不器用なおじさん達の恋の歌

LUNA

文字の大きさ
上 下
26 / 26
第一章

君が好きだと叫びたい

しおりを挟む
チラシ寿司にローストチキン、サンドイッチ、ピザ、クリスマスケーキ――テーブルに乗り切らないほどの豪華な料理を目の当たりにしたアキラは、目を丸くした。

「いくらクリスマスだからって、多すぎない?」

「いや、つい作りすぎちゃってさ…」
ディーンは照れくさそうに頭を掻きながら、料理を取り分けていた。

そんなディーンを眺めながら、アキラは心の中で思った。
(パパ、今にも踊り出しそうなくらい機嫌がいい…それに、無言で食べているアレンも、なんだか嬉しそうだ…)

「あの…パパ、もしかして片思いがうまくいったの?」

アキラの突然の問いに、ディーンは真っ赤になって咳き込んだ。

「な、何を言ってるんだ!子供がそんなこと気にするんじゃない!」

二人の日本語でのやり取りを理解できないアレンは、目をぱちくりさせながら親子を見つめていた。

「ふふっ…良かったね、パパ」
アキラはにっこり笑った。



「そうだ、昨日バタバタしててすっかり忘れてたんだけど、これ、光輝からお前へのクリスマスプレゼントだって」

夕食後、片付けをしていたディーンに、アレンが黒い紙袋を差し出してきた。

「俺に?何だろう…」
ディーンが首をかしげながら袋の中を覗くと、そこにはディルドやローター、媚薬入りローションなど、大人のおもちゃがぎっしりと詰まっていた。光輝からのメモにはこう書かれていた――「これで仲直りしろよ。礼は店で高い酒でも入れてくれ。」

「中身、何?」

アレンが袋の中を見ようとするのを、ディーンは慌てて隠した。

「い、いや…大したものじゃないから…」

(くそっ、光輝のやつ…!)

アレンはディーンの様子に首を傾げたまま、不思議そうに見つめていた。


あの事件以来、アレンはしばらくの間、光輝の店で働くのを控えることにしていた。今でも、あの手錠で拘束された瞬間を思い出すたびに、全身から血の気が引く。

(もし、あの時ディーンが駆けつけてくれなかったら…)

そんなアレンに、ディーンが声をかけた。

「今日は光輝の店に報告がてら顔を出してくるよ。メールでだいたいのことは伝えたけどさ。アレンも一緒に行くか?」

「ん…俺は留守番してるよ。まだ少し怖いんだ、あの繁華街に行くのが…。光輝によろしく伝えてくれ」

ディーンはアレンの髪を優しくくしゃっと撫で、愛おしそうに見つめた。

「もう…大丈夫だからな」

そう言って、ディーンはアレンの顎に手をかけて口づけしようとした、その時――

「パパぁ?思春期の息子がいること、忘れないでよ」

顔を赤くしたアキラが、恥ずかしそうにこちらを見ながら言った。





ディーンが『BAR光る君』の扉を開けると、ヒカルママが開口一番、「おう、俺があげたプレゼントの礼に来たのか?」と声をかけた。

ディーンは肩をすくめながらカウンターに座り、「ジントニックを頼む」と注文した。

「おい、ドンペリを入れる約束だったろ?」とヒカルママが鋭くディーンを睨む。

「そんな約束した覚えはない。それに、お前、俺に対してだけオネエ言葉使わないのは何でだ?」

「あら、そんなことないわよ!でも、その様子だと、アタシのプレゼントが役に立ったみたいね?」

その言葉にディーンは顔を真っ赤にした。
ディーンの表情を読み取るた光輝は驚いて言った。
「おい…冗談のつもりで渡したのに、図星だったのか?」

「いや…光輝のプレゼントは使ってないんだ。けど、まぁいろいろあって…アレンと…その…結ばれたんだ」

ディーンのしどろもどろな告白に、ヒカルママは驚いた顔をした。

「災い転じて福となすってか!良かったな、お前!」

ヒカルママはディーンの前にジントニックを置き、自分のグラスを合わせて笑った。

「30年越しの恋に…乾杯!」

1時間後、ディーンはすっかり酔い、延々とアレンとの惚気話を語り続けていた。アケミとカオルは白い目でディーンを見ていた。

「最高なのはさ…いつも強気な俺様のアレンがさ、泣きながら可愛くなっちゃうのがもうたまらないんだよ!これがギャップ萌えってやつ?」

「ちょっと、そんな幸せなゲイカップルの性生活、聞きたくないんですけど~」

「しかもさ、俺たちの相性が最高でさ…もう運命だって気がするんだよな。あんな綺麗で可愛いアレンが俺ので、気持ちよくなってんだぜ?可愛すぎるだろ、もう。俺、止まらなくて3回も…」

「ママ、この人、もう強制退去させてー!」

「まぁまぁ、片思いが長かったみたいだから大目に見てあげましょ」
ヒカルママが肩をすくめて言い、BAR光る君の夜は更けていった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

BL短編まとめ(甘い話多め)

白井由貴
BL
BLの短編詰め合わせです。 主に10000文字前後のお話が多いです。 性的描写がないものもあればがっつりあるものもあります。 性的描写のある話につきましては、各話「あらすじ」をご覧ください。 (※性的描写のないものは各話上部に書いています) もしかすると続きを書くお話もあるかもしれません。 その場合、あまりにも長くなってしまいそうな時は別作品として分離する可能性がありますので、その点ご留意いただければと思います。 【不定期更新】 ※性的描写を含む話には「※」がついています。 ※投稿日時が前後する場合もあります。 ※一部の話のみムーンライトノベルズ様にも掲載しています。 ■追記 R6.02.22 話が多くなってきたので、タイトル別にしました。タイトル横に「※」があるものは性的描写が含まれるお話です。(性的描写が含まれる話にもこれまで通り「※」がつきます) 誤字脱字がありましたらご報告頂けると助かります。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら

夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。 テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。 Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。 執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

処理中です...