不器用なおじさん達の恋の歌

LUNA

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第一章

男は皆狼なんて冗談だと思ってた 1

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どうぞ、入ってください。」

高田馬場にある谷垣のマンションは、30代のサラリーマンの一人暮らしの家にしては、驚くほど整然としていた。ごちゃごちゃと物を置くのが嫌いなのだろう。最低限の家具以外、ほとんど何もなく広々とした部屋はアレンに少しうすら寒いものを感じさせた。

「ジュン、家族は近くにいないのか?」
「僕、北海道出身なんです。両親と姉はまだ北海道に住んでますけど、僕は大学進学で東京に出てきてから、ずっと一人暮らしなんですよ。」
「そうか…それは寂しいな。」
「もう慣れましたけどね、一人の生活には。」
谷垣はお湯を沸かし、カモミールティーのティーバッグをマグカップに入れてアレンに手渡した。
「カモミールティーです。温まりますよ。レンカさん、ベッド、どうぞ使ってください。僕はリビングのソファで寝るんで。」
「いや、俺がソファで寝るよ。急に押しかけて悪いしさ…」
「本当に気を使わなくていいですよ。シャワーも自由に使ってくださいね。着替えとタオルは置いておきます。」
「…ありがとう。」
(ジュンはやっぱり、いい奴だな…)
アレンは、温かなカモミールティーの香りに癒されながらそう思った。


クリスマスの朝、アキラは焦げたトーストの匂いで目を覚ました。朝ごはんはひどい出来だった。焦げたトーストに薄い茶色のコーヒー、カピカピに固まった目玉焼き…。

「おはよう、アキラ…。」
「パパ、どうしたの?!」
ディーンは目の下にクマができ、髪もボサボサで、ほとんど寝ていない様子だった。
「アレンが…アレンが今朝帰ってこなかったんだ…。何かあったんじゃないかって心配で…。」
「そうなの?!それは心配だね。学校から帰ったら一緒に探すよ!」
今日はクリスマスだが、普通の平日の木曜日。学校があるのだ。
「ありがとう…。」
アキラは、むしろ憔悴しきったディーンの方が心配だった。

(アレン…昨日喧嘩したから怒ってるのかな…。とりあえず、光輝に連絡してみよう。アレンの居場所を知ってるかもしれない。)
ディーンは光輝に電話をかけたが、なかなか出なかった。4回目の電話でようやく、不機嫌そうな光輝が電話に出た。
「ディーンか、どうした?」
「光輝!アレンが帰ってきてないんだ。心配で…光輝なら何か知ってるんじゃないかって…。」
「アイツ、家に帰ってないのか?そうすると…もしかして…。」
「何か知ってるのか?」
「お前と喧嘩したから、俺のところに泊めてくれって頼んできたけど、断ったんだよ。でも、もしかするとあいつに惚れてる客のところに行ったかもしれないな。ほら、お前の隣に座ってた奴だよ。」
「なんだって?!」
「谷垣の住所はわからないけど、彼の先輩の名刺ならある。俺が調べてやるよ。」
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