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第一章
揺れるクリスマスイブ 2
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クリスマスイブの夜。
下北沢の街もイルミネーションが溢れ、人々の顔はどこかウキウキしているようだ。
しかし、仕事を終え、帰路についたディーンはやりきれない寂しさを感じていた。
真理恵がきれいに洗濯して畳んだ着替えを返してくれたが、あの日以来、真理恵とも気まずい関係になってしまい、職場の居心地も悪かった。
せっかくのクリスマスなのに、アレンは仕事、アキラはサッカー部の友達とのクリスマスパーティーで遅くなると言う。ディーンはひとりぼっちだった。
(そうだ、久しぶりに光輝の店に行ってみようかな)
アレンにいるかもしれない「好きな人」のことでも悩んでいた。光輝なら、何かアドバイスをくれるかもしれない。
ディーンは電車に乗り、渋谷で乗り換えて新宿に向かった。
『BAR光る君』の店内には小さなクリスマスツリーが飾られ、店はお祝いムードの楽しい雰囲気に包まれていた。幸せそうなゲイカップルの客も何組かいたが、ヒカルママやアケミ、カオルがいじり倒し、店には笑い声が響いていた。
「クリスマス…レンカさんは大切な人と過ごさなくていいんですか?」
谷垣に聞かれ、アレンはディーンの顔を思い浮かべた。しかし、今頃ディーンは職場の女の子と楽しく過ごしているかもしれない、と考え、首を振った。
「俺には今、恋人はいない」
「じゃあ、僕にもチャンスがあるってことですね!」
谷垣は目を輝かせ、勢いよく言った。
アレンは少し考え込んだ。
(ジュンはまっすぐでわかりやすい。何を考えてるかすぐわかるし、こいつと付き合えば、モヤモヤ悩むこともないかもしれないな…)
「さぁ…どうかな…」
アレンははっきりと答えを返さなかった。
その時、入り口のドアが開き、新しい客が入ってきた。
「いらっしゃい…」
ヒカルママは言いかけ、驚きの表情になり、咄嗟に目の前の客に立ちはだかった。
「光輝、久しぶり。相談したいことがあって来ちゃったよ」
その客は…なんとディーンだった。
(やばい、ディーンに見られる…)
アレンはとっさに隠れようと思ったが、狭い店内で隠れる場所はなかった。
「お、おう…ディーン、悪いが今日は満席なんだよ。来るんなら連絡してくれりゃ良かったのに…」
さすがの光輝も動揺のあまりオネエ言葉じゃなく、男口調になってしまっている。
ディーンは長身の光輝の後ろから店の奥を覗き込んだ。
「満席?でも、カウンターの奥の席空いてるよ…」
そう言いかけたディーンの目と、カウンターにいたアレンの目が合った。
「あ…アレン?!そ、その格好…?!」
ディーンはアレンの姿を見てあんぐりと口を開け、驚きのあまり卒倒しそうだった。
アレンは頭をかきながら決まり悪そうに言った。
「おう、ディーン…黙ってて悪かったな…」
下北沢の街もイルミネーションが溢れ、人々の顔はどこかウキウキしているようだ。
しかし、仕事を終え、帰路についたディーンはやりきれない寂しさを感じていた。
真理恵がきれいに洗濯して畳んだ着替えを返してくれたが、あの日以来、真理恵とも気まずい関係になってしまい、職場の居心地も悪かった。
せっかくのクリスマスなのに、アレンは仕事、アキラはサッカー部の友達とのクリスマスパーティーで遅くなると言う。ディーンはひとりぼっちだった。
(そうだ、久しぶりに光輝の店に行ってみようかな)
アレンにいるかもしれない「好きな人」のことでも悩んでいた。光輝なら、何かアドバイスをくれるかもしれない。
ディーンは電車に乗り、渋谷で乗り換えて新宿に向かった。
『BAR光る君』の店内には小さなクリスマスツリーが飾られ、店はお祝いムードの楽しい雰囲気に包まれていた。幸せそうなゲイカップルの客も何組かいたが、ヒカルママやアケミ、カオルがいじり倒し、店には笑い声が響いていた。
「クリスマス…レンカさんは大切な人と過ごさなくていいんですか?」
谷垣に聞かれ、アレンはディーンの顔を思い浮かべた。しかし、今頃ディーンは職場の女の子と楽しく過ごしているかもしれない、と考え、首を振った。
「俺には今、恋人はいない」
「じゃあ、僕にもチャンスがあるってことですね!」
谷垣は目を輝かせ、勢いよく言った。
アレンは少し考え込んだ。
(ジュンはまっすぐでわかりやすい。何を考えてるかすぐわかるし、こいつと付き合えば、モヤモヤ悩むこともないかもしれないな…)
「さぁ…どうかな…」
アレンははっきりと答えを返さなかった。
その時、入り口のドアが開き、新しい客が入ってきた。
「いらっしゃい…」
ヒカルママは言いかけ、驚きの表情になり、咄嗟に目の前の客に立ちはだかった。
「光輝、久しぶり。相談したいことがあって来ちゃったよ」
その客は…なんとディーンだった。
(やばい、ディーンに見られる…)
アレンはとっさに隠れようと思ったが、狭い店内で隠れる場所はなかった。
「お、おう…ディーン、悪いが今日は満席なんだよ。来るんなら連絡してくれりゃ良かったのに…」
さすがの光輝も動揺のあまりオネエ言葉じゃなく、男口調になってしまっている。
ディーンは長身の光輝の後ろから店の奥を覗き込んだ。
「満席?でも、カウンターの奥の席空いてるよ…」
そう言いかけたディーンの目と、カウンターにいたアレンの目が合った。
「あ…アレン?!そ、その格好…?!」
ディーンはアレンの姿を見てあんぐりと口を開け、驚きのあまり卒倒しそうだった。
アレンは頭をかきながら決まり悪そうに言った。
「おう、ディーン…黙ってて悪かったな…」
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