し、空の前にそっと置いた。
「なんで…俺に?自分で渡せばいいじゃないですか。」
「自分で書いた手紙を自分で渡すのは、案外恥ずかしいもんなんだよ。」
空は少し迷った風だったが、やがて手紙を丁寧に畳んで制服のポケットにしまった。
龍二は苦笑しながら、換気扇のスイッチを押し、タバコを取り出して火をつけた。煙がゆっくりと空中に漂い始める。
「で、君は俺が憎いかな?俺を殺せば葵くんは自分のもとに来ると思うか?」
「なっ…」
空は顔を赤くして龍二をキッと睨んだ。
「俺は…そんなこと、考えたこともないです。」
「なんで?俺がいなくなれば彼の心に空いた穴に君が入れるだろ?」
「…そんなに人の感情は単純じゃないですよ。ましてや好きな人を殺した相手を憎みこそすれ、好きになれるわけがない」
「まぁ…そりゃそうだな…。ところで君は俺のことを嫌いかもしれないが、俺は君のことが結構好きなんだ。」
「はぁ?」
「俺に似てるから…かもしれないな…」
(なんなんだ、この人…本当につかみどころのない人だ…)
空は胡散臭そうに龍二の顔を眺めた。
その時、空のスマホが鳴り響いた。画面を見ると、葵からの着信だった。
「葵から電話なんで、俺もう行きますね。今日俺がここに来たってことは内緒で。お茶、ありがとうございました。」
「おう。元気でな。」
龍二はタバコの煙を燻らせながら、片手を軽く上げて空を見送った。
空は足早にドアへ向かいかけたが、途中で立ち止まり、振り返って龍二をまっすぐ見つめた。
「俺、アンタを殴ったことは謝りませんから。」
龍二は苦笑いを浮かべながら、空がドアを開け、階段を上がっていく音を静かに聞いていた。
「なぁ、葵、今日うちに来るよな?」
「んー。」
「途中でコンビニ寄って何か買ってく?」
「んー。」
「そうそう、アレ聞いたよ。お前が勧めてた…ニルヴァーナの『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』?すげー良かった!」
「んー。」
何を言っても生返事ばかりだった。空はだんだんと苛立ち、前を歩く葵の手を思いっきり引っ張り、怒鳴った。
「おい、葵!今日お前、どうかしてるぞ!一体何があったんだ?!」
「……。」
すると、葵のビー玉のような目にみるみる涙が溜まっていき、空は焦った。
「いや、別に怒ってるわけじゃないんだ。ただ、お前が元気ないから心配でさ…。」
「空…俺…俺さ…店長と…龍二さんとヤッた。」
「えっ、ヤッた…?えええーっ!?!」
葵の爆弾発言に、空の頭は真っ白になった。
「なんか…酒の勢いみたいな感じで…でも、龍二さん、俺を誰かと勘違いしてたみたいでさ…忘れてくれって土下座されたんだ。」
「……。」
「奥さんが五年前に亡くなってたことがわかって…俺にもチャンスがあるんじゃないかって思ったけど、やっぱり全然なくてさ。片思いだって分かってるけど、好きな気持ちに嘘はつけなかった。」
「……。」
「人を好きになるって、こんなに辛いんだな…。」
葵は泣きながらハハッと笑った。その表情を見た空は、本当に美しいと思った。
(そう…俺もその気持ち、よく知ってるよ。)
「アイツ、サイテーだな。」
空の心は激しく揺れ、龍二への怒りで震えていた。
(許せねぇ…。)
「葵、今日は練習ナシだ。俺、ちょっと行くところがある。」
「えっ?どこ行くの?」
葵の問いに答えず、空は足早に駅に向かって走り出し、下北沢行きの電車に飛び乗った。
(葵のバイトは週末だけだけど、店は平日も営業してるはずだ。ホームページで確認して…今日は月曜日だからやってるな。)
怒りで沸き立つ胸の内を抱えながらも、頭は冷静に働いていた。下北沢駅に着くと、龍二のライブのときに通った道を思い出しながら、一直線に『ドラゴン』へ向かった。
龍二は開店準備をしながら、何度目か分からないため息をついた。昨日は葵のことを思い出して、つい3回も自分を慰めてしまった。
(俺もたいがいだな…高校生に溺れるなんて…ドラマの世界じゃあるまいし。それにしても…本当に可愛かったな…。)
龍二が妄想にふけっていると、突然入り口のドアが開いて誰かが入ってきた。
「いらっしゃいませ…。」
営業スマイルを浮かべて挨拶した瞬間、突然胸ぐらを掴まれ、カウンターから引きずり出されると同時に、強烈なパンチが左頬に炸裂した。龍二は1メートルほど吹っ飛び、カウンターの椅子に背中を強打した。
「いってぇ…いきなり何しやがる…。」
「葵を…泣かせる奴は許さねぇ!」
龍二は自分を殴った相手が誰か分からなかったが、その台詞を聞いて空の顔をじっと見つめ、ようやく彼が葵の友達だと思い出した。それから、彼が自分を殴った理由を瞬時に理解した。
「ああ…空くん…だっけ?葵くんの友達の…。」
「アイツから聞き出しました。俺が無理矢理問い詰めたんです。アンタ…サイテーだよ。」
「…そう、俺はサイテーだ。」
(ああ、この子の目も葵くんと同じ…真っ直ぐで綺麗な目をしてる。俺みたいに汚れていない。)
「殴られて当然だよ、俺は…。」
「でも…アイツは…本気なんです!本気でアンタのことが好きなんですよ!」
龍二は袖で口の血を拭い、立ち上がってカウンターの奥に行き、グラスにお茶を注いでカウンターの上に置いた。
「まぁ、空くん。ここに座って、お茶でも飲みなよ。少し話をしよう。」
「俺は話をするつもりで来たんじゃないです。一発殴らなきゃ気が済まなかっただけです。」
「まあまあ、そう言わずにさ…君に頼みたいことがあるんだ。」
空はしぶしぶカウンターに座り、龍二が注いだお茶を一口飲んだ。
「葵くん、父親がいないんだって?」
「…はい。父親はアメリカ人で、葵が産まれる前に亡くなったそうで、葵は父親の顔も知らないみたいです。」
「ふーん…父親がアメリカ人…死別してる…と。彼には父親がいないことで、年上の男性に憧れる傾向がある。無意識に父親を追い求めてるんだろうな。そんな時に、たまたま自分の父親くらいのオッサンに出会って、好きだと勘違いしたんだ。ただそれだけさ。だって、彼が俺の何を知ってる?俺の過去も何も知らない。そんな状態で好きになれるか?もしかしたら、俺は人殺しの極悪人かもしれないぜ。」
「…まぁ、否定はしません。葵はずっと父親の存在を求めてましたから。」
「だから、彼のはただの若気の至り、勘違いってやつさ。」
「だからって…葵にそう言っても無駄です。」
「まあいい、俺から言うさ。で、君に頼みがある。この手紙を葵くんに渡してほしい。」
そう言って龍二はカウンターの下から手紙を取り出し、空の前にそっと置いた。
「なんで…俺に?自分で渡せばいいじゃないですか。」
「自分で書いた手紙を自分で渡すのは、案外恥ずかしいもんなんだよ。」
空は少し迷った風だったが、やがて手紙を丁寧に畳んで制服のポケットにしまった。
龍二は苦笑しながら、換気扇のスイッチを押し、タバコを取り出して火をつけた。煙がゆっくりと空中に漂い始める。
「で、君は俺が憎いかな?俺を殺せば葵くんは自分のもとに来ると思うか?」
「なっ…」
空は顔を赤くして龍二をキッと睨んだ。
「俺は…そんなこと、考えたこともないです。」
「なんで?俺がいなくなれば彼の心に空いた穴に君が入れるだろ?」
「…そんなに人の感情は単純じゃないですよ。ましてや好きな人を殺した相手を憎みこそすれ、好きになれるわけがない」
「まぁ…そりゃそうだな…。ところで君は俺のことを嫌いかもしれないが、俺は君のことが結構好きなんだ。」
「はぁ?」
「俺に似てるから…かもしれないな…」
(なんなんだ、この人…本当につかみどころのない人だ…)
空は胡散臭そうに龍二の顔を眺めた。
その時、空のスマホが鳴り響いた。画面を見ると、葵からの着信だった。
「葵から電話なんで、俺もう行きますね。今日俺がここに来たってことは内緒で。お茶、ありがとうございました。」
「おう。元気でな。」
龍二はタバコの煙を燻らせながら、片手を軽く上げて空を見送った。
空は足早にドアへ向かいかけたが、途中で立ち止まり、振り返って龍二をまっすぐ見つめた。
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龍二は苦笑いを浮かべながら、空がドアを開け、階段を上がっていく音を静かに聞いていた。
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